【ショートショート】#13 馬鹿試合の果てに
ある街に銀行強盗が入ったらしい。小さな田舎町。小さな集落がより集うその街では朝からその話題で持ちきりだった。
僕はそんな時にたまたまこの街に来てしまった。もしかしたらよそ者の僕がその強盗と思われるかもしれない。でも、お腹が空いたから近くの定食屋に入った。そこの店主はやや顔を曇らせている。きっと銀行強盗のことで心を痛めているのだろう。何か出来ないか?そう思ってその定食屋で一番高い物を注文した。・・・しかし店主の曇り顔は消えない。
「どうしたんですか?やっぱり強盗が気になるんですか?」
僕はおせっかいだから声に出てしまったのだろう。落ち込んでいる店主の方を向いて言葉をぶつけた。すると、曇り顔の店主は僕の方を見ると「サービスだ」と言っておかずを増やしてくれた。
励まそうとしているのに励まされた気分になってしまった。
店を後にして街を巡る。その銀行の場所に行ってみようと足を進めた。
その場所に付くと僕は驚きを隠せなかった。
その場所は銀行どころか建物が何一つないまっさらな土地。
僕は何度も何度もスマホで位置を確認した。
「おかしい。こんなはずは無い」
僕は近くを歩いている青年に声を掛けた。ここにあるはずの銀行が無いこと、そして銀行強盗の話をした。
すると青年は優しい顔をして僕に語り掛ける。
「そうですか・・・かわいそうですね、あなたスマホに化かされたんですよ」
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