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安らぎの保留音

最近、仕事の用事で霞ヶ関のある省庁に電話をかけることが多い。どこの省庁かはあえて言わないが、去年の秋に申請したものがまだできておらず、しかも今頃になって提出書類のやり直しを求めてきた。最近担当が変わったが、それは前の担当者が誤った説明をしていたからという。なんとも杜撰な仕事をするなと思う。

霞ヶ関の人たちは国会の答弁作りなどで残業時間が多く疲弊していると聞くが、その影響なのだろうか。はたまた、エリートすぎて、我々の言うことなど逆に理解してもらえないのだろうか。もちろん、手早く、誠実に仕事をされている方達の方が大半だとは思うが、どうも頼りなさを感じてしまう。

例の担当課は電話をかけて、質問をする度に、「少々、お待ちください」と言って、何度も保留を繰り返す。確かに煩雑な手続きではあるが、「あんたらが決めた手続きフローだろ」と思わずにはいられない。

ただ、そのイライラするやり取りの中で少し心が安らぐのが、保留音がとしてBeatlesの「Hey Jude」が流れることだ。

「Hey Jude」はポール・マッカートニーが両親の離婚により精神的に不安定だったジョン・レノンの息子のジュリアン・レノンを励ますために作った歌である。なので、曲調もゆったりとしている。

特に以下の部分が好きで、

And anytime you feel the pain hey Jude, refrain
Don't carry the world upon your shoulders

For well you know that it's a fool
who plays it cool By making his world a little colder

この部分を聴いていると「あぁ、良い曲だなぁ」としんみりしてしまう。保留で待たされるのはイヤなはずなのに、この保留音に限ってはもっとずっと聞いていたい、待たされたいと思ってしまう。

一応、省庁の名前は伏せているが、マニアの人なら保留音でどこの省庁か
わかってしまうのだろうか。それとも霞が関に電話を掛けるとどこもこの保留音を使用しているのか。それはわからないままだ。


この曲には個人的な思い出があって、それは中学時代に遡る。中学2年生のときに赴任された英語のA先生はいつも授業の始まりに皆で英語の歌を歌った。英語の授業や勉強にはまったく興味が無かったが、歌だけは楽しかったので私は一生懸命歌った。

歌は数か月ごとに新しい曲に変わった。Beatlesを歌うこともあれば、The CarpentersやThe Cascadesなども歌った。その中に「Hey Jude」があった。Beatlesの曲は難しい言い回しもなく、英語に慣れ親しむにはピッタリだ。

いきなり淡々と授業を始めるのではなく、歌でウォーキングアップというか楽しみもしっかり盛り込んでくれたA先生はとても良い先生だと思う。

最近は、保留をされる度にそんなことを思い出している。


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