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ジブリに学ぶ、マスにウケるコンテンツは多重構造

SNSの発達とロールモデルの崩壊で、好みが多様化


SNS等の個人メディアが発達し、テレビというマスメディアが衰退している中、人々の好みや嗜好は細分化しています。また、終身雇用を土台とした一定年齢での結婚・子育てという人生のロールモデルも薄まり人々の生き方が多様になってくると、全員に共感してもらえるコンテンツの難易度は上がります。今の時代では、マスにウケるコンテンツというのは、多重構造になっています。

1つの作品に色々な要素を詰め込んだ多重構造


多重構造のコンテンツは2つの種類に分かれます。1つは、作品に色々な要素を詰め込んだ多重構造の作品です。例えば、コンビニエンスストアは国内外で好調な業績ですが、コンビニエンスストアの利用目的は、人によって異なります。ある人はお弁当屋さんとして利用しており、ある人は朝食とおやつの調達場所かもしれません。ある人は、コーヒーとスイーツを買うために利用しているかもしれません。コンビニの主たる利用目的はライフスタイルによって分かれますが、それぞれに適した利用目的の商品を揃えているため、色々な利用シチュエーションをカバー出来るのです。

これをコンテンツに置き換えると、1つの作品に異なる要素がたくさん詰め込まれているということになります。例えば、アニメ化もされた漫画「ゴールデンカムイ」は、歴史ものであり、アクションものであり、謎解きものであり、料理ものであり、家族の物語です。1つの作品にありとあらゆるジャンルの要素が詰め込まれています。観る人によって、この中のどの要素が好みかという濃淡があるでしょう。

また、同じくアニメ化もされた人気漫画「推しの子」は、転生ものであり、サスペンスであり、成長物語であり、芸能界の実情を描いたルポ的な要素もあります。この作品もまた様々な要素が詰め込まれており、人によって刺さるツボが異なるのです。

昨今人気の漫画やアニメは、このように複数のジャンル、要素が詰め込まれる多重構造になっていることが多いのです。コンテンツ消費者にとって、刺さるポイントをたくさん作っているといえるでしょう。

観る人によって作品の景色が変わる多重構造


そして、もう1つは観る人によって作品の景色が変わる多重構造です。先ほどはコンビニエンスストアの例を出しましたが、同じように実態の店舗で例を出すとユニクロになります。ユニクロの売上も好調であり、値上げを行った後も客足は落ちず、そのまま利益増となっています。ユニクロのアイテムは、人によって景色が変わるアイテムなのです。例えばUNIQLOにはUNIQLO Uというラインがあります。これはエルメスやラコステを手掛けたクリストフ・ルメールという有名デザイナーが手掛けています。通年販売されているクルーネックTは、シンプルながらも洗練されたデザインで、ファッション好きにとってはデザイン性のあるTシャツであるという認識になります。一方、特にファッションを意識しない層にとっては値段のわりに丈夫でシンプルなTシャツとして映るのです。ユニクロのスウェット類も、流行りのダウンショルダーになっていたり、おしゃれな人にとってはシルエットが洗練されてると映りますし、特に意識しない層にとっては安価で着心地が良いスウェットなのです。

コンテンツにおいて観る人によって作品の景色が変わる代表作品といえば、ジブリ作品です。ジブリ作品の多くは、一見、子供から大人まで楽しめる分かりやすい物語となっています。例えば「崖の上のポニョ」は、魚の女の子ポニョと少年宗介の冒険物語として楽しむことができます。一方で、ポニョの本名はブリュンヒルデという名前で、ワーグナーの楽劇「ワルキューレ」に登場するキャラクターとなっています。このブリュンヒルデは、戦死した者を神殿に連れていく役割を担っており、「崖の上のポニョ」は死後の世界を描いているのでは?という論説がありました。また、ジブリ作品といえばYouTuberの岡田斗司夫氏の解説動画人気です。「風立ちぬ」についても、パッと見は主人公とヒロインの悲恋の物語という風に映ります。しかし、岡田斗司夫氏の解説によると、天才がゆえにサイコパス的な気質を持つ主人公像が描かれており、ビジュアルが優れない自身の妹には冷淡であったり、零戦という戦争のための兵器を作っていることに無頓着であったりと、よくよく観れば深い人物像が描かれているのです。

このように、一見、子供から大人まで楽しめるジブリ作品も、よく読み解くと神話がベースになっていたり、キャラクターの一挙手一投足に深い意味が込められているため、公開後に様々な論説が出たり、観る人によっては解釈が異なるのです。

冒頭に紹介した「色々な要素を詰め込んだ多重構造の作品」は、コンビニの棚のように並列に様々な要素が並んでいるイメージです。一方で、こちらの「観る人によって作品の景色が変わる多重構造」の場合は、バウムクーヘンのような形状に要素が積み重なっており、人によっては深い階層まで意味を読み取ることが可能という構造になっているのです。


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