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【ショートショート】#12 裸の街

 せっかくいい街を作ったのにね。

 魔王に占拠されていた土地を取り戻し、勇者達はその後隠居していた。隠居した後も彼らは破壊された街を作り直すために奮闘していた。

 城壁を作り、市場を作り、議会も作った。

 今までの絶対王政は崩れ去り、これからは民主的な国を一緒に作っていこうと努力した。その結果、素晴らしい都市が完成したのだ。子供には厳しいかもしれないが、この街は若者や年寄りにとってまさに万能。働く場所も住む場所も完備されているし、要望もすぐに通る。便利な施設は次々と建設されて人のいう事を聞く街が完成した。

その街は人のいう事だけを聞いて成長していった。

 成長はやがて時間が経つと成熟し、完熟する。
果実が完熟すると熟れすぎて地に落ちるがこの街は地に落ちることは無く、変わりに地獄に落ちることになった。

「全部を全部、外に置きたいんだ」

 人は無意識に合理性とか効率化を追い求める。追い求めた先に街が出した答えは一つだった。

「この街に必要なものは、この街の外に置いておこう。そして必要なモノだけ運んでこよう」

 そうやって街で使う物を全部街の外で作り始めた。しかし、街の人や勇者達は肝心なことを忘れていたのだ。

「魔王に占拠された土地を取り返しただけで、魔王を倒したわけでは無い」

 今日も今日とて街の人が口にするものは、せっせと街の外側で魔物達が作っているのだろうか。

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