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アペリティーボはただの食前酒ではなく、イタリア人の人生の全て

イタリアに行かれた人は間違いなく、夕方からはAperitivo (アペリティーボ)という魔法のような言葉を聞いたことがあると思う。その流れで、現地でイタリア人のようにアペリティーボして、人生の最高な思い出になったと言えるだろう。イタリア人にとって大事な食文化の一つで、簡単に日本語に訳せない。

本物のAperitivo

日本でよく聞く「食前酒」は間違っていないが、この深い食文化は一つの言葉で済ますことができない。シチュエーションだけを見ると、言葉の通りに「食」べる「前」のお「酒」だけど、イタリア人にとってはそうではない。ここで一旦イタリア語を置いて、ラテン語の「Aperitivus」を説明しないと通じない。日本語にすると、「開く」を意味する。お酒と開くことは何の関係あるのか、面白い話を始めよう。

ディナーの前に胃を開くことで食欲を増進させたり、会話を弾ませるきっかけになるということで定着した。アペリティーボはディナーではないということで、食事のマナーを考えずに自由に立ち飲みや手で食べること、お店を入ったり出たりなどのことが許される。自由な仕組みで人と関わることで、会話にもいい影響を与えるのだ。
もう一つの理由は食事の時にリキュールやカクテルを一緒に飲むことは良くない。消化が悪くなるしイタリア人でさえすぐ酔っ払う可能性が高いので、アペリティーボで軽食(つまみ)と一緒にまず楽しむのだ。いわゆる、準備運動のようなもの。

好きなお酒+食事マナーなし+食欲の増進+自由な会話=Aperitivo

マッシより

食前酒という言葉を忘れて、日本でもアペリティーボと呼んで楽しい時間を過ごせば、イタリア現地のように楽しめる。実は現代のアペリティーボはローマ時代からこの習慣が始まったそう。ローマ時代の裕福な人たちの食習慣で食べる前にワインを飲んでおつまみをつまんでから本番の食事へ。2000年前に始まった習慣は現在も全く同じスタイルで行われているというのは、イタリア人の遺伝子にすでに組み込まれていることなのかもしれない。

ローマ時代からお酒とその飲み方が少しずつ変わっている中で、1500年にヴェネツィアでSpritz (スプリッツ)が誕生。今のアペリティーボは、実は歴史がまだ若い。1786年にトリノでベルモットというワインをベースにハーブのエキスやスプリッツを加えた後、樽で熟成させたもの。大人気になって、イタリア全国に広がった。さらに、1860年にピエモンテ州・ノヴァーラでカンパリが誕生。綺麗な赤色、オレン ジやハーブの複雑なアロマ、そして独特のほろ苦い味わいで多くの人々が恋に落ちた。さらにさらに、1919年にパドヴァでアペロールも誕生。

アペロール

イタリア人に欠かせないアペロールスプリッツやカンパリなどのお酒は定番になった。目立つ綺麗な色のお酒が注がれた大きめのグラスを片手に、喋ったりつまんだりすることを1〜2時間かけてずっと繰り返す。

ここからイタリア人にとって、アペリティーボはどのような存在なのか。どんな過ごし方をしているのか。話はますます深くなる。この記事を読めばイタリア人以上に夕方の時間を楽しめるかもしれないからご注意を。

日本では上司や同僚と飲みに行くことが多いと思うけど、イタリアでは本当にいい仲間ではない限り、会社の人と行かない。友達や家族、時々1人でもアペリティーボをする。日本と真逆になって、ネガティブな話をしない。やりたいこと、趣味、将来の話、その日にあった面白い話などがほとんど。せっかく、最高の場所で最高の仲間と美味しい料理やお酒を楽しんでいるから、この空間を守ることで人生の最高級なエネルギーになる。

カプレーゼ

お酒を飲めない人はノンアルコールもあるけど、見た目は普通にカクテルのように見えるからそれでも楽しめる。若者はビールを飲むことも珍しくない。

ビールとおつまみ

16時〜17時からアペリティーボして19時〜20時からはディナーをしに行く。ディナーでは料理がメインになるから、レストランでは大人しくなる。料理とお酒は進み、話しがだんだん楽しくなる。
イタリアのニュースによると、約75%のイタリア人は少なくても月1、多くの人は週1〜2にアペリティーボする。

この時間はただお酒を飲んでいることではなく、生きていることの大切さに改めて、気が付く。コロナ禍の厳しく長いロックダウンで、当たり前のことは当たり前ではないという辛い経験をしたことで、相手との空間、相手とのコミュニケーション、自由に生きることはこのアペリティーボで、怪我していたツバメが再び飛べるようになり自由に動ける大切さに改めて気が付くような気持ちになる。

日本人も食べる前にこのような過ごし方をすればいつも以上に楽しめると思う。気を使わずに、楽しい話だけをして、次の日にも力になる。

このnoteで書いたことは、日本全国でできる。もしイタリア現地のような空間も楽しみたいなら、ピエモンテで生まれたイータリーに行けば日本にいることを忘れる。僕もいつもそうなる。関東に行く時に一時帰国の代わりに、必ずイータリーに寄ってイタリアのことだけではなく、ピエモンテの恋しさも満たされる。2023年9月14日まではワンコインでイタリアのアペリティーボの体験ができるから行かない理由はない。

ついでに特別な料理などもたくさんある。

みなさん、アペリティーボの長い旅はお疲れ様。ここまで読んでくれた人に一つのお願いがある。食前酒という言葉を使わずに、APERITIVOを使って周りの人にまで知ってもらえたら、イタリア人の共通点が増えるし人生は良い変化が始まるかも。

 Massi

みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。