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車椅子インフルエンサーとイオンシネマ② ~アタリマエとは~

①から続きます。

私には障害を持つ息子がいます。
たしかに、いまの社会はインクルーシブにはまだまだ遠く
障害のある人たちは理不尽な扱いを受けることもあったり
あきらめなければいけないことも、とても多い。
息子も 私自身も
悲しい思い、悔しい思い たくさん経験しました。

ただ、
だからこそ「障害のあること」を
すべての免罪符にするべきではない。
障害があっても
自分のできる範囲で努力を続けていくこと、
社会になじんでいくための努力をすることは
ぜったいに必要。
まずは、じぶんがやるべきことをきちんと精一杯やる。
それが、
理不尽なことに対して正々堂々と意見を言ったり
立ち向かっていくための
自分自身の大きな心の支えになる、と
私は思っています。

車椅子インフルエンサーのかたは
まずは付き添ってくださる介助者を手配なさったらよかったのでは
と思います。
障害者割引は、「障害があってかわいそう」だから
割引価格になっているわけではありません。
介助者1人お願いしても、鑑賞料金は1人分の料金で利用できるようにとの
とてもよく考えられた配慮です。
介助者おひとりいらしたら、
劇場側のスタッフの手を借りるにしても1名で済む。
それだけでも劇場側の負担は減ります。
事前連絡もしておけば人員配置だって、し易い。

そして、
Xを拝見すると劇場側のスタッフに
お写真まで撮ってもらっていらっしゃるのですが、
これはマナーとしてNGな行為だと思います。
一般的に上映中の撮影禁止というのはほとんどのかたが知っていて
守られているはず。
上映中でなくとも、お席で写真を撮っている人はおそらく少ない。
写真の様子を見ると、他のお客様は写っていないので
おそらく上映後 他のお客様の退出が終わってからなのでは
と推測されるのですが
(上映前だとしたらさらに最悪)

その短い幕間の時間は、
忘れ物・落し物はないか
座席に汚れはないか
急いでチェックを行い、
床に散らばったポップコーンの残骸を掃除して
次の観客を迎え入れる準備をする、
スタッフにとって、とても忙しく貴重な時間。
そこでご自身の介助のみならず、写真撮影までお願いするというのは
そういった相手の状況や都合を考えていない(思いが至っていない)
行動に思えます。
他の人が守っているマナーを守らず、
特別扱いをアタリマエと思うことは
決してインクルーシブでも障害者の尊厳を護ることでもないと
私は思います。

それから、
いちばん気になっているのは
数回にわたって快く介助を引き受けてくださったスタッフのかたたちに
「ありがとう」
という、心からの感謝のことばを伝えていらしたのかどうか。

「障害者は、いちいち感謝しなければいけないのか」
といったニュース記事のご意見も目にしました。
否。
「障害者だから」感謝するんじゃない。
障害があってもなくても
だれかになにかをしてもらったら「ありがとう」というのはアタリマエ。
障害があるから「やってもらって当然。アタリマエ」じゃないんです。

障害があっても、なくても
おなじ「人」として
アタリマエにやるべきこと、やってはいけないことはある。
「差別されたくない!おなじ人間!」
というなら
必要以上に「障害があること」をアドバンテージにしない。

健常に生まれたって人生思い通りにいかないことなんて
山のようにある。
みんないろんな思いをかかえながら、生きている。
おなじです。

手伝ってくれたスタッフさん。
もしかしたら、
介助や写真撮影で時間がかかったせいで
次の開場時間が遅れてクレームになり
上司に厳しく𠮟られたかもしれない。
がんばって手伝ったけど、実はその人自身も体調不良だったかもしれない。
車椅子が重くて腰を痛めてしまったかもしれない。
定時で上がってどうしても行かなければならない大切な用事があったかも。

そんな想像力も少しははたらかせてみたら
もっとちがうものが見えたのでは…

してくれたことを「アタリマエ」ではなく、
「あなたのおかげでベストポジションで
観たかった映画を観ることができて、とても幸せ。
ありがとうございました」
と笑顔で毎回伝えていたら、
スタッフのかたたちとも心のキャッチボールができて
きっとおたがいに温かいきもちになれたはず。
むしろ「なんとか次からもお手伝いしてあげる方法ないかな」と
おたがいが無理なく
それこそ気持ちよくいられるような
対応検討に進んでいく可能性だってあったのでは。

私は、26年 障害をもった息子と
二人三脚で生きてきました。
障害をもった当人のたいへんさやつらさや
悲しさは到底わからない。
私のつらさなんて、
もしかしたら息子のためではなく
自分可愛さだけのものだったのかもしれない。
偉そうに人様の行動に意見を述べているけれど
私自身もきっと、
まわりからみたら、「え!」というような
自分本位な行動もおそらくたくさんしてきた。
そんなダメダメな母なんですけど

息子は
どんな理不尽なことがあっても
「生きるって楽しいね。しあわせだね。」と
いつも笑顔で生きている。
たくさんの「ありがとう」を
周りの人たちに伝えながら。

それを見て
強欲で不平不満ばかりの私は
日々反省することばかり。

「アタリマエ」じゃないことのたいせつさも
「アタリマエ」とおもわないことのたいせつさも
息子に教えられています。

劇場側も 車椅子インフルエンサーのかたも
それぞれにそれぞれの思いがある。
おたがいに相手のきもちや立場をおもいやる。
それが「アタリマエ」になるといいなー、と
自省もこめて願っています。

「合理的配慮」が、
渋々やるマニュアル(義務)じゃなく、
心からのおもいやり、「アタリマエ」になりますように。





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#合理的配慮 #障害 #インクルーシブ #ホスピタリティ #マナー




















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