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映画「The Theory of Everything 博士と彼女のセオリー」永遠の愛はあるのか

先日、この映画を観た。

2014年にイギリスで製作された伝記映画で、理論物理学者のスティーヴン・ホーキング博士と彼の元妻であるジェーン・ホーキング(Jane Wilde Hawking)の関係を描き出している。監督はジェームズ・マーシュ、主演はエディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズが務める。第87回アカデミー賞では5部門にノミネートされ、エディ・レッドメインが主演男優賞を受賞した。  ーーWikipediaより抜粋

ロマンチックな映画を観たい」というリクエスト出し、いくつかの候補の中から、パートナーとお互いの観たい度が一致したのがこの映画だった。

私はスティーヴン・ホーキング博士のことを大して知らなかった。有名な博士であること、近年お亡くなりになったこともあり、名前を割と聞くので「ファンが多いのだな」と思っていた。

サイエンス映画?

映画を観始める前に、彼は言った。「サイエンスの事が沢山出て来るだろうから、君には少し難しいと思うけど大丈夫?」私は確かになぁ、分かるかな…と不安であった。

「宇宙好き」という我々の共通の趣味をとっても、

基礎知識を踏まえた上で宇宙の神秘を「かっこいい」という彼と、ロケットや人工衛星などのシルエットが好きで、打ち上げに興奮する「なんかかっこいい」という私、の違い。

実父は昔、宇宙航空に携わっていたので、ロケット打ち上げを家族でテレビの前に座って見守ったものでした。打ち上げ延期が決まると、父が帰って来ないこともあって、それは子どもの私にとっても一大事なイベントだったのです。懐かしい。SpaceXの2020年はすごかったですよね。父とラインしながら、中継を観ました。

そういえば、昔、映画「インターステラー」が公開された当時、父に一緒に観に行くか誘われた事があった。テレビでよく宣伝が流れていて、ちょっと私には「怖い」ジャンルの映画だと思い、お断りした。彼は帰宅後、大興奮でどれだけ素晴らしい映画だったのか、語っていたのを覚えている。

近年、パートナーと話していて「あの名作を観ていないなんて!」という事で鑑賞。その際は「君の科学的知識からすると絶対理解不能だと思うから」と、日本語字幕を出してもらった。日本語訳があろうとも、とても難しかった事を覚えている。ちなみに彼は、観終わってから質問責めをする私に「お父さんがかわいそう…」と言っていた。(おい)

さて、そんな記憶が蘇ったりしたものの、ホーキング博士の映画はあまりサイエンス面を深く掘り下げていないこともあって、気軽な感覚で鑑賞する事が出来た。

鑑賞後、映画について調べていると、博士の功績を全くといっていいほど取り上げていない、伝記としては彼が社会にどれだけインパクトを与えたか、という事が分かり辛い、などと言った指摘も目にした。

ロマンティック映画か?

博士の本を読み、彼に興味を持っていた映画脚本家が、ホーキング博士の30年寄り添った元妻ジェーンの回顧録から着想を得て、書き進めていった映画だという。

その為「博士の映画」というより、ジェーンと博士の夫婦間のやり取りがベースとしてあって、プラスで彼ら個人の日常や心理が描かれているイメージである。

そんな事もあって、科学ファンにはちょっと物足りないかもしれない。

だが、ラブストーリー映画としても何ともしっくり来ない。冒頭に置いたあらすじからお気付きの方も多いかもしれないが、予告編やポスターから見て取れる「ザ☆王道ラブストーリー」とは言い難い。むしろ、とても辛い。ビター過ぎる。

ネタバレになり兼ねるのでここでは触れないが、「永遠の愛とは存在するのか?」と真剣に考えたりした。観終わった後、パートナーと顔を見合わせ「ふう!」と言い合った。「君はジェーンの味方、だろう?」と彼は言って来たので「まあね」と微笑んだものだ。私はジェーンの気持ちが痛い程分かる。どうも女性として生きていて、異性のパートナーがいる事からか、彼女に感情移入しがちであった。かくして博士の気持ちが分からない訳ではない。

彼らは己の欲望にとても正直で、素晴らしいカップルだと思う。

人間の欲望が前面に出ている事もあり、主役の二人がご健在な頃に制作、公開された映画というと、とてもチャレンジングな作品だと思う。

伝記としてはFacebookのMark Zuckerbergなどを取り上げた作品「The Social Network」に似てる。

この作品も大好きだ。

そういえば、ホーキング映画は「博士が神の存在についてどう言及しているか」に重きを置き過ぎている、という指摘もあるらしい。私としては、そこの描写はジェーンとの関係性を描くためにも必須であったように思う。

難病と闘う

ホーキング博士はALSという難病とともに暮らしていた。日本語だと、筋萎縮性側索硬化症というようだ。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうけます。その結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていきます。その一方で、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。 ーー以下サイトより抜粋

私は昔、三浦春馬さん主演のALSを扱った連続ドラマ「僕のいた時間」を毎週見ていた。映画でも時系列で症状が進行する様子が描かれていて、病気の理解のためにという面では、とても分かりやすい作品だと思う。

博士は独立心が強く、自分の障害のために助けを受け入れたり、譲歩したりすることを嫌っていたという。映画内でもそんな描写があった。 また、職場では人気で機知に富んでいたが、彼の病気とその横暴さのために、一部の人からは距離を置かれてしまったという事実もあるようだ。

更に、そのセレブリティ的人気の故、科学者として研究が不平等に評価されていると批判する声もあったのだとか。

***

博士は、晩年 locked-in syndrome(閉じ込め症候群)を発症する恐れがあったという。私はてっきり、ALSと同じ病気だと勘違いしていた。

この病気を扱った映画、「潜水服は蝶の夢を見る」も、とてもおすすめである。

こちらを探していた時に、たまたま見つけた下のサイト。

すべての質問に回答できた患者のうち、「幸せだ」と答えたのは72%、「不幸せだ」は28%、「自殺したい」は4%だった。
不幸せだと答えた人の多くは閉じ込め症候群になってから1年未満であり、とても不安だという回答や、体を動かせないつらさ、社会生活やレクリエーションに参加できない悔しさを訴える人が多かった。
ただし、回答できたのは168人中91人であり、その中でもすべての質問に回答できたのはわずか65人だった。研究者らは低い回答率により結果がゆがめられている可能性があることを認めている。なお、回答した91人のうち3分の2が自宅住まいでパートナーがおり、70%は信仰を持っていた。--上記サイトより抜粋

ちょっと趣旨は異なるが、「幸せ」について描かれたこの映画も好きだった。原題は「Hector and the Search for Happiness」です。

「触れられる」ということの偉大さ

ほんのさっきのこと。他所で嫌な事が起こり、一人で怒りを鎮めようと歯磨きをしていた。すると私の何かを感じ取ったパートナーがやって来て「どうした?」と声を掛けてくれた。

あまり良い事では無かったので共有するつもりが無かったのだが、彼にナチュラルに肩もみをされ

気付いたら全部喋っていた。一気に。

散髪客とかマッサージ客でもいるよね、なんかの弾みで急に一気に心を開いて喋り出す人」と笑われた。

いやぁ、その通りである。こわい。人の力。スパイ失格である。

でも、こうした話は、マッサージセラピストとして当地で働く知人も話していた気がする。彼女にこの件を話すと、こんな返信をしてくれた。

やっぱりね、近距離で身体をずっと触られて(誤解を招く書き方だな…)それが心地良かったらつい色々喋っちゃいますわね大概の人なら。逆に触っている方も相手との空間の居心地が良かったらつい余計なことも喋りそうになりますから、触るっていう行為の持つ力は偉大ですよ。

はは~。勉強になる。

この映画を観ていて、「抱きしめられない」ことの辛さを感じた。愛する人を抱きしめたくても抱きしめられない無念さ。自由に動けないという身体的な辛さ、は勿論だけれど「好きだよ」と言ったり、名前を呼んだり、抱きしめたり、そういう事を奪われるって大きいな、と思いました。

そんな所から、ハグが多い欧米の人々のフレンドリーさへの相関性、とか

動物セラピー、セックスレス、美容師は好きになられがち、(特にコロナ禍の)遠距離恋愛まで色々と思いを巡らせてしまった。

博士の非・科学ファンへの著書もある

調べていくうちに知ったが、彼の著書は研究報告だけでなく、サイエンスライターとして一般人向けもあるのだとか。

『ホーキング、宇宙を語る : ビッグバンからブラックホールまで』原題はA Brief History of Time

という著書、ちょっと読んでみたい気もするけれど、一般向けといい、難しそう…読むなら映画の原作として知られるジェーンの回顧録を読むべきかな…

彼、欧米の掲示板サイトRedditに「質問ある?何でも聞いて」とオープンにしたり、なんだかお茶目な一面もあったようだ。一気に親近感。

私は彼の気候変動見解が好きだ。(いきなり)

Climate change is one of the great dangers we face, and it's one we can prevent if we act now. --Wikipediaより抜粋

「気候変動は私たちが直面している大きな危険の一つであり、今行動すれば防げるものだ」

役者さんらの演技

このオスカー受賞スピーチは何故か観た事あった、ただのミーハー。でも、今観てもなんてピュアな人なんだろう…って思わされる。

エディも良かったけど、ジェーン役のFelicity Jonesも好きだった。

ネタバレになるかも

最後にネタバレになるかもしれない、映画に描かれているようで、描かれていなかった彼らのその後について。

Hawking resumed closer relationships with Jane, his children, and his grandchildren.

博士はジェーンや、子ども達、また孫らとの親密な関係を取り戻した。(筆者意訳)とある。

映画を観終わった後、下調べならぬ後調べをしていて、この事実を知った我々は「やっぱり彼にとってジェーンは特別な存在だったのかもね」「ジェーンにとってもね」「うん」と、しんみりしたりした。

バレンタインにはおススメしません!


参考;

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%9A%E5%A3%AB%E3%81%A8%E5%BD%BC%E5%A5%B3%E3%81%AE%E3%82%BB%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%BC

画像拝借;

http://cindygoesbeyond.com/2015/03/12/journey-71-the-theory-of-everything/

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