見出し画像

事業の需要を確かめるための、たった一つの質問

新規事業を立ち上げる際に、必要なユーザーインタビュー


新規事業を立ち上げるときは、想定顧客となるユーザーにインタビューを行い、需要を確かめることが必要です。
よく、インタビューを飛ばしてプロダクトを作ってしまうケースを見かけますが

プロダクトを作るコスト < インタビューコスト

なので、ユーザーインタビューでしっかり需要を確かめた方が、安上りなのです。
ということで、事業立ち上げに伴い、需要があるかを確かめるための質問について解説します。

「このサービス使いたいですか?」は意味がない?


需要を確かめるための質問として、最も聞かれるのは「こういうサービスがあったら、使ってみたいですか?」という質問です。
シンプルで効果的なように思われる質問ですが、実はこういった聞き方をするのはおすすめしません

というのが「このサービス使いたいですか?」には認知バイアスがかかっているからです。認知バイアスとは、情報を処理する際に無意識に行われる思考の歪みや偏りです。

こういう聞き方をすると、かなりの確率で実際は使わないのに「使いたい」という意向が多くなります。
このサービスを使いたいですか?という、はい、か、いいえの2択のクローズドクエスチョンにすることで、インタビュー対象者(インタビュイー)は、そのどちらかで回答することになります。

つまり、使いたい寄りの使いたくない、使いたくない寄りの使いたいなどのグラデーションが、2択のどちらかに集約されてしまうのです。

さらに、質問をされている時点で、その事業について意識を集中して考えることになります。その上で使いたいという回答だったとしても、実際の事業を展開した際には、事業を知らないユーザーの認知を獲得するところからはじめなければなりません。
インタビューしている時点で認知が発生しているため、やはり「使いたい」の意向が強めに出てしまうことになります。

そして、人間の記憶というのは改ざんされます。例えば「あなたはよく豆腐を食べますか?」と聞かれたとしましょう。
豆腐というのは嫌いな人がいない定番のおかずなので、「よく食べます」という回答が高めに出ることが予想されるでしょう。
しかし、本当に豆腐をよく食べているでしょうか。過去1週間の食卓を振り返って豆腐を何回食べたでしょうか。
実は直近では豆腐をそれほど食べていないのに、子どもの頃から慣れ親しんだ豆腐に反応してしまい「よく食べる」と答えるケースは往々にしてあるのです。
つまり、実際の記憶よりも認知の強い事象に引っ張られるのです。
例えば「キャビアと蟹が使われた豪華なラーメンを食べたいですか?」と聞かれたら、多くの人は「おいしそう」と思って「食べたい」と答えるでしょう。
しかし、実際発売してみたらそれほど売れないというケースはよくあるのです。それは、キャビアと蟹のラーメンというイメージに引っ張られて「食べたい」と反射的に答えるものの、実生活では食べるシチュエーションがなかった、というものです。
つまり、イメージした際に沸いた感情に回答が引っ張られるのですが、実生活で行動に移すかは別問題なのです。

ということで、事業の需要を確かめる際に「このサービス使いたいですか?」と聞くのは以下の点において悪手です。

  • 2択のクローズドクエスチョンになるので、需要のグラデーションが分からない

  • インタビューしている時点で事業認知が発生しているため、「使いたい」の意向が強めに出る

  • 記憶よりも認知の強い事が優先されるので、現実に即さない回答になりやすい

  • 感情に引っ張られて意向が強めに出ても、実生活で行動に移すとは限らない

本当に需要を確かめるための質問とは何か

それでは、事業の需要を確かめるための質問とは何でしょうか。
それは「使いたいか?」の意向を聞くのではなく「使う蓋然性が高いか?」という事実を聞くのです。

例えばさきほどのキャビアと蟹が使われたラーメンを、宅配商品として開発を検討しているとします。
その場合の正しい質問は、対象者(インタビュイー)の過去1~2か月に渡る食生活の実態を聞くことです。例えば以下のような質問です。

  • 過去2か月以内に家で食事をした頻度

  • 食事の内容(どこで購入してどのくらい時間をかけるか)

  • 平日/週末の食事には差異があるか

こういった質問をして、対象者(インタビュイー)が週末はある程度費用をかけて家での食事を楽しんでいる、という事実が判明すれば、その食卓に「キャビアと蟹が使われたラーメン」が選択肢として昇る蓋然性が高い、ということになります。

需要を確かめるための質問は、定量的に聞くことが大切


この際、各質問はできるだけ定量的な結果が得られるように質問をすることが重要です。例えば、

  • 食事の内容(どこで購入してどのくらい時間をかけるか)

を聞くのであれば

  • 食事の内容
    ┗週末に豪華な食事を囲むときは、〇〇〇〇円程度食材の購入費用をかけるか?
    ┗食材の購入は、どこで何十分程度の時間をかけて行うか?
    ┗お取り寄せをした場合の予算は、1回につきいくらか?

といったように、かけた時間、費用、回数など、できるだけ定量的な回答が得られるように考慮します。これはさきほどの「使いたい」の意向のグラデーションを確かめるためです。
時間、費用、回数が多ければ多いほど、需要が高いということになるからです。

また、これらの定量的な回答は、対象顧客への解像度が上がるため、そのあとのマーケティング活動にも役立ちます。平均費用が分かれば、商品・サービスの費用の決定にも役立ちますし、購入頻度が高いと分かれば、定期宅配を検討することもできます。

結論:たった一つの質問はない。


ということで、タイトルが釣りっぽくて恐縮ですが、需要を確かめるためのたった一つの質問はないのです。

需要を確かめるためには「サービスを使う蓋然性が高いか?」を確かめるために、実際に対象者(インタビュイー)が取った行動を定量的に聞く、ということが重要になります。

ここで使う蓋然性が極めて高い対象者が複数いれば、事業の需要がある、という結論になるのです。

ここで「使う蓋然性が高い」と判断した対象者(インタビュイー)は対象顧客となるので、次の段階で初めて事業の具体的イメージを提示して、所感を聞くステージに進みます。

ということで、事業の需要を確かめるために「このサービスを使いたいか?」と聞くのは悪手であるという話でした。

ユーザーインタビューについて、詳しくは次の記事を参考にしてみてください。

本当はユーザーインタビューなんて、しない方が良い
https://note.com/media_labo/n/nd1681285fbdd


ご覧くださって大変にありがとうございます。サポートいただけたら、大変に喜びます٩(•౪• ٩)サポートいただけましたらメディアの研究費や活力を出すためのおやつ代に当てて良い記事を書いていきたいと思いますm(_ _)m