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日本人の発想に驚き感謝すること

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112

外国人として考えられない不思議な組み合わせの料理が日本には多くて、イタリアにいた頃には絶対ない!と話を聞くだけで驚いていたけど、日本に来て考えは180度変わった。日本のことが好きな理由のひとつは魔改造。あり得ないと思われるような海外にない発想を美味しいものに取り入れて、さらに美味しくしてしまう。新発見の美味しさになる。外国人のありがちな行動は、説明を聞いただけでイメージシャッターが降りてくる。食べてみたい、飲んでみたい、チャレンジしてみたいの気持ちがなくて味のイメージが出来ない=美味しくない、の方程式ができてしまう。自分の味のコンフォートゾーンから出ることが出来ればさらに楽しめると思う。

以前、ツイートして皆さんが盛り上がった内容があったから、今日はピックアップしてもう少し詳しく日本在住イタリア人として調べながら書きたいと思う。

珈琲に氷
まずイタリアでは冷たいコーヒーはなく文化としてもない。まず、「アイスコーヒー」という言葉は通じない。店員さんに言うと、はぁ?という顔をされるか、コーヒー味のジェラートが出てくるかも。アイスコーヒーは実は日本発祥で、明治期に輸入されたコーヒーを冷やして飲み始めたのがきっかけ。日本では夏にはきゅうりやスイカなどを冷やして食べる文化が元々あったから、冷やしコーヒーも定着したよう。
海外では1840年頃、フランス人の兵士がアルジェリアのマサグランという街で、人々が熱いコーヒーに水を入れて冷まして飲んでいたのを発見した。コーヒー=熱い飲み物という文化が根強いフランス、イタリア、スペインなどでは人気がなく定着しなかった。イタリアではシェケラートという飲み物があってカクテルのようにシェイクして作る冷たいコーヒーのようなものがあるけど、僕はイタリアでは頼んだことがない。

パンに焼きそば
僕が初めて焼きそばパンを知ったのはイタリアでよく見てた「うる星やつら」がきっかけ。諸星あたるが通う学校の売店で焼きそばパン争奪戦をしていて、焼きそば?パン?一体どのようなものなのかよくわからなかった。あとで調べてみたら何と、パスタとパンを組み合わせた考えられない食べ物だった!当時は、日本ではこのようなおかしな食べ物が人気だなんてとんでもなく変だけどちょっと面白いかもと感じたのを覚えている。
今は焼きそばパンの魅力に取り憑かれて大好きになった僕だけど、一体いつから日本では人気になったのか。調べてみたところいろんな説があったけど一番有力なのは、東京の「野澤屋」が元祖(2010年に閉店)。昭和27年に焼きそばとパンを同時に販売していたところ、「面倒だからパンに挟んで販売して」という声が上がった。試しにやってみたら何と大ヒットして東京中に広がった。僕は日本人の食に対する探究心と野澤屋さんに感謝したい。おかげでこのような素晴らしい食べ物に出会えたから。

ナポリタン
このナポリタンは有名な話だけど実は日本発祥の食べ物。昭和2年に横浜の「ホテルニューグランド」が作り出した。当時はGHQがこのホテルで、持ち込んだパスタを茹でてケチャップを混ぜただけのものを食べていた。二代目総料理長の入江茂忠さんはそれを見て炒めたハムとマッシュルームをパスタに加え、トマトペーストと玉ねぎ、にんにくで作ったパスタソースで和えた料理を出した。当時はトマトソースのことを「ナポリ風」と呼んでいたので「ナポリタン」という名前になった。
イタリアではケチャップはパスタソースというよりトッピングとしてポテトフライなどにつけて食べるものという感覚だから、日本に来てナポリタンの存在を知ってケチャップやピーマン、ソーセージなどイタリアにはない仕組みで驚いた。食べ出したらケチャップの甘さと食材がいいバランスの味でイケる!美味しい!と違う驚きになった。ナポリタンの始まりの話を初めて知った時、イタリアにはないこの美味しいパスタ料理は日本人のおもてなしの心が作り出した優しさの食べ物と感じて、よりナポリタンが大好きになったし定期的に食べたくなるくらい僕の口に合ってる。僕にとってナポリタンとは、日本で生まれたイタリア風の和食のような感覚で和の心も味わえる。

サンドイッチにクリームとフルーツ
イタリアでフルーツサンドのことを説明すると毎回びっくりされる。イタリア人にとってフルーツは食後のデザートのような感覚で、まさかパンに挟むなんて考えられない。食パンにクリームを塗ってフルーツを挟んでかなりレベルが高いデザートに見え、見栄えもとても綺麗だしクリエイティブな面もより目で見て楽しめる。いつも食べてるパンより美味しく感じる。
イタリア人が驚くこのフルーツサンドは実は日本発祥。生まれたきっかけはいろんな説があるけど、喫茶店やフルーツパーラーで作られたらしい。作られたのは当時日本ではまだ高級食材だったフルーツをより親しみやすく食べやすくするためという説もある。日本人の魔改造のハイセンスには相変わらず驚かされる。

日本人にも外国人にも喜ばれるこのような食べ物に対する発想には感謝しかない。当時、限られた厳しい状況の中で今まで考えられてなかった発想が現在も残っていることは、非常に素晴らしいことだしこういうところが日本の好きでさらに学びたいところのひとつだ。多くの外国人にも喜んでもらいたいから想像の壁を壊して新しい料理として楽しんで欲しい。

Massi

みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。