女湯男児問題について思うこと

異性の風呂やトイレに入れるのは何歳までか。また、それは許されることなのか。Xこと旧Twitterで揉めに揉めているのを目にして、思い出したことがある。

私が小学一年生のときの話。家族で近所の温泉に行った。母と私はいつものように女湯へ。一足先に身体を洗い終えた私は、意気揚々と露天風呂に向かった。
その日は利用客も少なく、若くても自分の親くらいの年齢の人がほとんどで、館内は落ち着いた雰囲気だった。
だからこそ、子どもの姿は目立った。また、見ず知らずの大人は私にとって景色の一部でしかなかったなかで、同世代の姿は自然と目に留まる。

湯に浸かっていると、ふと隣の浴槽に子どもがいるのに気がついた。そして目が合う。

クラスメイトの男の子だった。

男の子だ……しかも知ってる子だ……

驚きと気まずさ、恥ずかしさ。私が呆気にとられていると、その子はもの凄い形相で内湯に戻っていった。顔面蒼白とはまさにこのことだ、と幼いながらに思った。
ここは女湯。後ろめたい思いをしているのは彼のほうだ。男の子に全裸を見られたことよりも、同級生が女湯に入っているという、見てはいけないものを見てしまった気がして、私としても気まずいとしか言いようがなかった。

「ママ、もしかしたらクラスの男の子と会ったかもしれない」
母にはそう話したが、その日のことは決して口外しないと私は心に誓っていた。
もし私が学校で、
昨日〇〇さんと女湯で会っちゃった!
なんて言えば、彼は確実に揶揄われるだろうし、最悪いじめに発展する可能性があったからだ。絶対に隠さないと、と妙な使命感に駆られつつ登校し、本人から何か言われるのではないかと落ち着かない数日を過ごした。

もう20年近く前の話で、彼は覚えていないかもしれない。でも私はあのときの彼の顔が未だに忘れられない。終わった……焦りと絶望感に満ちた表情だった。
女児である自分は恥ずかしい思いをした。しかしそれ以上に、男児である彼のほうがよほど嫌な思いをしたのではないかと思う。

個人的には、未就学児が異性の風呂やトイレを利用するのは気にならない。
「何歳だろうがダメならものはダメ」
「早熟で、大人の女性にハラスメント紛いのことをする男児もいる」
それを否定するつもりはないし、
「安全性の担保という名目で女性ばかりが割りを食っている」
昨今のトランスジェンダーを含む風呂トイレ問題にかんしては理解できる。

でも、この問題をめぐるいちばんの被害者は大人ではなく、風呂で異性と遭遇してしまう女児と、親の都合で性別を無視される男児だと私は思う。
トイレについては、保護者が異性しかいなかった場合には多目的トイレを利用してほしいが、緊急時には致し方ないと思う。
温泉にかんしては娯楽のひとつなので、子どもが性別にあった場所を利用できるように親が配慮する(家族風呂にする、信頼できる同性の知り合いと一緒に入ってもらうなど)必要がある。
災害時の避難所ならまた議論が必要だろうが、温泉には入らなくても死なないし。

子持ち女性v.s.独身女性
女児親v.s.男児親
という大人同士の嫌悪感のぶつけ合いで終わらないでほしい。大人の都合で嫌な思いをする子どもがひとりでも減りますように。

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