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六本木クラブ

1月の2連休に、中目黒に住む親友、
『ゆっちゃん』に会いに行った。

ゆっちゃんはアーティストを目指しており、
その日もレッスンを終えて合流した。

1軒目は目黒川沿いにある肉バル屋さん。
ゆっちゃんが昔バイトをしていた場所である。
今ではもうゆっちゃんが知っているスタッフは
1人しかいないようで、少し寂しそうだった。
ゆっちゃんは、サングリアを頼むと
『あ!サングリアの味は変わってない!』
と笑みを浮かべて、私はなんだかほっとした。

2件目は、ゆっちゃんがよく行くワインのお店。
ビルの2階にある、間接照明だけの少し狭い店内。
カウンターごしに雰囲気のある男性スタッフ達が
ワインを入れたり、肉を焼いていた。
おつまみで頼んだ、牛スジのアラビアータが
やたら噛みきれず、自分の満足のいくとこまで
噛んで無理に飲み込んだことははっきり覚えている。
ワインが全身にが気持ちよく効いてしまい、
話したことはあまり覚えてない。
ただ、ゆっちゃんが
『六本木のクラブはレベル高いの!』
とウキウキしながら話してた。

3軒目は、夜カフェ…のつもりがついた場所は
シーシャカフェであった。
初めてのシーシャ。煙を吐くことの難しさを知った。煙に味をつけることができたけど、どれも同じような甘ったるい香りだった。どうしてこの煙にハマってしまうのか。私にはまだわからないなぁー。と、ゆっちゃんの吐き出す煙を眺めていた。

シーシャカフェから出て、タクシーで帰る間、
眠っていたら、六本木のクラブに着いていた。

ゆっちゃん…。やられた。

私はしぶしぶ、やっちゃんの後ろをついて、
六本木のクラブに入る。初めてだった。

ガタイの良い黒服の男達にジロジロと見られ、
身分証を提じて、中に入る。
入り口でエアーシャワーを通ると、
クラブの中にはマスクをしている人は誰1人いなかった。

ジレ・ベストを着た男の人からハートのチップを
貰う。それはドリンクと引き換えできるらしい。

恐る恐る階段を降りていくと、怪しく暗いフロアの中をビームのように貫くライト、胸の奥まで響くEDM。
布の少ない服の人から、外国人、お金を持ってそうな小綺麗なおじさんなど様々な人がいた。

フロアに着くとすれ違う男達が皆、
品定めをするような目つきでジロジロと見てくるのを感じた。

かわいいね、一緒に飲もうよ
奢るから、ほらいこう?

と、しつこく絡んでくる男。初対面で、
話しかけながら、やたら人の髪を触ってきて
かなりイライラしてきた。

そこにゆっちゃんがやってきて、
『こっち!はやくいくよ!』
と、私の手を引っ張る。

ネオンの人混みをかき分けて一休みできる一角へ。
『今の人ぜんぜんタイプじゃないでしょ?
しつこそうだったねー。早くタイプの人見つけて!今夜は別々になってもぜんぜんいいよ。』
ゆっちゃんは言った。

きっと、ゆっちゃんは私が恋愛で最近うまく行ってないことを気にかけて、クラブに連れてきたのだと思った。

その時、また後ろから男の人が来て、

え、かわいい。かわいいね。
一緒に飲もうよ

と声をかけてきた。正直タイプな人だった。

ただ、私の中で渦巻いた心の迷いがあった。

"友達がいるので。また。" 

と言ってその人から離れた。
ゆっちゃんには『なんで行かなかったのー!』と少し怒られた。しかし、しばらくするとそのタイプの人は別な女の人と、かなり至近距離で話していた。あーほらね。クラブってこういうとこ。
私なんでこんなことにいるんだろう。

もう帰りたい。

いつのまにか、
ただ、ひたすら帰りたいとだけ思っていた。

ゆっちゃんが私のことを察してくれたのか、
『もう出て、つるとんたん行こうか〜』
と、騒々しいクラブを抜け出し、2人で歩いてうどん屋さんへと行った。

私は明太子うどん。ゆっちゃんはカレーうどんを半玉増量で頼んだ。
うどんを啜りながら私たちはクラブの男達の愚痴を言い出した。

ほんとあの人しつこかったねー。
クラブ慣れてない感だしてきて、近づいてきた男もあれ絶対手口だよねー。
タイプの人は、女と闇に帰るし。
やっぱり、なかなか自分と合う人って見つけられないんだね
そりゃクラブでは見つからないかー。
クラブ行ったのに、結局こうして2人でうどん食べてるの最高だね笑


でも私、やっぱりちゃんと彼と話さないとと思ったよ。

『そっかよかった。千秋ちゃんがクラブに行って、答えを出せて良かった。』

ゆっちゃんにそう言われて私は、ぞくっとした。
あの時私が、あの男についていかなかったのは
やっぱり、私の中には、彼の存在があったからなのだと思う。もう別れようと思っている彼であったが、このままでは悔いが残る気がしてきた。

ざわめくクラブの中で、私は本当は、彼を探していたのかもしれない。

六本木のクラブ。
そこに来る人は何を求め、 
何を手にして闇に消えるのか。
それとも得るものもなく、すり抜けていくのか。

やっぱりそこは誰しも何かを失っていたり、
寂しい人が来る場所なのではないのか。
でも、その穴埋めをできるものは本当はそこで見つからないことは皆わかってるはず。

少し遊ぶのもいいし、ワンナイトもいいし、
レーザーの光に打たれて倒れてもいい。
寂しさを舐め合って、深く沈むのもいい。


でも私は、何かを失いかけている時に、
答えを探す場所でもあるなと初めて感じた。

あのレーザーの光は、一筋の答えを教えてくれた。

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