夜ご飯を食べに来た男の子達はまだ高校生だった。

　息子が一人っ子だったせいか、我が家はいつも彼の友達で賑やかだった。週末になるとみんなで集まって出掛け、帰ってきたのはいつも真夜中。キッチンにあるコーンフレークがガサガサ鳴る音、冷蔵庫のドアの開け閉めする音、あとはみんなの小声が聞こえてた。そんな事が毎週末あったのは他の親は知らないと思う。私は朝起きるとお手洗いのついでに靴の数を数えた。それはスリルな数年だった。人生が何処に向かってるのかなんて全く未知で、トンネルの中をとにかくみんなで突っ走った。

　仲良しのルカとエリヤスは、いつものように私の作った超辛いタイカレーを食べに来た。白人と黒人系の二人だった。
　その日はデザートが無かったので、ｍ＆ｍチョコレートをテーブルの上にどさっとばら撒いた。すると、いつも冗談ばかりのルカが真面目な顔をして、ｍ＆ｍの色分けをし始めた。どうやら何か思いついたらしい。その間、何が起こるのかみんな黙って見ていた。するとルカはイタズラな顔で、
集めた黄色の粒を圭に配り、そのあと茶色のをエリヤスに配った。
　全員一瞬沈黙して止まった。
　私はその様子をどう受け止めたら良いのか分からず、とりあえず黙って見守ることにした。日本で育った私はこの状況をどう取れば良いか戸惑った。でもこの子達はインターに通ってるし「肌の色や宗教がさまざま」なのが当たり前。そんな環境で育っているから、どうしてこんな事をするのか不思議だった。
　
　圭は大抵の場合は周りを静かに見渡し黙っているほう。そしていつもフェアなのが彼の良いところ。良しも悪しもクールにとらえる。そんな圭も今回はどんな反応をするのか興味深かった。

「君の分は無い。」の一言で解決。
残りは赤と青と緑だから、ルカの「白」は最初から無い訳だ。
ハッと気付くルカのやられたという顔！
その後、みんなで笑った。私も笑ってみた。究極のチェスになった。