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信じることはこわいこと

信じることは怖い。ものすごく怖い。

どれくらい怖いかって?
宝物を手に、ビルの屋上に登り、縁に向かう。そこで何度も手を離して、宙に浮かせるくらいには怖い。取り返しの使いないことがおきていい

信じるってことは、「この先は新しい土地に繋がっているんだ。大丈夫。」と告げられ、真っ暗な洞窟に入っていくような事だと思う。

たったひとつのカンテラと、ささやかな非常食を持ちながら。

恐る恐る足を踏み出していく。
「大丈夫。」の言葉と彼の眼差しをお守りにして。

歩いていくと脳内を、うじゃうじゃと悪い考えが支配してくる。

「騙されているんじゃあないか。」
「この先は行き止まりで、もどる事もできず、死んでいくんじゃないか。」
「隣村のあいつは、知らないのに繋がってると言われて死んだらしい。」

歩みを進めるほどに、振り返って戻りたくなる。

「今なら死なずにすむ」そう思って踵を返したのなら、傷つくことは無い。なんら変わらず、これまで通りの素敵な日常が広がっている。

しかしそれでも、それでもなお、足を踏み出し、道を進んだ時にだけ見られる景色がある、のだと思う。
いや、景色なんてないのかもしれない。行き止まり。あるいは、果てしなく道が続き、肉体が朽ちていくだけかもしれない。

その痛みを引き受ける覚悟を持ちながら、歩みを進めることが「信じる」事なんだと思う。

信じた結果、損なわれることに恐怖しているわたしにとって、憶測にすぎないけれど。

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