見出し画像

2年

先日、約2年ぶりにバンドでライブをした。
この状況下での音楽活動を渋っていたのは主にわたしで、そうこうしているうちに2年が経ってしまったのだ。今もライブをすることに不安や恐れがないわけではないが、旧知の仲であるバンドから誘いを受けたツーマンライブイベントであること、また先んじて3回目のワクチン接種を終えていたこともあり、ライブへと踏み切った。

フロアに集まったお客さんの顔を見ながら、これまで当たり前のように行なっていたライブのことに想いを馳せた。ライブに行く、ということは、すなわち演者の面々に「会いに行く」ということでもある。当たり前のように会いに来てくれた人がいて、当たり前のように音楽を聴いてもらって、数十分、数時間という時間を共有した。そんな”以前は当たり前だったけれど、今は当たり前ではない日々”がふつふつと思い出される。
だからライブを行なったその日、わたしはフロアに見知った顔を見つけては、心の底から感謝を覚えた。

もちろん、ライブに来てくれた人たちだけを特別に思っているわけではない。実際、わたし自身プライベートではほとんどライブハウスに足を運んでいないし、それぞれ事情があってライブにいけない人も少なくないはずだ。それに、人の集まる場所に行かないことは立派な自衛行為だとも思っている。
だからこそ、ライブハウスで多くの人に会えたことの喜びと、そこで会えなかった人たちへの寂しさが、いっそう際立った。

わたしは、社交的なタイプではない。誰とでも仲良くできるようなコミュニケーション能力はないし、けっこう気難しい方だとも思う。けれど、音楽を通して出会った人たちの中には、大切な人もたくさんいる。そんな彼らと、記憶に残るような楽しい時間を過ごしたことも数えきれないほどある。音楽の場は、自分が思っている以上に大切な場所だったのだなと、改めて気づかされた。

2年という月日が、かつての「当たり前」だった日々のありがたさを痛感させるのは非常に皮肉なことだが、また多くの方々と再会できる日を楽しみに、なんとかこの世の中を生き抜こうと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?