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それではみなさん良いお年を

今日が過ぎれば当たり前に明日がくる世界で。何も変わらないでいるように見えて、少しづつ致命的に変わっていく、だけれども本質的には何も変わっていなくて、ぐるぐる続くらせん状の毎日。泣いたり笑ったり失望したり絶望したり幸せをかみしめたり全てを憎んでみたり恋したり、その全ての終わりを具体的に思い描ける人間はどれぐらいいるのだろうか?

もーうーいくつねるとお・しょ・う・が・つー♪

でもそれって本当に?

私達は夢を見た。私たちは夢を見たのだ。それは一日後の未来の夢。

2020年12月31日

世界中のSNSではその夢の話がかしましく繰り返され続けている。国によって、年代によって、文化によって、信じる宗教によって、細部の内容が異なっても同じイメージを伴うそれは同時に世界中の夢に現れた。神からの裁きを見た者もいれば、天変地異を見た者もいる、あるいは怪獣、核戦争、疫病、異星からの侵略、テレビの電源が切れるかのように視覚とその他もろもろの感覚がシャットダウンされたという人達も多かった(ちなみに私はこの真っ暗になってすべての感覚が喪失していく系の夢を見た、この電源が切れる系のは無神論者に多いというもっともらしい説が流れてるが私は眉唾だと思ってる。そりゃまぁ神様なんて信じちゃいないけどね)

早朝から今に至るも幾通りもの科学的宗教的哲学的文学的歴史学的、推察、考察が重ねられているが、どれ一つとしてこの全世界の人が同時に見たとされる不思議な夢を完璧に説明できる論考というものは見当たらないように見える。そもそもSNSの頭の良さそうな人達ですら困惑してるのに、私なんかに何が起こってるかなんてわかるわけもないんだけど。私みたいな凡庸な人間にも理解できることと言えばその夢が暗示してる共通の物、意味するものがこの世の終わりだという事だけだ。

この世界が終る夢

もしも世界が終るなら何がしたいですか?なんて暇つぶしにもならない退屈でありきたりな妄想。最後は大好きな彼くんとずっと一緒にーとか言えないところが彼氏いない歴=年齢の悲しい所ではある。したい事も、やりたい事も思いつかないのは流石に悲しすぎるだろうか?っていうか、後一日ぐらいで出来る事なんてたかが知れてませんか?って言うかそもそもの話ほんとにこの世界が終るのかしらん?だっていくら不思議だと言っても夢は夢でしょ?

連絡を取ってみた同級生たちは、みんなそれぞれに終わりの夢を見てたけど。それが何かの予兆だと信じてるのは半分ぐらい。テレビはちょこっとネットの反応を取り扱ってたけど、いつも道理のプログラム。世界の終りとかなんとか言われても正直な話まるで実感がわかない。私たちは真理に手を伸ばすにはあまりに矮小過ぎて、リアリティという信仰心以外には何一つとして世界を理解するすべを持たない。だからもしか本当の世界の終りでもこーしていつもみたいにゴロゴロネットの海を漂ってる

宇宙人からの警告説。某国の精神電波攻撃説。神のお告げ説、エトセトラエトセトラ、ネットではだれもが何かしらの解釈を試みようとあがいてる、面白い所ではこの世界はゲームのプログラムであの夢はこの世界の住人にサービス終了の決定を知らせる連絡だとかなんとか。あるいはこの世界はテスト版で正式版への移行を機ににリセットされるのだのなんだの。グノーシス主義???よくわからん!

ピッって携帯が震えて、恵美ちんからのメールが届く。は?告白したの?世界が終わりだから?まじで、世界の終りにかこつけてそういうのなんかずるくない。ありなんだ。はへー。いや、じつのところ私にも好きな人がいるんですけどね!!!!どうせ終わっちゃうならいっそのこと。とか。ほんとは考えなくもなかったけどね!!!なんかこういうのを利用して気持ち伝えるのは違うんじゃないかって。何が違うのかは説明できないけど。そりゃ、彼氏で来たこともないまま人生終るぐらいだったらとかかおもうけど、おもうけど、でもでもだって、私の思いはもっと純粋なんだよ、純粋なんだけど、だって、絶対無理だし、怖いじゃん

何一つ確かなことなどわからなくても無慈悲に時間は過ぎ去っていく。もうすぐ年が明けてしまう、私が思春期を経て以来、家族そろって年を越すみたいなイベント感はなくなって久しいけど今日だけはその瞬間に向けて誰がなにを言う事もなく、めずらしくリビングに家族が集まっている。

自他ともに認めるリアリストの父は夢の話などしようものなら一笑に付すのだろう、口うるさいくせに変な所で気が小さい母はちょっとだけ不安そう、にゃ太郎(父命名)はこたつのなかで私の膝にのって丸まっている。そういえば今朝からにゃ太郎(父命名)は私から離れようとしないんだけど猫もあの夢を見たのだろうか?

ネットの誰かが言っていたこの夢は福音なのだと。誰もが無意味に過ごす何気ない日々がいかに尊くかけがえのないものかという事を私達に知らしてくれるための(でもそれに気付いたところでそのまま世界も終わるんじゃ意味ないよね)

私は全然いい子なんかじゃなかったし、私自身両親に対していい思いを持っていないけれど、もし本当にこの世界が終るなら、何か言うべき言葉があるんじゃないか、言えないけど、言わないけど、もしこの世界が終ることが無かったらわたしはもっと一番身近な人間である家族に、この二人に、おとーさんとおかーさんに、素直になれるよう努力してみようかな。なんて。あと告白もしよう

カウントダウンが始まる

10

.9

.8

もしも来年があれば絶対にいい年にしてやる

7.

6.

5

おひざのにゃ太郎(父命名)の体温がとても心地よい。もふもふフカフカで猫は最高の生き物だ

4.

3.

2

やっぱりこの機会に乗じて告白しといたほうがよかったかなぁ


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