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クッツェー最新作がくる

J・M・クッツェーの最新作『ポーランドの人』(くぼたのぞみ訳)が近刊リストに入りました。きのうに続いて白水社なのですが(別にPR担当とかじゃないのですが)。5月末とのこと。(クッツェーファンとしては『イエスの死』邦訳も待っております鴻巣さま…)
アンドレイ・プラトーノフ『幸福なモスクワ』(池田嘉郎訳)も同日刊行予定だそう。シリーズ〈ロシア語文学のミノタウロスたち〉の第2回配本です。「20世紀を中心に、〈ロシア文学〉の観念を攪乱するような、ロシア語で書かれた異形の作品を紹介するシリーズ」とされていて、望月哲男氏の刊行の言葉がアツいです。

このシリーズに含まれるのは、さほど遠くない過去のロシア語作家たちがそれぞれの冒険と思索をもとに構築した、異形な惑星の地図にも似た、刺激的な作品群だ。
人はいつか静かに老いるだろうが、物語は常に若く、答えのない問いを発し続ける。

〈ロシア語文学のミノタウロスたち〉刊行に寄せて

プラトーノフといえば昨年、『チェヴェングール』(工藤順・石井優貴訳)刊行や『プラトーノフ作品集』(原卓也訳)重版が相次ぎました。チェヴェングールの訳者の方が<プラトーノフ“復活”計画、まだまだ続きます>とツイートされていて、これも楽しみです。

ロシア文学ではさいきんウラジミール・ソローキンがホットですよね。『愛』(亀山郁夫訳)、『ロマン』(望月哲男訳)が国書刊行会創業50年企画で新装復刊し、河出書房新社からは『吹雪』刊行と『親衛隊士の日』(いずれも松下隆志訳)文庫化も。お祭り状態です。
ロシアによるウクライナ侵攻でウクライナ文学が注目されたのと同様、ロシアがどのような想像力を立ち上げてきたのかもまた関心を引いていますよね。ソルジェニーツィンの復刊や新訳も待ちたいところ……。

クッツェーは南アフリカ出身で、ベケットを研究し創作に入ったので大きなくくりでは英文学(ベケット自身はアイルランド/フランスだけれど)の系譜を継いでいる面があるように思いますが、ネットで調べているとポーランド系のルーツもあるようですね。新刊についての情報は全く調べていないので知らないけれども、東欧からロシアにかかる地域がどのような文学をつくってきたのか、いまこそ読みたいです。
ちなみにクッツェー関連では田尻芳樹『J・M・クッツェー 世界と「私」の偶然性へ』が刊行されたところです。振り返ってみると、クッツェー本の刊行はくぼたのぞみさんの取り組みを中心に、静かに、しかし着実に続いてきている印象があります。ありがたや。

あすから新年度。まずは岩波の重版・復刊情報に注目です。

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