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誰かの発言で「話しても良い空気」が広がっていく話

話題にしづらい話題、っていうのが日本にはある。

タブーとまでは言わないけれど、相当に深い安心感のある関係じゃないと話題に出すのをためらう話。例えば、政治、宗教、セックス、性教育、人種やルーツ、LGBTQ、移民、etc。気候変動の話も、まだまだ場に出ることは滅多にない。

自分も、例に漏れず世の中の空気を読んで、少し前までそうした発言や発信をすることをためらっていた。

ただ、最近は積極的に(少し強めに)気候変動やサステナビリティの話をイベントなどで発言するようにしていて、色々と良かったことがあったので紹介しようと思う。

嬉しかった経験

2021年くらいから、起業家としての関心・危機意識がサステナビリティ、特に喫緊は気候変動問題に対して高まっていって、自分なりに調べたことをときどきブログやSNSなどで共有し始めた。

ちょっとの勇気を持って投稿したわりにほとんどコメントも付かず、「ま、こんなものか」と思っていたのだけれど、少し後になって友人から「いつも読んでるよ。すごく良いと思う。」と声をかけてもらった。友人いわく、オープンなところにコメントは返しづらいけれど、読むことで自身のなかにあったモヤモヤも言語化できているらしい。

また、まだ関心を持っている人が少ない(けれど奥が深い)テーマについて発信していると、目に付きやすいようで、この半年ほどで様々なありがたい機会に呼んでいただけるようになった。Climate Tech関連のYoutube番組や、研究者を交えたカンファレンス経産省主催のイベントでのパネルディスカッションなど。

どちらも、頭の中で悶々と課題意識を抱えているだけでは決して得られなかった・気付いてもらうことのなかったことだ。(そして、本当に素晴らしい経験だと思う。)

「話しても良い空気」が広がっていく

僕が話題に出すことで、その場には(少なくとも僕に対しては)、その話をして良いんだという空気をほんの少し作ることができる。普段はそうした発言をしない人も、胸のうちに秘めていた思いや課題意識をその場に出してくれるようになる。

それがイベントの場でも、FacebookやSNSのフィードでも、聞いてくれた人の1人や2人が自分の職場や友人関係に戻ったときに同じことをしてくれれば、その人の周りにもまた同じような安全圏ができる。

そうやって、話しても良い空気、積極的に話す空気が伝播していくんじゃないかと思って、最近は能動的に自分がそのきっかけになろうとしている。

友人関係から友人関係へ、安全圏を広げていく

もちろん、先陣を切る人は、踏み込みすぎて”燃える”リスクもあるし、空気を壊しすぎて”スベる”リスクもある。とはいえ、今のところはメリットばかりあって、デメリットはまったく無い。共感してくれる人は共感してくれるし、関心のない人は勝手にスルーをしてくれる。空気を読めないキャラ、というのを確立しておくとさらに楽だ。

空気を変える力=言語化力?

・・・とはいえ、誰でも簡単にできることじゃない、ってこともわかる。空気を変える発言をするには相当な慣れや自信(または自己評価に対する諦観)が必要だろうし、大人数のミーティングで空気をつくるのは自分の経営者という立場が下駄を履かせてくれている(だからこそ、経営者はその責任を果たさなきゃいけないと思っている。)

世の中の空気が変わるきっかけのひとつは、ショッキングな事件や災害だ。パンデミックや大震災のあと、僕らは前提の大きなゆらぎを感じ、未来に向けた会話が行われやすくなる。BlackLivesMatterも、ショッキングな事件から始まった(課題の根っこは過去から続いていた)ムーブメントだ。

もうひとつの空気を変える力は、課題や仮説の言語化力だと思う。その時点のメインストリームに反するものでありながら、確かに説得力のあるコンセプトを提示できるか。そして、自らの粘り強い行動でその良さや正しさを示していけるか。

ゼブラ企業」のコンセプトは、ユニコーン企業第一主義の風潮のなか提示されて、確かな地位を築きつつある。COTENは、歴史が好きなのはおじいちゃんだけのようなところから、ビジネスパーソン含めて歴史の面白さとリベラルアーツの重要さを感じ、学ぶ社会を作りつつある。Patagoniaの環境経営だって、いわゆる株主資本主義の場では”耳障りの悪いこと”を、力強いキャッチコピーと行動で提示して、反感と共感を集めながら段々と形にしてきたものだと思う。

僕の大切な友人には、日本への移民問題、子供の性教育、妊活のサポート、メンタルヘルス、同性婚 etc…に取り組む素晴らしい人たちがいる。みんな最高だと思う。その発言と行動が新しい空気となっていくまで、ともに背中を支え合いながら走っていこう。

最後に ダークサイドを止める力

話題にしづらい話題の逆で、もう時代遅れになっている話題もある。

誰かのゴシップ、ルックス(ルッキズム)、他人から勝手に言われる結婚適齢期、セクシャルな比喩表現、男女の役割、ブラックジョーク etc…

吉野家関係者の件や、オリンピック演出チームの件を挙げるまでもなく、こうした「NGな話題」は止めなきゃいけない。もしその場が「言ってOKな空気」になってしまっており、誰かが異を唱えなきゃいけない。

これがめっちゃ難しい。無自覚にそうした発言をしている人がその場の年長者や主賓、大御所だったりして、その場で面と向かって異を唱えるには相当な勇気が必要だろう。(だからこそ、後になって炎上するのだけれど。)

もしそうした場に居合わせたなら、その人自身のためにも、何よりその発言に傷付いている人のためにも、勇気を持って空気を変えに行こう。僕も頑張ります。大丈夫、長い時間で見れば必ず新しい価値観のほうに空気は変わっていく。

同時に、自分自身がダークサイドに落ちてしまわないように気を付ける。理想的には「あれ、もうダサいよ」と真摯に教えてくれる真の友人やパートナーが近くに居てくれるといい。誰も注意してくれない存在になってしまわないように。



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