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23-12-13 【読書】本の雑誌編集部『本屋、ひらく』

久々の読書記録になります。
前回は5月でした。というか読書記録、今までにこれしか書いてない。

これ以降3冊読んではいるんですけど、記事にはしていませんでした。
何かの「感想」を書くのも自分自身苦手だな~と感じていて、本を読み終わったら二言三言「読書メーター」に記録して終わり、なことが多いです。
でも苦手だからこそ、しっかり書いていきたいなとも思うので、これからはアウトプットも頑張りたいと思っています。


図書館から借りたこちらの本を読みました。

「本」が好きな人間にとって「本屋」という場所はなんだか引力があるように感じます。平たく言えばとても好きなのです。
大型書店でも、個人の小さな書店でも、図書館でも、本がワサワサとたくさんある場所に身を置くとどうしようもなく血が湧きたつというか、活気がみなぎってくる感覚があります。(本や読書が苦手な人には理解されないんだろうな……)

「自分も本屋を経営したい!」という確固たる意志を持ってこの本を手に取ったわけではないのですが、うっすらとした憧れはあります。

( ↑ こんなことを書いたこともありました……)

そんな中、この本を読んで分かったことは
・本屋は、始める以上に続けていくのが超大変(儲からないから)
・「本を売る」以外に利益を作る仕組みを作らないと難しい
・でもみんなすごく楽しそう
ということでした。


説明が遅れましたが、この本は、独立書店を営む22人の店主たちがどのような経緯で本屋を始めようと思ったのか、開店までにどのようなことがあり、開店してからどのように続けてこられたかなどが、店主本人たちの手でつづられています。

まず第一に、22人の書き手によって語られる22通りの本屋にまつわるドラマが読み物としてとても面白いものでした。
書き手ごとに文体や語り口が違うのもそれぞれの個性が出ているし、内容もエッセイのような、Howtoのような、人生哲学のような、多様な書かれ方がされていています。

それでも皆さんが異口同音に唱えるのは「本屋は厳しい状況に置かれている」ということ。
その原因は、世の中の人が本というメディアから離れていること、電子書籍などもあり紙の本が売れなくなっていることなどが原因です。
店主の皆さん、それはもちろん重々承知の上。
そんな時代であっても、自分が本屋をやろうと思ったのはこういう想いからだ、という部分にそれぞれの信念や情熱、そしてとびっきりの個性が溢れます。

中でも私が痺れたのは、「UNITE」という書店を営む大森皓太さんの言葉。
少し引用してみます。

 情報収集や娯楽において、本はその役割を縮小したと言えるだろう。そして、その機能に目を向けたとき、本が新しいメディアに移譲した機能は「速さ」であるといえる。しかし、これは悲観すべきこととではなく、寧ろ喜ばしいことだ。娯楽の選択肢が増えることは素晴らしく、また便利になったということだからだ。
 では、「遅さ」についてはどうだろうか。これこそが今もなお本に残されていて、かつ私が信頼を寄せる機能である。
 そもそも読書は時間のかかる行為で、めんどうくさい行為だ。一方、時間の流れが目まぐるしい現代社会にあっては、時間の流れを緩やかにすることができる行為だとも言える。また、本というメディアの歴史は長く、本屋に行けば、さまざまな時代や地域で書かれた本が同居している。「いま、ここで」への関心が著しく高くなっている時代において、本屋で「いまもむかしも、さまざまな場所で」に触れられる価値はいくら強調してもしすぎることはない。

『本屋、ひらく』p62-63 ※太字はnote筆者による

素晴らしい分析と価値づけだと思いました。
そしてそれが本というものへの信頼、そして本屋を営む理由に繋がっている。こんな風に信念を持って仕事をするのって素敵だなあと思います。


読んでいて意外だったのは、独立書店を個人で開業したこの本の筆者の方々に「出版業界や書店などで働いたことは全くない」という未経験者が多かったことです。(あえてそういう人を集めたのかしら?)
そりゃあ本に関わる経験は無いよりはあった方が良いらしく、未経験から本屋を開業した方々は皆さん大変ご苦労されたようですが、大変ではあるけれども何とかならないことはない、という証左にもなっているような。
でもほんとに大変そうなので、私はこれを読んで「ちょっとやそっとの覚悟では踏み入れられない世界だな……」とは思いました。

店主の皆さんの文章の中にも結構詳細な開業の段取りとか仕入れの方法などが書かれていますし、それらの文章の合間に「本屋を知る」という長めのコラム(?)が4本挟まっているのですが(これらの筆者はどうやらベテランの独立書店店主たち)そこにもかなりシビアな本屋の開業や経営にまつわるアレコレが書かれているので、指南書としても役立つものだと思います。
ただ、このコラムがあまりにシビアなので、その周りの書店店主の方々のある種キラキラした夢や信念の語られた文章とのギャップが激しく、「いいな~楽しそうだな~本屋ちょっとやってみたいな~」なんてホワワンとした状態になった頭にバシャ―――!と冷や水を浴びせられるような気持ちになれます。
うんうん、憧れだけじゃダメだよね、と冷静になれるので良かったです(笑)

本屋をやってみたい人だけではなく、本が好き、本屋さんが好き、という人には是非オススメしたい本です。

ちなみに、読むともれなくどの書店にも行ってみたい!という気持ちになるのですが、車で行けるような距離のお店は載っていなくて残念。
旅行に行ったときなどに寄れるところがあったら行ってみたいなあと思います。

それと、この本を読んで「地元の本屋を応援しなくては!」という気持ちが高まり、紙の本を買う時はAmazonではなく地元の小さな本屋さんを利用するようにしています。
皆さんもよければ、もし身近にそういった小さめの本屋さんがある場合は是非応援の意味を込めて利用してみてくださいね。



おしまい

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