散文詩:すみれ
新年度の慌しさも落ち着いた頃
道の入り口に花が咲いていて
愛犬との春の珍事を思い出した
散歩道に咲くすみれを
嗅いでいた愛犬は
鼻がくすぐったくなり
花粉症の主人と同時に
くしゃみをしたのだ
時を経て
足腰も弱りはじめた頃
朝の散歩を待ちきれず
室内でお漏らしする様になり
数年後の別れの日を最後に
あの道を私は歩けなくなった
そして今
晩春の風に吹かれて
揺れる紫の花が
けして買うことのできない
真の幸福の在った畔道へ
手招きするように
私を誘ってくれている
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