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確率論

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確率論を#1からナンバリングしてまとめているマガジン。
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確率論#9

確率論#9

今回は期待値などの議論していく時に必要で基本的な評価式を紹介していきますね。

(1)$${p>0,X_n\in L^p(\mathbf{P})\ (n=1,2,\cdots)}$$が$${\displaystyle{\lim_{n,m\to\infty}\vert\vert X_n-X_m\vert\vert_p=0}}$$を満たすならば、$${\displaystyle{\lim_{n\to\

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確率論#8

確率論#8

本日は、今後議論していく上でも強力な武器となる「収束定理」についてです。
これはざっくり言うと、「期待値(積分)と極限の順序交換の定理」です。
「そんなのが役に立つの?」って思う人も居るかも知れません。
よく用いられる例を紹介した後に、それぞれの収束定理を見ていきましょう。

例1.10
$${2\leq n\in\mathbb{N}}$$に対して、$${\displaystyle{\lim_{n

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確率論#7

確率論#7

命題$${A(\omega)(\omega\in\Omega)}$$が$${\mathbf{P}}$$-零集合を除いて成り立つ時、即ち、$${\mathbf{P}(N)=0}$$なる$${N\in\mathcal{F}}$$が存在し、$${\omega\notin N}$$ならば$${A(\omega)}$$が真となる時、$${A}$$はほとんど確実に成り立つ(almost surely)といい、

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確率論#6

確率論#6

次に期待値の性質を挙げていきますね。
(1)は線形性、(2)は正値性、(3)はイェンセンの不等式と呼ばれるものです。

定理1.9
$${X,Y\in L^1(\mathbf{P}),a,b\in\mathbb{R}}$$とする。
(1)$${aX+bY\in L^1(\mathbf{P})}$$であり、$${\mathbf{E}[aX+bY]=a\mathbf{E}[X]+b\mathbf{E}

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確率論#5

確率論#5

期待値の定義と可積分の定義について紹介していきます。期待値は確率論の様々な事について考察するツールであり、とても重要なものになりますね。
可積分はその期待値を元に定義されていきます。

定義1.5
確率変数$${X:\Omega\to\mathbb{R}}$$の期待値$${\mathbf{E}[X]}$$を次の手順で定義する。
(1)$${a_i\in\mathbb{R},A_i\in\mathc

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確率論#4

確率論#4

以下、確率空間$${(\Omega,\mathcal{F},\mathbf{P})}$$において考察をしていきましょう。$${A\in\mathcal{F}}$$を事象と呼びます。事象とは$${\Omega}$$上の関数に対する条件によって特徴付けされたもので、例えば、「サイコロの出目が偶数である」や「コイントスの結果が裏である」など、中学や高校での確率を習った時にも考えたことがあるものですね。こ

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確率論#3

確率論#3

簡単な定理を紹介します。どれも直感的に理解できるものが多いですね。(1)は測度の単調性、(2)と(3)は測度の連続性と呼ばれている性質になります。

定理1.3
(1)$${A,B\in\mathcal{F}}$$に対して$${A\subset B}$$ならば$${\mathbf{P}(B\setminus A)=\mathbf{P}(B)-\mathbf{P}(A)}$$が成り立つ。特に$${\

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確率論#2

確率論#2

次に、日常で使われてる確率について定義を見ていきましょう。見ての通り確率とは、集合から[0,1]区間内の実数への関数と捉えることができます。

定義1.2
可測空間$${(\Omega,\mathcal{F})}$$において、次の2つを満たす$${\mathbf{P}:\mathcal{F}\to[0,1]}$$を確率測度と言う。
(1)$${\mathbf{P}(\Omega)=1}$$
(2)

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確率論#1

確率論#1

確率空間を論じていくために確率を考える対象、つまり可測空間をまず定義します。高校数学までであれば有限集合を対象にしていましたが、もちろんそれだけでは考えられないことも出てきます。そこで素直に成り立って欲しい性質を無限集合で集めたものが$${\sigma}$$-加法族(集合体とも言う。)になります。

定義1.1
$${\mathcal{F}}$$を$${\Omega}$$の部分集合の全体とする。

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