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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

映画『東京リベンジャーズ』が普通に楽しめた話と、原作アリ+監督イズム捩じ込み作品が苦手という話

邦画、ホラー以外はめっきり観る回数が減ってる。最近はホラーさえも二の足を踏むようになってる。

理由は自分のなかでもかなり明確で、
「そもそもアニメをほとんど観ない」
ことにくわえて、
「原作アリのドラマの劇場版やアニメ・漫画実写化」
が増えた事。
それと、邦画の“ウケる題材”である
「お涙・余命・狭い世界・昭和レトロ・コミカル演出」
が全て好きではないこと。

このあたりは個人的な好き嫌いなので邦画disってわけじゃなく、単に
「だから邦画とはあまり縁がないよ」
というだけの話なんだけど。
ホラーも最近はネット怪談とか都市伝説みたいな題材のが多くなっててイマイチワンパターン。

まあでも「ワンパターンというのはスタイルが確立されてるんだろうな」という考え方も出来るので、邦画全体に関しても最近の日本のホラーに関しても、特色がそうなんだな(そして私には合わないけど、好きな人が大勢いるから盛り上がってるし支持されてるんだな)って思ってる。

※ここまで読んで、ネガティブな文だとか邦画disに見えてしまう人はここから先をフラットに読めないと思うので回れ右が吉です。

□邦画にみられる「イズム」が苦手

そもそも邦画を(友達に誘われてとかでなく)自発的に観なくなったのは『新解釈・三國志』とか『大怪獣のあとしまつ』を観た経験で受けた

「○○監督イズム、の強さすごいな」

がかなり大きい。
福田雄一監督、三木聡監督。それと最近では『貞子DX』の木村ひさし監督に継承されてる堤幸彦監督っぽさって、そもそも私は嫌いではない。
テレビドラマで週に一回ずつ味わって、それを連続モノとして何週間も通して観ていくうちに蓄積され癖になるようなおかしみは確かにある。
『ヨシヒコ』の仏パートや呪文とか、『TRICK』の大屋さんとか。

でもこの、週一ペースを長期間、でおかしみがじわじわ「お約束」になるような時間を要する演出を、映画一本に手数多めに盛り込まれると正直私はキツい。

普段連続ドラマを観る習慣のない私でも『勇者ヨシヒコ』シリーズも『スーパーサラリーマン佐江内氏』も、『時効警察』も、『TRICK』や『ATARU』も全て面白かったし好きだった。
だからこれらの作品の持ち味である監督のセンスが嫌いなわけでは決してないのだとは思う。
思うけど、ゼロから物語に触れる二時間前後の映画という媒体で、あまりにも監督“イズム”が凝縮されてると、その監督イズムに期待して観に行ったわけではない私にはさすがにキツいのだ。

無音+ぐだぐだ会話劇で誘い笑いを狙う福田監督イズムも。
怪獣の悪臭が××か○○○かとか、キノコがどうのみたいな小学生的下ネタを大真面目にやることをおかしみと捉えてる三木監督イズムも。
ホラー映画には場違いな変な一休さん的シンキングポーズの天才やクセ強美男子を主人公に据えてしまう木村監督イズムも。

その監督イズムが好きな人にはたまらない作品だったんだろうけど、残念ながら私には些か大盛りすぎた。
週に一回・一個だから給食の揚げパンのジャンクな甘ったるさが恋しくなるのであって、
「今日は食事の全てが揚げパンよ~これが揚げパンの良さよ甘いでしょ~」
と朝昼晩全て揚げパンにされたら、よほどの揚げパン大好き人間以外は
「やめろやしつこいわ!ヘビーローテで食うもんちゃうぞ!!たまにだからええねん!」
となると思う。本当にこれだった。

で、更にこの監督イズムの二時間大盛りを、漫画やアニメ原作アリの実写版でやられる事が一番苦手だ。
個人的な好みなのでこれらを好きな人への悪口ではないんだけど、『進撃の巨人』とか、最近だと『仮面ライダーBLACK SAN』がこれだった。
(原作の基本的なことを知ってるだけの私でもキツめに感じたけど、原作に愛着ある人はどうなのかな、案外別物として楽しめてるのかな、というのは気になるところ)

多くの人に支持されている原作の設定や持ち味を、アレンジの域を出るくらいに曲げてまで「監督イズム」を見せるのは、映画監督としては腕の見せ所!的なものなんだろうか。
(逆に『シン・ウルトラマン』からは、庵野秀明監督のウルトラマンへの愛や知識の深さをかなり感じた。故にちょっとオタク的なこだわりもありつつ、庵野監督イズムと、原作の魅力や世界観、私を含むウルトラマンファン達が観て嬉しい要素が同居してたように思う。というか庵野監督が「私物化する」より「聖域」として重んじるくらいにウルトラマン大好きなんだろうなって)

□映画『東京リベンジャーズ』を観た

で先日、友達と一緒にU-NEXTで『東京リベンジャーズ』の実写映画を観た。
私は「ヤンキー漫画なのにSFで、原作が漫画、今流行っている」というのを知ってる程度。
友達は「原作漫画とアニメをリアルタイムで全て追っている」というファン。

監督は英勉さんという方で、調べたら漫画やアニメ等で展開された作品の実写化を多く手掛けている方だ(私はちなみに『貞子3D』は観ている)。

漫画原作を手掛けまくりの監督、邦画、漫画の実写化、そしてヤンキー作品。私自発的には絶対に観ることが無かったであろうカテゴリの映画。
明らかな門外漢で右も左も分からない私が楽しめるか不安だったが……これが意外にも普通に面白くてサラッと観られてしまった。

※以下、映画の内容に触れるネタバレ有の感想となっております。閲覧注意!

まず、何と言ってもコミカル表現の使いどころが抑え目なのが非常に意外であり好印象。
漫画原作、しかも青春系少年漫画ともなればギャグの手数も多くなり、不必要な所で笑わせるためだけのシーンが盛り込まれるだろうと勝手に想像していた。
が、記憶してる限りだとそういう
「くだらない上に観客がしらけて引くようなスベりシーン」
は思い当たらない。

何故あの弟と握手をすると時空を超えられるのか?などのコミカルなタイムリープへの説明は一切ないが、それは謎解きにも含まれない為、その謎がそのままでも、主人公達の無我夢中さに引き込まれ、問題なくストーリーを楽しむ事はできる。
バイオレンスシーンでのスローモーションや大写しも、コミカルなんだけど
“これぞヤンキー作品のケンカバトルの見せ所”
という当然の演出として受け入れられた。

まとめると、コミカルの度合いがかなり丁度良かったというか、コミカル描写にストーリーを邪魔するようなうるささ、説明不足が災いする点、過剰供給が無かったのだ。

あとは、全てを語らずともキャラクターを把握しやすい個性の出し方。
個人的に邦画の嫌いなお涙要素の一つに「悲しい過去を隠している(事を明かすシーンのあれこれ込みでのキャラクター構築)」がある。『CUBE』の日本リメイクが好きになれない要素の一つがまさにこれ。

劇中で、
「マイキーが主人公を気に入る理由」
はいくらか明かされているが、故人をからめたその話題のシーンも全く湿っぽくない。
情けないヤンキーだった過去と、うだつの上がらない現在を生きる主人公・タケミチも、悲壮感や被害者意識のようなブルーな描き方は無く、淡々と馬鹿にされ、悪態をつき、汚い部屋で生活するといった“ダメさ”の描写にとどまっている。
「悲しい過去があります」を売り物にしていない演出とキャラクター造形には好感が持てた。

そして、いくら腕っぷしが強かろうと、小柄で飄々としたマイキーが何故あれほどまでの荒くれ者達を束ねるに至ったのか?は描かれていないし、マイキーがドラケンを特別に信頼する理由も描かれない。
しかし、これらを流れの中で自然に納得させてくれる感じがした。負けそうな仲間を止めるでもなくギリギリまで戦わせ、最後は自分が仲間のために戦うマイキーの美学は暴力に明け暮れる者達に圧倒的なカリスマ性を放っていると思える。
仲間の抗争に巻き込まれた家族にも頭を下げ、総長のマイキーをも諭すドラケンと、彼の言葉を素直に受け入れるマイキー。そして、一命を取り止めたドラケンに、いつも飄々としている態度を崩し涙するマイキー。

私が、監督の“イズム”が出過ぎてない作品かもな~と思ったのもこのあたり。
結束と喧嘩で男の世界を生きようとする泥臭いヤンキーの抗争や暴力、社会のアウトローを、熱い世界だ、志のある男達だと美化一辺倒で描かず、一般人から見たら如何に愚かで迷惑か、半端に成り上がってもアウトロー社会で人の言いなりになるしかない者もいるのだ、という社会的視点からヤンキー達の愚行やマイナス面を茶化さず、そしてエログロパートなどではない深刻なシーンとして表現している。

これは、原作を知らない私だから言えてしまうのかも知れないけど、結構ニュートラルな描き方に思えた。
乱暴な言葉を使えば、
「あっこれ監督の言いたいことや思いついたギャグやオリキャラを、人様のキャラと世界観にねじ込んだだけのシーンじゃねーか!透けて見えるわ」
というのが無かった。

……なんて、ここまで偉そうに感想を書いてきたけど、私は原作も、他の英監督作品『貞子3D』くらいしか知らない『東京リベンジャーズ』素人です。
なので、原作ファンからしたら
「監督のイズムによるねじ曲げだ!」
ってとこがあったり、監督に詳しい方からしたら
「この作品も英監督作品の典型!」
ってとこがあるのかもしれない、という事は重々承知している。

なので、英監督作品のオススメや、改変ポイントがあれば教えて下さい(笑)。私は取り敢えず『ハンサムスーツ』を観てみようと思います。

『東京リベンジャーズ』には、
「コミカル寄り世界観の邦画を、しかも原作アリ邦画を観て、サムい気分にならなかったのは珍しいな」
という久々の個人的な嬉しさがあった。

予備知識無しならではの特権やプラス補整、と言われれば、そうなのかも知れないけどね。

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