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【ショートショート】#8 最後のお立ち台

 君のお仕事は簡単なんだよね。ほら、目の前にステージが見えるでしょ?あそこに立って、来る者全てにナイフを突きつけて、気に入らなければ刺し殺せばいいんだよ。それだけで君は何もこの先も困ることも無いし、恨まれることもない。まっさらなまま生きていける。

 君は立ち向かってくるもの全てにそうやってナイフを突きつけて殺せばいい。歯向かう物が居たら君の周りの人達が全員。余すことなく君の味方だよ。

僕は渡されたナイフを手に持つとその言葉の先に質問をぶつける。

え?どうしてそんなことが可能なのかって?どうして人を殺しても罪に問われないのかって?

それは簡単だよ。だって君は人を殺すわけじゃない。そのステージに上がってきた物を殺すんだから人を殺してはいないんだよ?

それと、自分のステージに登ってくる奴なんかある意味無許可で無慈悲な不法侵入者だ。君が今まで作り上げて来た物語の上に乗っかって、それで殺される。

だからそれに文句をいう奴はいても、それ以上のことは出来ないんだよ。

 殺すのは派手だからその時は文句を言われることも有るだろう。でも文句をいう奴は君を殺すことは出来ない。このステージに上がって君を殺すことが怖いんじゃない。

彼らは人と関わるのが怖いのさ。

・・・まあでも、確かに君の言う通りかもしれないけど、きっといつか君も同じような君が現れた時、真っ先に殺されるかもしれないけどね。

僕もまた君にはあまり興味が無いのさ。

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