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旅する本たち、一人サイン会

まう、まうまうまうまうまうまうまう。
たった2文字のひらがなを、数えきれないほどメモ用紙に書き込んでいる。ひらがなふたつを書くだけのことなのに、私はない頭を必死に引っ掻き回していた。

先週購入してくださった方々から、続々と本が届いたよ報告がやってくる。そして新たに買ってくれる方もいて、私は今幸せの海にひたひたと浸かっている。

不思議な感じだ。買ってくれた人に送ってもらった写真には、私の本が写っている。つい数日前まではうちにどかどかと積み上げられていた本なのに、今は私の手元を離れ、全国で腰を落ち着けつつある。しかも全国どころか、これから海を渡る本まであるのだから驚きだ。

新しい持ち主に迎えられた本たちは、心なしか照れくさそうにはにかんでいるように見えた。本を作るってこういうことなのかと、妙に腑に落ちた気がする。


思っていたよりも注文がいただけたことに、先週の私はうっひょひょ〜いと浮かれて過ごしていた。本を発送できる週末が待ち遠しくて、サイトで何度も注文を確認してはにまにまする日々。

ところがどっこい、私は大事なことを忘れていたのだ。
皐月まうとして活動しはじめて早2年半。しがない素人作家の真似事をしてきたこれまでは当然必要なかったのだけれど、いざ自分の本を売る、という段階に来てようやく、「皐月まうのサイン」が求められることに気がついた。(実は依頼されるまでサインのことなんかちっとも頭になかったなんて言えないよ〜)

さあどうする! サインなんて小学4年生のときに無性に憧れて、親に筆記体を教えてもらいながら作ったなんとも幼稚なサインしか持っていない。週末には本を発送するので、それまでにサインを考え、完成させなければ。


皐月まうというペンネームは5秒で思いついた実に安直な名前なのだけれど、今となってはちゃんと私のアイデンティティとしてこの活動の看板を背負ってくれている、大切な名前だ。

自分で言うのもなんだが、特にまう、という下の名前はかなり気に入っている。ひらがななのも、口にしたときの響きも間が抜けてていい。ちょっとあざとい気もするけど。
だからサインはひらがなのまうを使いたいな、と思った。単純で、だけど私らしい要素も加えられるサイン。それならハリネズミは必須だ。このふたつをうまく組み合わせて、皐月まうオリジナルのサインが作れたらいいのだけれど。


と、あれこれ考えながらペンを走らせるものの、なんともいまいちなアイデアしか出てこない。そういえば、私には発想力というものがない。壊滅的にない。小説書いといてなんじゃそりゃ、という話だけれど本当にない。

それに絵心はある方だと思っていたのに、描いてみたハリネズミがなんかハリネズミじゃない。これはどっちかというとヤマアラシだ。ハリネズミコレクターのくせにヤマアラシとハリネズミの違いを実はよくわかっていないのだけれど、それでもなんかちゃうわ、ということだけはわかる。

シンプルなものほど難しいとはこのことだ。不細工なハリネズミたちが次から次へと生み出される中、これはハリネズミなのかヤマアラシなのかというバトルが毎度繰り広げられる。脳内では「まう」という文字がゲシュタルト崩壊を起こしていた。
最終的にカナ猫さんに泣きついた私は助け舟を出してもらい、「ええやんこれ」というお言葉に全てを委ね(責任転嫁とも言える)、私のサインはめでたくそれっぽいものになった。

なんやかんや言いつつ、まう、というひらがなの丸みとハリネズミのころんとしたフォルムが調和した、なかなかいいサインになったと思う。

そんなサインを作るきっかけをくださったのが、つる・るるるさん。つるさんには私のファーストサインを差し上げた。ひゃ〜〜つるさんの手元に私のサインがある! 完成したサイン、こんな感じです。

できたらできたで使い倒したくなってしまい、実はお買い上げいただいた方全員分、どこかに潜ませている(と言うほど探す場所でもない)。見つけたらどうか、温かい目でご覧ください。たまに不細工なのがいるのでごめんなさい。というか字が汚い。ボールペン字が苦手すぎる。


それでは引き続き、ご注文お待ちしております。匿名配送なので安心してお買い求めいただけます。週末発送、週明け頃配達になる予定です。今ご注文いただいている皆さまは、もう少しお待ちください! 心を込めてお届けします。(カナ猫さんの本は完売しました。新作の追加をお楽しみに〜)

さあ、私の分も旅をしておくれ、愛しき本たちよ。

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