いちばん好きな映画はなんだろう。

いや、迷うことなく『ウォールフラワー』を選ぶ。

タイタニックのように両手を広げて、トラックの小窓から身を乗り出し、トンネルで全身に風を受けるエマ・ワトソンが涙が出るほど綺麗だった。

深夜のテレビで流れていたのを眠れなくてなんとなく眺めていただけなのに、いつの間にか夢中になっていた。人生で初めて映画を見て泣いた。

こんな青春がしたかった。
楽しくて、悲しくて、それを分かり合える仲間がいて。

何度見ても素敵な、大好きな映画だ。

いちばん好きな小説はなんだろう。
決められないほどたくさんの本を読んで、感動して、笑って、泣いて、そして助けられてきた。

『神去なあなあ日常』
『夜は短し歩けよ乙女』
『小さいおうち』
『ラストレシピ』
『九つの、物語』
『スープの国のお姫様』
『ファミレス』
『閃光スクランブル』

まだまだある。
とてもいちばんなんて決められない。
けれどどれも綺麗で、汚くて、美しくて、醜い。

何度読んでも飽きない。ぜんぶ大好きな小説だ。

いちばん好きなご飯はなんだろう。

うーん。これは迷うな。

八宝菜。おばあちゃんの筑前煮。かぼちゃの煮付け。ふきのとうの天ぷら。いなごの佃煮。

ああ、お腹が空いてきた。

そうか。思い出の味。おばあちゃんの味。
それが私のいちばん好きな味。安心する匂い。

ママは魔法使いだからあまり料理をしなかった。
自分で作るご飯は好きだけどいちばんではない。

おばあちゃんのご飯が食べたい。

ふとした時に食べたくなる。
いちばん大好きなおばあちゃんのご飯。

いちばん大好きなものは、これからもずっと大好きで、懐かしくて、愛しい。
もっと大好きなものができたら、また書こう。
もっともっと好きなものを増やそう。

これからの人生がより豊かで楽しくて美味しいものになるように。

…お腹が空いた。買い物に行ってご飯を作ろう。

そして大好きな人の「美味しい」を聞こう。

大好きな人と一緒に食べるご飯は、自分の作るご飯の中でいちばん美味しい。

いちばん好きな人といちばん美味しいご飯。

せかいでいちばん幸せな時間だ。