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私が〝ドレス専門の〟縫製職人と名乗るわけ


こんにちは、まやです。


仕事をしながら、時折、ものすごく誰かに熱く語りたくなるような想いが込み上げてくることがあって、

今までは一人で頭の中でつらつら語って自己満足してきましたが、
せっかくこのように記録できる場所があって、しかもご興味を持って読んでくださる方がいるのなら、きちんと言葉にして残していってみようかなと、

唐突ですが、たまにそんな文章を書いていこうと思います。





私は自分の肩書きを名乗る時、「〝ドレス専門の〟縫製職人」とよく言います。

「縫製」という言葉自体、何それ?という人もいるので、何の仕事をしているのかと聞かれたら、「ウェディングドレスを縫う(作る)仕事をしています」と答えます。


相手の反応は、
「ウェディングドレス!?すごいね!」
「技術職ってこと?かっこいいね!」
「珍しいね、ウェディングドレス作ってる人なんて初めて出会ったよ!」


というかんじ。
すごく物珍しがられます。

昔から「誰でもできる仕事じゃなくて、特別なことがしたい」という願望が強かった私にとっては、そんな反応が嬉しくて、ちょびっと鼻高になったりもしますが、
同時に、「よくわからない世界」と思われて疎外感を感じてしまうこともあるので、結構寂しかったりもします。


ですが、それはこの世界を知ってもらうチャンス!ということで、
その都度、どんな仕事なのかを事細かに説明します。



縫製職というのは、会社にもよると思いますが、基本的にはパタンナー(服の型紙を作る人)からパターン(服の型紙)を受け取り、
生地を切る「裁断」から、ミシンや手で縫い、仕上げるまでを担当する仕事です。
(工場によっては裁断は裁断専門の人が担当する場合もあるようです)


私は工場での経験はないので、以下はアトリエで製作した場合での話になります。


ウェディングドレスは1人で1着縫う「丸縫い」をするのが理想ですが、だいたいは縫製の中でも手分けした方が効率がいいことが多いので、分担作業になります。
レースや刺繍などの装飾を手でつける時はとんでもなく時間がかかるので。

とんでもなく時間がかかるものでも、スケジュールに余裕があり、1人で丸縫いさせてもらえた時に初めて、ドレスを1人で縫えるようになったと実感した時のことを覚えています。


1人で1着、凝ったデザインのビックのドレス(スカートにボリュームがあるもの)を作る場合で、かかる縫製の時間は平均1ヶ月半ほどになります。

プレタクチュール(高級既製服)ならその製作時間はかかりすぎかもしれませんが、装飾を手付けするオーダーやオートクチュールのドレスなら、そんなところかなと思います。



この時点で、ドレスを作るということは、ワンピースやジャケットなどのリアルクローズを作るのとは全然違うということが、少しでも伝わったでしょうか?


洋裁の仕事をしている方ならおわかりだと思いますが、ドレスを作るということは、扱うものの大きさも、素材も、製作時間も、特殊なんです。


私が肩書きを名乗る時に、ただの縫製職人ではなく、〝ドレス専門の〟とつけるわけはここにあります。



私は文化服装学院で洋裁の基礎を学んだので、シャツ、スカート、パンツ、ジャケット、コート…など、一通りのアイテムは縫うことができます。

工業用ミシンも使えますし、
縫製指示書があればそれ通りに縫い、なければどんなものを作りたいか伝えてもらえれば、私の持っている技術を使って縫い方を考えて作ることもできます。

ですが、ドレス以外のものに関しては、正直プロ(オートクチュール)レベルで縫える自信はありません。
(丁寧に縫うことはできますが、それらを専門に縫っている方に比べたら不慣れであるという意味で。)


洋裁の中でも得意不得意、好き嫌いはあって、
私はドレスを作ることが好きで、ドレスを作るために文化に入りましたし、
ドレスを作っている時が一番楽しくて、上手に縫えているという手応えもあります。

好きなものを作るということは、それだけモノづくりにかける愛情も深いということですしね。


なので、学生の時から「ドレスだけを縫いたい」という気持ちが強くて、
ドレスに特化した職人になろうということを決めていました。

いわば、紳士服を専門に作るテーラーのように、ドレス専門の職人になりたいと思っていたのです。


そんな思いもあって、ドレスならウェディングでも衣装でも、何でもよかったのですが、本当に、とことんドレスが作りたかったので、ウェディングドレスの会社に就職し、晴れてドレス縫製職人となることとなりました。


そして、ドレスを作れば作るほど、ドレスの縫製技術は磨かれ、
他のアイテムを作る機会はなくなりましたが、気持ちだけでなく技術面も、ドレス製作に特化していくことになりました。


120×240サイズの裁断机より大きいスカートのパターンを裁断するのが当たり前になり、
50メートルのチュールの反を1着分で使い切ったり、
レースを縫いつけるだけで3週間かかることにも慣れて、
ふにゃんふにゃんな薄手の扱いにくい生地には未だに泣かされることもありますが、


それが私の仕事なのです。



更に言えば、ドレスの縫製の中でも、裁断、ミシン、アイロン、手縫い、レースつけ、花つけ、刺繍、リボン作り、薄物生地縫い、柄合わせ、無地の生地縫い…など、様々な作業や縫い方があって、

私はレースやお花をつける手縫い作業が好きで、得意だと自負しています。


手縫いの技術を極めたい、という思いもあって、オートクチュール刺繍を学びにパリへ行った、というのもあります。

ルサージュ留学経験のあった元社員の先輩が、レースをつける時の手つきがなめらかだった、という噂を聞いていたので。




縫製職人と言うと、

「今来てるワンピースは自分で縫ったの?」

とよく聞かれますが、リアルクローズの服を作ることはありません。

それは、上記に述べたように、私は〝ドレス専門の〟縫製職人だからです。


とはいえ、せっかく基礎を知っているので、リアルクローズも縫いたいな〜と思うことはありますが、
慣れないことをやるのは結構気合いが必要なので、なかなか手を出しません。笑

プライベートの時間はウェディング小物を作っていたりしますしね。



フリーランスの今は、お仕事を受ければドレス以外のものを作ることにも挑戦してみようと思っていますが、

やはり得意なのはドレスなので。

お客様にご満足いただけるものを、自信を持って提供できるのは、ドレスの技術だと思っているので、私は〝ドレス専門の〟という言葉を強調しています。




なんでも縫える縫製士さんは本当にすごいと思います。


けれど、〝ドレス専門〟と、たったひとつの技術を極めるということも悪くはないと、
私は思っています。



2018.4.28 まや

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