決められない!|ある土地での物語#2
家の敷地には井戸水が欲しかったので、地元の業者さんに見積もりを依頼したら、地盤がかなり強いらしく相当深く掘らないと出てこないかもしれないとのことで360万だった。
さく井工事は、一般的に20~50万、50m以上の深さで100万程と調べていたので想定外に高く、どんだけ深く掘るんだ、と断念した。
不動産屋さんに聞くと、昔は渓谷だった場所を切り拓いた地域、とのことで、なるほどそれで集落が全体的に高低差の激しい地形なのだと思った。
地盤が強いのは安心だけど、そうなると水は水道からと沢から少し引けるかどうかだ。(民家があるので上下水道は来ている)
すこし残念だけど、ここは仕方ないかなぁと思った。
不動産屋さんから、他にも何件も問い合わせが来ているが一旦キープしているとのことだったので、いよいよ本格的に検討段階に入った。
土地のメリデメを挙げてみる。
どこに重きを置くかだけれど、安くて他の条件も80%クリアしていて、これまで何十件と見てきた中では一番好条件だった。
パートナーである夫の中では、なんの申し分なく購入しようと決まっていた。なのにわたしが購入に踏み切れない理由があった。
どうしても最後のピースが埋まらない。
あと一押しなのに。もう決めなきゃなのに。
どうしても・・・わたしにはある希望が浮かんでしまっていた。
『家から毎日美しい朝日と夕日が見たい』
昼間の日当たりはバッチリだが、奥まった立地と、周囲が木々で覆われているため、見晴らしがよくない。
それくらいなら、と思わなくもないが、それは一日のほんの少しの時間だとしても大切にしたい時間だった。
特に夕飯の支度をしながら見る夕日にはすごく癒されていた。
この土地では朝日も夕日も見れない。
散歩にいって見ればいいかとも思ったがかなり歩かないと見れない立地だった。
決め兼ねてもう2週間以上経っていたと思う。
他の購入検討者との兼ね合いもあり、不動産屋さんとはリミットを決めていて、ただわたしたちが決めなかったらすぐに別の購入者が決まるだろうと思っていたので、パートナーは正直焦っていた。
「すぐに決まっちゃうかもしれないし」と言うパートナーの穏やかでない様子を見ていて、焦りから決断することは良いことなのだろうか、と少し苦しくなった。
そういった気持ちをパートナーに伝えつつ、状況打破のために掃除をすることにした。
過去記事にも書いたことがあるが、水拭きはなにかを変えたいときに有効だと知っていたので、玄関、廊下、トイレ、キッチン、脱衣所など、あらゆる箇所を水拭きした。パートナーも、4歳の息子も一緒に。
するとパートナーとわたしで、
一旦手放して土地に選んでもらおう。もし購入者が決まれば仕方ない。
と、答えが出て、その旨を不動産屋さんに伝えた。
パートナーは「焦りと執着があった、こういうときはよくない」といつもの冷静さを取り戻していて、それがわたしはすごくホッとしたし、パートナーとしては決めたかったのに、そこで手放せるのはすごいなと思った。
わたし自身も、自分の内からの欲求を、まあいいかで無視しなかった自分とパートナーに感謝した。
それでも、この選択で良かったかなぁ、と複雑な気持ちが全くなかったわけではなかったが、一旦すべてリセットして手放すことにした。
そしてまた、地道に他の土地探しを始めた。
(つづく)
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