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日本語は脳を育てる言語

こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112

世界には数えきれない言語がある中で、最も習得が難しいと言われているのが日本語だ。僕が日本語を勉強し始めたのは、2002年の9月。いつの間にかもう20年が経った。人生の半分以上を日本語と付き合っているということだ。大学で日本語を専攻してから現在まで、いい脳トレになっている。

日本語はイタリア語と違って、学校教育での「言語の基本的なレベル」習得に非常に時間をかけなければいけない。今までに聞いた話では、中学生の言語レベルでは新聞を読んで理解するのが難しい、ということらしい。日本語とはそれほど難しく、基礎からすでに苦労が始まるのだ。
一方のイタリア語はというと、新聞を読んで理解できるための言語力はほぼ小学校の低学年レベルで身についている。

どんなに複雑で難しい言語であっても、その言語を母語として生まれた時から触れている日本人は、日々当たり前に使って自然と習得できている。ここが外国語として日本語を学んだ僕と違って、言語習得の難しさを感じないポイントだ。
生まれた環境は全て同じ言語で形成されているから、違和感も疑問もなく唯一のコミュニケーションの道具として、特別意識をすることもない。日本人と話す時にいつも感じる「ネイティブ」の部分だ。

イタリア語を理解するためには発音や文字だけではなく、イントネーションや言葉の並びが日本語と違うことを認識しなくては行けないし、した方がいい。脳の感覚や使い方の違いもすぐに感じられていい勉強になる。日本語ネイティブにとって、日本語にある思考や感覚は、最も効率よく繊細に高レベルになる。

他の言語では想像もできないハードな壁は「文字」だ。漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットと4種類のもの文字を使い分けて、同じ言葉があっても表記する文字によってニュアンスが変わる。だから、脳の中にある思考を言葉にして口に出すまでが非常に難しくて、エネルギーをかなり消費するのだ。

日本語ネイティブにとって「文字の種類を使い分ける」という感覚は、あえて学習をしなくても自然に身についてくる。日本人は無意識のうちにすでに脳を鍛えているのだ。僕はというと、意識してイタリア語から考えて日本語を勉強していたから、大変さが100倍になる。

多くの日本人は気が付いていないかもしれないけど、「日本語の音」を意識したことがあるだろうか。実は日本語の音は1種類しか持ってなくて、その音数は極めて少ない言語になっている。漢字もひらがなもカタカナもローマ字も、同じ言葉はすべて同じ音。音で文字の違いを表現することはできない言語だとわかった時に、一瞬勉強のモチベーションが下がったけど、ある意味、いいパワーももらった。これは日本語があいまいだと言われる原因の一つでもある

話すこと聞くことよりも、読むこと書くことでより多くのものを学習できる。音では一つの言葉を発していても、頭の中ではその言葉を表記する文字の感覚までもが浮かんでくる。聞いた言葉が分からないときに、漢字でどのように書くのか聞き返すことで理解できる。その漢字に込められたストーリーを知れば意味まで繋がる。

ここがいい脳トレになるポイントだ。文字によって、言葉を確認して特定していることになる。音数が少ない分だけ同じ音を持つ言葉がたくさんあるから、大人になってから勉強しようとすると今まで使わなかった脳は、子供の頃みたいに真っ白なページから始まる。この時の最大の敵は、母語によって育てられた自分の脳だ。

この20年間、日本を学び続けた結果、このような記事を書けるようになった。それよりも、今回書いた内容に気がついた、という方が正しいかもしれない。これからの勉強も簡単ではないと思うけど、日本語を大切にして日本人のように世界を感じたい。

Massi

みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。