愛してる

愛してるってなんだろう。
愛されるってどんなだろう。

私は愛されて育ったんだろうか。
誰かを本当に愛したことはあるだろうか。

お母さんに抱きついた記憶も
抱きしめられた記憶も私にはない。
小さい頃に頭を撫でられたことも
すごいねって褒められたこともないように思う。

自分で言うのもなんだが
幼少期の私はできた子供だった。

テストはほとんど満点で
運動会ではリレーの選手をして
習字で金賞を貰ったりもした。
わがままを言うこともなく
いつも静かに本を読んでいて
好き嫌いもしなかった。

それなりに友達もいて
それなりに丈夫な体で
それなりのいい子だった。

けれどいつも何かに怯えていて
その何かの大部分は母親で
お母さんに甘える、というのが出来なかった。

甘えてこなかったから
甘え方のわからない大人になって
褒められたことがないから
人を褒めることもできなくて
教わらなかったから
お箸も敬語も上手く使えなかった。

社会に出てから人に怒られて教わって
やっと少しずつ出来るようになってきた。

お箸の正しい持ち方も
人を不快にさせない話し方も
人との付き合い方も
もう分かるようになった。

でもまだどうしても分からないのが
愛、っていう言葉の意味。

愛されてなかったわけじゃない、と思う。
愛情表現が下手な母親だったんだと思う。

好きな人がいた事はある。
この人とずっと一緒にいたい、と思った事も。
それでも私は愛してるが言えなかった。

言ったことはあっても
それは心からの言葉じゃなくって
オウム返しみたいなものだった。
中身すっからかんの愛の器。

だってわからないんだもの。
何が愛で何がそうでないのかも。

久しぶりに会った昔の恋人に
愛してるって口走りそうになったりしても
その気持ちが何か分からなくなってしまう。

愛とは何か、なんて哲学的で
そんなことを言い出したら
恋も憎悪も尊敬も何か分からなくなる。

ある人にとっての愛が
ある人にとっては束縛で
ある人にとっての愛が
ある人にとっては自己満足。
そんな事もあるんだろう。

愛なんて
恋なんて
その定義なんて
そんなものは人それぞれ。

だから愛してるって思ったら
それが私の愛で
好きだって思ったら
それが私の恋なんだ。

愛されてるってどんな感じかな。

精一杯愛してくれてるつもりでも
それを私が重荷に感じてしまえば
愛されてるとは思えないの。

難しくてめんどくさくて
いいことなんてないようにも思えるけど
それでも愛されたいし愛したいと願ってしまう。

だから面白いし楽しいんだろう。
愛されるのが嬉しいんだろう。

お母さんの愛を感じることがなくても
愛された記憶がなくても
愛されてなかったことにはならない。
そう信じたい。

愛することもよくわからないけど
大切な人を大切にすることで
私の愛が伝わればいいな。

だらしない寝顔を見つめたり
深夜に二人でコンビニに行ったり
くだらない会話で笑い合ったり
そういうなんでもない日々に
愛があるんだと私は思う。

末代まで語り継がれる大恋愛じゃなくても
誰もが羨むような美男美女じゃなくても
遊んで暮らせるほどお金が沢山なくてもいいから
好きな人の笑顔が私だけのものになればいい。
君が愛を囁くのが私だけならそれでいい。

私の人生を半分あげるからさ
君の人生を半分ちょうだい。

愛するってよく分かんないけどさ
私の残りの人生めいっぱい使って
二人で幸せになれるように頑張るから。

そんなこと言えたらいいな。

まだ知らない君に。
いつか出会う君に。

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