見出し画像

【読書日記㊻傲慢と善良/辻村深月】婚活における「ピンとくる」の正体とは?

こんにちは。最近は、面白い本が多すぎて。
図書館の返却期限が迫ってくるので、読むのに必死です。

傲慢と善良/朝日新聞出版/辻村深月

ある日、西澤架(にしざわかける)の同棲していた婚約者、坂庭真実(さかにわまみ)が消えた。心あたりは、二か月前の夜彼女の部屋にストーカーが現れたこと。彼女はストーカーに攫われたのか?手掛かりを求め、架は自分と出会う前の、群馬にいた真実の過去を探っていく。

物語は、架視点の第一部と真実視点の第二部に分かれています。と言っても、架が真実と過去に関わりがあった人達と会って、真実の人物像を探る第一部が3分の2を占めています。そして、第二部の真実視点で、種明かしをしていく、という作りです。

テーマは婚活。架と真実も婚活で出会いました。最近は街コンやマッチングアプリも増え、珍しくなくなっていますね。ちなみに、私も夫とマッチングアプリで出会っているので、親近感が湧きまくりです。こういう身近で共感できるテーマを選んでくるあたり、さすが辻村先生!って感じ。

この本で描かれている「傲慢」とは、恋愛において相手を見下したり、傷つくことを恐れて自分から動かないこと。また、「善良」は、親の意見を鵜呑みにしたり、損をするほどのバカ正直さを指しています。多くの人は普段、傲慢にならないよう注意しているはずですが、知らず知らずのうちに出てきてしまうのが、傲慢さ。特に恋愛における「ピンとこない」という感覚は、実は「この人では私に釣り合わない」と思う感覚です。
例えば付き合うことを意識しない関係から、徐々に中を深め恋人関係になる場合、恋人になるかというフィルターを通していないので、この感覚は起きづらいですね。この「ピンとくる」というのは、恋人・結婚相手を探そうと思った時特有のものかもしれません。

また、男性が結婚を迫る女性に対して「怖い」と思うのも、傲慢さと表現されています。二人のことなのに、自分のビジョンがないが故に、将来設計している方を見下す感覚。私も結婚を意識して付き合うタイプだったので、傲慢と言い切ってくれたのは、ちょっとスッキリしました。

また、真実は本当に善良。第一部では、真実の善良さに呆れる部分もあるのですが、第二章を読むと、本当に、根っからの善良なんだなと納得させられます。善良な真実には彼女なりの考えも、意見もある。自分がないわけではない。善良さがバカにされがちだが、本当に心の底から真っ直ぐな考えがあるんだなぁ、と多様性を感じました。

少しネタバレになるのですが・・・
真実が入会していた結婚相談所の代表者が、婚活が上手くいく人の違いを尋ねられた時、こう言います。

「うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人。」

「傲慢と善良」辻村深月
第一部P105

これは多いに同感です!私も以前、本で結婚したいのなら、どんな人が良いのか具体的に考えなさい。リストを作りなさい、という婚活本を読んだことがあります。ビビっと来る人がいないのは、出会う相手が悪いのではなく、それを察知する自分のアンテナが弱いのだと。そうしてリスト化したおかげで夫に出会えたような気がします。

これも辻村深月先生あるあるですが、親子特に娘と母親の嫌~な関係性がリアルに映し出されている。お互い、娘を思って、親を思っているんだけど、そのどこかに、自分の傲慢さが隠れている。辻村深月先生の作品では、よくこの母娘関係がよく描かれています。

ハラハラさせられますが、最後には二人とも一肌剥けます。
「傲慢と善良」何だかこのタイトル、どきっとしますよね。婚活の経験がある人なら、より共感できると思います。ぜひ読んでみてください。

この記事が参加している募集

読書感想文

いただいたサポートは、本の購入費に充てようと思います! よろしければおすすめの本を教えてください♪