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花と鳥と銃と

二週間ぶりの更新でうんうんうなりながらネタをひねり出している背後でわたしの可愛い可愛い鳥がこれ以上にない騒々しさで反復横跳びしていて本当に落ち着きがありません。

鳥といえば旅行中に行った花鳥市場には鳥たちがひしめき合うように売られていたっけ。

この文章は、わたしが10年前の2009年3月から一年間、中国に留学していた頃の回顧エッセイです。毎週火曜19時に更新しています。


夏休みが始まってすぐに、わたしたちは時間をかけて中国を一周しようということになっていた。世界の歩き方を片手に4人で計画を立てて、青年宿舎のHPで一泊20元の宿を確保して、寝台列車のチケットも購入して旅行のカバンも市場で値切って一式そろえた。
しかし。明日にも第一の都市西安に出発というところで、わたしは38度以上もあるひどい熱をだしてしまったのだ。

結局友だちとは一緒に出発することはできずにわたしは北京経由で寝台列車に乗り、桂林の土砂崩れで8時間の遅延をしながらまるまる二日かけて雲南省昆明市でやっと皆と合流することになるのだった。48時間の車内でもいろいろな出会いがあったのだけど、これはまた別な機会に。

昆明駅に到着して、寝台列車の中で北京のお姉さんが教えてくれた花鳥市場に向かった。本当は雲南民族村に行きたかったけれど、遅延した8時間の間にみんなすっかり満喫してしまったのだった。

昆明の老街の風情が残る花鳥市場は今思うと動物たちにとって最高の環境とは言えなかったかもしれないけれど、袋からスコップですくってえさを購入したり、鳥かごに囲まれていて面白かった。隣国の環境にわざわざ抗議する権利もないし。

しかし少し進んでいくと、だんだんと生き物や植物、アクセサリーは減っていき、次第に物騒なものを目にするようになる。

銃 だった。

白い砂利の上に銃の写真を直接おいて、地べたに座っている顔のすすけた少年たち。

ここはやばい。観光客が来るべきところではなかった。

さっきまでわいわい観光していたくせに、友だちが何か話しかけようとするのを「しっ!目を合わせちゃダメ」とかなんとか言いながら人差し指を自分の口に当てて制止して、わたしはその場をそそくさとあとにした。

今思えばあれただのモデルガンだったんじゃないかな?

初めて一人で長春を離れしばらく神経が過敏になっていたのかもしれなかった。昆明の駅前でいきなりバイクの集団に囲まれたのせいかもしれなかった。宿泊所の勧誘に3人も4人も付きまとわれたからかもしれなかった。話してみたら皆優しかったし、悪い人じゃなさそうだったけど、それでも一度ついた警戒心はこの後もしばらく続き、楽しいはずの旅行に暗雲が立ち込めることになるのだった。

現在の花鳥市場は次々と再開発が進んで当時の街並みは失われてしまっているらしい。あの少年が売っていたものが結局本当はなんだったのか、知る術はなくなってしまったな。


なんとか生きていけます。