男子中学生のAV体験|ネット時代の性教育と人権
1-2.好みは「女教師もの」
ヒロトが地元の公立中学の2年生に上がった頃、家が引越しをした。新しい家の近所に、無人型のレンタルビデオ店があった。会員カードを読み取り機に通して、金を払えば借りられる仕組みである。1970年代後半、「人目を忍んで買える」という理由から、エロ本を扱う自動販売機が人気を博したことがあった。無人型ビデオ店はその進化形といえる。
ヒロトも興味津々、当時入っていたサッカー部の仲間と連れ立って見学に行った。店内には、AVがずらりと並んでいる。
「その頃には、友達同士で性的な話が出来るようになってきて。皆で共有したことによって、性的なものを見るのは別にいいことなのだと思えるようになりました。小学生でエロ本持ってると、周りの男子に『お前ヘンタイだな』って言われるけど、中学生になってエロ本持ってると『貸してくれ』と言われる。男の子のなかでも元々恥ずかしいものだけど、あるとき突然吹っ切れるんですよね。男として当然なんだ、ぐらいの勢いで」
何とかしてAVを借りたいと切望したヒロトだが、会員になるには身分証明書を提示しなければならない。18歳未満であることがバレてしまう。困り果てて店内を見回したとき、読み取り機の裏に大量に積まれた会員カードの山が目に入った。試しに使ってみると、既に借りられる状態になっているではないか。店側が意図的に置いておいたのかはわからない。
「動く映像を初めて見たときは、怖さと興奮が入り混じった感じ。どっちかというと怖い気持ちの方が強かったです。何でこういう行為をしているのか、何でこういうものが存在しているのかという疑問、知らないことへの恐怖ですね。でもその後、保健体育の授業で性交の意味を知ったことで、後ろめたさがなくなりました。紙媒体ではデフォルメされていた性交時の姿勢とか、女性の体の線や部位が映像で確認できたので、現実味がありました。本物ってこうなんだ、と」
両親は共働きで、朝早く出勤する。それまで遅刻ギリギリの8時まで寝ていたヒロトの、生活様式が変わった。
「親が家を出た直後の6時半か7時には起きるようになりました。全然苦痛じゃない。体が楽しみで起きちゃう。朝食を急いで食べて、AVを見ていました。食べずに学校へ行くこともありました。ご飯よりビデオの方が元気になれる、みたいな」
AVは1980年に登場し、瞬く間に男性の熱い支持を得た。未成年がAVを借りるのは禁じられているはずだが、日本性教育協会の調べ(2005)によると、中学生男子の約2割にはAV視聴経験がある。この数値は、高校生になると約6割に跳ね上がる。ヒロトのように拾ったり、兄が持っているものをこっそり拝借したりするようだ。
問題はいかに家族の目を盗んで観賞するかだが、中学生男子の約3割、高校生男子の約5割は、自分専用のビデオデッキやDVDを所有している。高校生の場合、専用のビデオデッキを持っていない者のAV視聴経験は5割にとどまるのに比べ、持っている者の視聴経験は7割に達する。
ヒロトが高校に入ると、AV観賞はもはや日常になった。成人向けの雑誌やコミックも、自ら購入した。近所に70歳過ぎの女性が経営する本屋があり、「年齢はバレないだろう」と思い買っていたという。
「コミックは女教師ものが好きでしたね。当時、担任だった女性の先生が綺麗で優しくて、憧れていました。でも先生と性交は出来ないので、コミックで先生を思いながら1人でする、みたいな。女教師ものは定番のテーマですよ、実際には出来ないだけに。綺麗な先生って男子みんなが憧れるので、先生を自分のものにすると想像することで、皆に勝てた気になれましたね」
そのうち、性的メディアを見るだけでは飽き足らず、実際に女性と触れ合いたいという欲求が強くなってきた。ヒロトは友達と街なかへ繰り出し、女の子に声を掛け始めた。ここから彼の性豪伝説が始まるのである。後ほどじっくり聞くことにしよう。
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