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【ヤマムラメグミノエッセイ】#3 オーバーサイズ過ぎる空みたいなシャツ

空みたいなシャツを着た今日は空がとても美しかった。サイズミスにより飾るだけにしておけと言われながらプレゼントされたオーバーサイズすぎるデニムシャツ。

なんで生きるために治療してんのに
身体を破壊するんだよ。
ここは治すとこなんじゃねーのかよ。
今まで1万人治療してきてこんなに
酷くなった人いない?
なってんじゃん。説明してくれよ。
納得なんてできねーよ。
毎日怒りと悲しみに震えていた。

目が覚めると必ず朝が来ていた。
朝が来ると病院に向かわなければならない。
放射線を当てる度に皮膚が焼け焦げた。

今日こそ無理だ
病院になんて行きたくない
私には25回なんて達成出来ない
そう思いながらも死ぬのが怖いから
歯を食いしばって布団から立ち上がって
私が護送車と呼ぶ病院の送迎バスに乗り込んだ。
名前を呼ばれたら広くて無機質な治療室に横たわる。
どデカい放射線治療の機械を睨みつけながら
怒りで震える唇を必死に噛む。
涙が滲んで視界がボヤけた。

半分を超えたあたりから
無感情になった
時間が来ると起き上がり
病院へ向かうロボットと化した。
自己防衛反応なのかもしれない。
私が私を守る苦肉の策だった。

かゆみと痛みで脳みそまで掻きむしりたい。
それを超えた先で人体模型みたいに胸の皮膚を失った私と出会った。

こんなの私じゃない。
到底受け入れられなかった。

私が見たいのは命の輝きや美しさであって
こんな血反吐を吐きながら
泥水飲まされて底辺を這いつくばって生きる命じゃない

生きるって美しいんじゃないのかよ
これが美しいと言えるのか
生きてる意味を教えてくれ。

そんな地獄の日々にいた私を突き動かしたのは弱さだった。
治療をするかしないか自分で選んでいいと言われても、弱いから治療をしない選択肢なんてない。
弱いから治療に向かうしかなかった。

抗がん剤の治療ももう一生無理だと思ったけど
放射線治療も一生御免だ。

そんな地獄から這い上がってきた私に渡されたのが
このオーバーサイズすぎるシャツだった。

「よく耐えた。おつかれ。
空が好きなヤマムラにピッタリだろ。
空みたいなシャツ。」

今日初めて着て外出したので
そんな懐かしいことを思い出した。
と、振り返ったらまだなんと
あれから5ヶ月しか経っていない。
焼けクソ野郎な弱っちさ億満点の私はまだ結構近所にいた。

オーバーサイズ過ぎる空みたいなシャツ
オーバーサイズ過ぎる空みたいなシャツ

今日もみんなに支えてもらって
背中を蹴り飛ばしてもらいながら
生きてます。
ありがとう。


Instagramでは、私の見た命の輝きやあたたかさや強さを大好きな空の写真に乗せて発信しています。日々のつぶやきもこちらから。

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