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■要約≪組織行動のマネジメント 前編≫


今回はスティーブンP.ロビンスの「組織行動のマネジメント」を要約します。組織行動学(OB)の代表的な教科書と言われており、MBAのテキスト等にも用いられている本です。「組織行動学の定義」・「組織の中の個人」・「組織の中の集団」・「組織のシステム」の4分野で構成されており、今回は主に組織の中の個人の役割を説いたパートをまとめていきます。組織にどのような力学が働くかということを体系的にまとめた本で、研究論文からの引用が多く非常に示唆に富む本だと感じています。

「組織行動のマネジメント」

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■ジャンル:組織行動学

■読破難易度:中(実験やデータを基に記述がなされているので、前知識がなくても比較的容易に読むことが出来ると思います。)

■対象者:マネジメントに関わる方全般・組織と個人の関係性に興味関心のある方・行動経済学や心理学に興味関心のある方

【要約】

■組織行動学とは

「組織内で人々が示す行動や態度についての体系的な学問」であり、「人間の行動について説明し、予測し統制を助けること」を目的としています。心理学・社会学・人類学・政治学など様々なエッセンスを統合して用いた学問であり、人を対象に責任をもつマネジメントを助ける学問と言えます。

■個人の動機付けに関する理論の歴史

・旧来の理論はマズローの五段階欲求説(自己実現欲求を再上位とした五段階のピラミッド形式で人間の欲望は階層化をするというもの)・マグレガーのX理論Y理論(X理論は人は怠慢であり、矯正を強いることで頑張らせないといけないという性悪説・Y理論は人は自己実現や内発的動機付けに基づいた能動的な生き物であるという性善説)・ハーズバーグの動機付け要因衛生要因理論(動機付けにより人は頑張るが、その前提には整った外的環境がないと機能しないということ)の3つが有効であるとされて来ました。全ての理論にはケースバイケースな側面があり、人間の組織におけるメカニズムを説明しきれているとは言い難いというのが現代の見解です。※それぞれの理論の限界については割愛。

・上記理論の前提に立ち、組織マネジメントにおいて有効であるとされる現代の理論は「目標設定理論」「職務設計理論」であるとされます。目標設定理論は目標を設定し、その目標を達成する為に普段以上に負荷・努力をすることで能力開発と高いパフォーマンスを目指すという思想の理論で、目標管理制度(MBO)として20世紀後半以降の組織マネジメントの潮流となりました。職務設計理論は人に着目することも大事だが、従事する仕事自体をしっかり科学しないと適切な人材マネジメントは出来ないという前提の基で仕事を定義し測定することが大事であるという主張をなしています。現在の職務要件定義等に用いられている考え方です。

・共通するのは「人は仕事を通じて能力開発と自己実現を目指すべき」という性善説に立っている点と言えるでしょう。

■個人の意思決定

・「同じ状況下に置かれても、組織において個人が下す意思決定に差が出るのは外的環境の認知・スキル習熟性・価値観等の差異によるもの」ということを個人の意思決定のメカニズムを分解して説明しています。※詳細は割愛。

・マネジメントは「人は感情の生き物であり、かつ文化的背景や組織の制度による制約等を受ける為多様な意思決定が生まれる」ということを理解して、意思決定や組織運営をしないと有効に機能しないと説かれています。


【所感】

・大学時代に講義を受けた「経営組織」を思い出す形で読み返せたのでとても面白く読むことが出来ました。マネジメント業務に関わる中で必然的に関心を持つ組織の力学や組織内の個人の役割・メカニズムについて研究ベースに淡々と記述があり、深みのある内容となっています。※要約で用語や内容を抜粋しても無味乾燥なので今回は敢えて割愛しています。

・個人の癖として、何か物を見るときはその人個人のスキルや価値観にだけ着目して知覚してしまいがちですが、組織という枠組みの制約の中で個人は行動しているという前提を認識しないと現状把握や打ち手はずれてしまうなと反省をさせられました。

・組織行動学をしっかり理解し、現実の局面に適応していくためにはまだまだ訓練が必要ですが、この分野の知識を体系的に取得できるのは素晴らしい本だなと思いました。

以上となります!

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