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方舟 夕木春央(ネタバレあり)

あらすじ

9人のうち、死んでもいいのは、死ぬべきなのは誰か?

大学時代の友達と従兄を一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った3人家族とともに地下建築の中で夜を過ごすことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。

そんな矢先に殺人が起こった。
誰か1人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。
犯人以外の全員が、そう思った。タイムリミットまでおよそ一週間。
それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。

あらすじより

ざっくり感想

とにかくすごかった。
帯で絶賛されていましたが、最後の衝撃は一生ものです。ほんと。
初めてミステリーを読んだ時の様な、ハラハラドキドキが味わえます。


*ここから下はネタバレを含みます*

ストーリー覚書

登場人物

主人公と主人公の従兄、大学生の同級生5人。(男性2名女性3名、内結婚1組)
きのこ狩りで迷い込んだ家族(父、母、息子)3人。
10人は山奥の地下施設「方舟」で一夜を過ごすことになった。

序盤

方舟は地下3階からなっており、電気は燃料が尽きるまで使える。
携帯は圏外。
地下3階は水没してるのでいけない。
出入り口は地下1階から、非常口は地下3階から行ける。
どちらもマンホールみたいで、ふたを開けて、はしごで上り下りする。
出入り口、非常口は機械室のモニターで様子を見ることができる。
出入り口から方舟へ通じる洞窟内に、大岩が転がっている。

翌朝地震が起き、出入り口に通じる扉に大岩がぶつかり出られなくなる。

地下2階の巻き上げ機を使えば、地下1階の大岩を地下2階に落とすことができる。そして出入り口から脱出できる。しかし巻き上げた人はその部屋から出れなくなる。
巻き上げ機のある部屋には、地下3階への階段があるのみ。(水没している)
また山奥の地下深くの建築物なので、救助は不可能とされる。

モニターによると、非常口が土砂崩れで埋没して開かない。
地震によって水位が上がる様になり、一週間で水没する。

1人が犠牲になって9人が脱出するしかない。

それがわかったときに、大学の友人男1人が殺害されているのが見つかる。

なぜ殺害したのかはわからない。でも犠牲となるべきは、殺人を行なった犯人だ。
そうして犯人探しがスタート。

謎解き

なんやかんやあって、第2(大学の友人女性)、第3(家族の父)の殺人が起きる。

従兄が探偵役。水没まであと2日くらい?で推理を発表する。
偶然生まれた証拠もあり、探偵の完璧な推理で犯人が判明。犯人も自白する。

犯人は大学の友人の女性。結婚しており、不仲の旦那も一緒に参加している。
探偵の推理によると動機は旦那に罪を被せ、生贄を旦那にするため。第2、第3の殺人はそれを隠蔽するため。
犯人が判明したので、みんなで犯人に生贄になってくれと懇願する。犯人は生贄になることを了承する。

主人公は犯人のことが好きなので、一緒に残るか苦悩するが、外へ出たい一心で犯人と決別する。
「じゃあ、さよなら」

エピローグ

残り10ページ。

犯人が巻き上げ機を操作する。大岩が動く様子を扉の前で見る主人公たち。そのとき、主人公のスマホにトランシーバーアプリで犯人から連絡がくる。

「これから死ぬのは私じゃなくて、主人公たちなの」と犯人は告げる。

犯人は誰よりも早くモニターを見た。水位増加も知っていた。
モニターには出入り口が土砂で埋まり、非常口が無事な映像が映っていた。
このままでは水没した地下3階を潜るための潜水道具の取り合いのバトルが起きてしまう。
モニターの配線を交換して、出入り口と非常口の映像を逆にした。
そして殺人を犯す。非常口と出入り口の違いがわかるかもしれない2人と、犯人を捕まえるために潜水道具を使っていた1人を殺害したのだ。すべては自分が生贄になり、非常口から脱出するため。いずれは自白するつもりだった。

犯人が「もし主人公が自分と残ることを決めたら、一緒に脱出するつもりだった」と言われ絶望する主人公。
「じゃあ、さよなら」
主人公と同じ台詞を言ってトランシーバーアプリを切る犯人。

大岩が地下2階に落ち、歓声をあげる仲間たち。
絶望する主人公。
発電機が止まり、真っ暗になる方舟。
数秒後、絶望の絶叫が聞こえた。

読んでみて感じたこと

この本は一日跨いで二日で読み終わったんですが、
その間ずーっと気になってたのは

犯人の動機。

このクローズドサークルの中で殺人をする意味がわからない。
殺人をして犯人だってバレたら、速攻周りから

「ヤバいやつ→生贄にしよ」

ってなるから。

でもその思い込みすら、犯人の思う壺だったのがわかって

ファーーーーーー!!!

って鳥肌が。

まさか、非常口と出入り口の映像が逆転してるなんて…。犯人の今までのセリフや行動は全部反対になるやん。エピローグ10ページで巻き返しやば。即再読。

犯人の推理に対する感想
最初の殺人が起きたときの書き方
大岩を父が落としそうになったときの反応
生き残ったあとどうなるか相談
主人公に相談してるシーン

自分が脱出するために、もしくはした後のことを話してると思うと、意味が変わって…ホント怖い。

あと最初の方舟の説明で「啓示を受けた者が助かる」って書いてあって、伏線回収すごっ!と感動。

講談社のネタバレサイトもあり、とても楽しめた。

「もしモニターの映像を最初に見たのが他の人だったら」とか考えても楽しいかも。麻衣は頭が切れるから、もし最初にモニター見たのが従兄だったら、探偵役は麻衣だったのかなぁなんて。

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