見出し画像

脳みそ空っぽにしてレキシを学ぼう。

  歴史はとても苦手な科目だった。世界史はまずカタカナが覚えられない。おまけにいろんな国と地域の歴史が同時並行的に進んでいく様子が全くイメージできず、最終的にはとりあえず丸覚えするしかなかった。日本史も同様で、まだ登場人物像がイメージできるだけ世界史よりマシとはいえ、文化の細かい名前を覚えることはできず、徳川や北条といった将軍家の名前と実績も全くリンクしなかった。

 歴史を覚えるときの唯一の楽しみは語呂合わせを作ることだった。歴史の背景をもとにストーリーを自分なりに考えて、年号で作ることができる言葉と絡める。その出来事がどんな内容だったのかを覚えることができるとともに、暗記の天敵のような年号も同時に覚えることができる。自分にしか役に立たないものではあるけれど、些細な物語をそこに作ることができること、それだけがとても楽しかった。

 同じような作業をしているのが、アーティストのレキシではないか、と勝手にシンパシーを感じている。メロディーこそとてもキャッチーだが、歌詞の中身を見てみるとクスッと笑えるものから、物語の背景を想像させてちょっと感傷に浸るものまで様々。自由な想像力で、いろんな時代に連れていってくれる。

 そしてそんな脈絡のない想像の世界を、全て繋いでみるとこうなるよ、というのがレキシのミュージカルだった。感動的なお話ではないし、演技力で魅せるわけでもない。でも松岡茉優は舞台上ではアイドルになっていたし、山本耕史は全力で歌っていた。それで成り立つショーだった。ただただ脳みそ空っぽにして、明るい曲調と目の前で繰り広げられている世界だけを摂取していればいいという、そういう芝居を観るのもたまには楽しいものだった。

3月16日 愛のレキシアター「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」@赤坂ACTシアター

この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?