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あのときはごめんね

みなさんは自分の発した言葉が明らかに場を壊して空気を凍らせてしまった、やっちまった〜!というシチュエーションに遭遇したことはありますか。
私はあります。
しかも自覚的にやっちゃったのが1回。

普段の私が遭遇するコミュニケーションの失敗は咄嗟に返事が出てこなかったり、変に考え過ぎてとんちんかんな返事をして笑われたりということばかりでした。

例えば、大学の講義のアイスブレイクで「ラーメンチーム」「カレーチーム」に分かれて好きなところをプレゼンするというレクリエーションをしたときのことです。
その時カレーチームにいた私が
「カレーはおいしいし、食べるとテンションが上がって嬉しい」
と発表したら講義室が笑いに包まれました。
こう書くといいことのように聞こえるかもしれませんが、私におちゃらけて誰かを笑わせようという意図はまったくなくて、完全に笑われているシチュエーションです。
今なら笑わせるのも笑われるのも別に、偶発的な事故でこんなことが起こってもまあいいよね、と水に流すことができます。
しかし当時は私も精神的に未熟でとても恥ずかしかったのを覚えています。

これもコミュニケーションの失敗ですが、今回紹介するのはどちらかというと「自分は悪いと思っていない」発言での失敗です。

問題の件は大学3年の演習講義の時に起こりました。
私の大学は福祉について学ぶ学科があり、私もそこに属していました。
ちょうど講義で精神医学だとかも学んでいたこともあり、結構相談支援(社会福祉士さんがやるやつ)だとか、支援を利用するひとのためになるような簡単な医学の勉強に盛んに興味を持っている時期でした。

講義を受けようと該当の講義室へ足を運ぶとすでに何人かの学生が講義室に来て何か楽しそうに会話をしていました。
いつも座る席に座ると私にも声をかけてくれたので一緒に話をしていました。

何の話をしていたのかは忘れましたが、誰かが脈絡もなく
「ねえ、そういえば耳鳴りって何で起こるかわかる?」
と話題を投げかけてきました。

その時私の頭は数日前に受けた精神医学の講義のモードになりました。
私のいる学科は社会福祉士や精神保健福祉士になるための勉強をするのが専門だったのですが、耳鳴りの原因については知らなかったし、知っておけば将来の利用者の方が困った時に役にたつのではないかと思いました。

「えっ何?わからんから教えて」

普段それほど話をしない友達に身を乗り出して聞き出そうとする私。
すると友達は得意そうに、そしてもったいぶってから私の方を見てこう言いました。

「耳鳴りが鳴ってる時ってね、それはそばにお化けが通りかかってるときなんだって!!」

「……はあ???」

めちゃくちゃ怒気をはらんだ「はあ?」でした。
やべえ、やっちまったと思うももう遅い。
てっきり何か医学的な根拠のある情報がやってくると思っていたのに大きな肩透かしを喰らってがっかりしたのと、お前まがりなりにも福祉の勉強してるのに今それはないやろという呆れた気持ちがダブルパンチで襲ってきての「……はあ???」でした。

マイナスの方面で思ったことを思わず口に出して相手を強く否定してしまったのは後にも先にもこれっきりでした。
言い訳にすぎませんが私もあの頃はなんとしても大量にある必修科目を有意義に受講して単位を取得し、ゆくゆくは国家資格を取らなくてはならないという気持ちの余裕のなさがありました。

だからといって親密度の高低にかかわらず同じ目標を持って勉強している友達にあの言い方はマジなかったなといまだに反省しています。
夢にも出ます。

あれから私は先述の心の余裕のなさが災いしたのか心身の調子を崩し結局国家試験を受けることは叶いませんでしたし、当時の学友たちにまともにお別れをすることもなく大学を卒業しました。

もう連絡先をもっていないのであの子に「あの時はごめんね」と謝ることもできないのですが、ここで代わりにお詫びさせてください。
ほんっっっっとにごめんね。

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