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大切にしている「調理用語」② ~煮物・煮込み・含め煮など~

食材料を煮ることの意味は、当たり前だが①食材を軟らかくする②味や風味をつける③保存性を高める④味を複雑にまろやかにする⑤生臭みを取り除くなどで、美味しく食べられることにある。

材料の種類や、煮方で料理の仕上がりが違ってくるので、作りたい料理と煮方のポイントを押さえておきたい。

料理の作り方を伝える時に、一言で「煮る」といっても、伝える側と受け取る側に違いがあると、別物の料理になってしまう。
適切に調理用語を使い分けて、わかりやすく説明するようにしたいといつも思っている。

今回、あらためて「煮る」について考えてみた。

理屈っぽいようだが「煮る」は、だし汁やスープに食材と砂糖やしょうゆなどの調味料を入れて味をつけながら煮ることをいう。
「煮込む」「煮含める」「煮転がす」等、いろいろ言うので、私流に整理した。
地域や専門の分野、習慣などで言い方は異なるので、互いに確認し合いながら使いたい。

■煮物


食材をスープや出汁に調味料を入れて煮て、食品をやわらかく舌触りよく食べやすくすることで「含め煮」や「煮付け」など、煮て食べる料理の総称だ。
 
煮物の難しさは、加熱して食品の柔らかくなる速度と調味料を含んでいく時間の調和にある。
それは、食品の種類や、調味料の種類や分量によっても異なる。
食品によっては、例えば大根のように、調味料を加える前に十分に水煮をしておかなければ、でき上りが硬くなるものもある。
 

■煮込み


一般の煮物と比べて、煮汁の中でゆっくり長時間煮る料理を煮込み料理という。代表的な煮込み料理には関東風のおでんやカレーなどがある。
カレーを煮込むとは言うが、カレーを含め煮にするとは言わない。
食品に汁が多くかぶるようにしてゆっくり煮込み、途中で食品を裏返すことは無いので煮崩れのおそれは少ない。
和風では肉じゃが、洋風ではポトフもこれだ。
 

■含め煮


地域によっては「煮含め」「含ませ煮」ともいわれている。
たっぷりの煮汁でしっかり煮る「しいたけの含め煮」や「がんもどきの含め煮」などがそれ。味も色もしっかりついている。

一方、食材の色と歯ざわりを活かす「含め煮」もある。
例えば、うど、長芋、ふき、さやえんどうなどの白や爽やかな青さを活かす「白煮」「青煮」という料理方法だ。
予め下ごしらえをした材料を、煮立った煮汁(味も色も薄い方が適当)に入れて中火でさっと火を通し、材料の色が変わる直前に火を止める。
火を止めたら材料と煮汁を別々に分けて、早めに冷ますと色良く仕上がる。十分に冷めたら再び両方を合わせると、材料に煮汁の味がたっぷりと含まれて美味しくなる。
 
また、含め煮でも「かぼちゃの含め煮」ように、少ない調味料で煮て、少し煮汁を残して火を止める。そのまま、鍋の中で冷める過程でかぼちゃが煮汁を吸って、丁度良い味と軟らかさの仕上がりになるものも「含め煮」といっていい。

■煮合わせ


「炊き合わせ」ともいっている。
複数の材料を別々の鍋で、それぞれの材料の特徴を活かした味付けで煮る。
それらを、ひとつの器に彩りよく盛り付けると、色合いも風味も引き立って美味しそうになる。
丁寧で懐石料理風になり、撮影映えもする。

■煮しめ


比較的濃い目の煮汁で、汁気が無くなるまでゆっくりと煮あげたもの。
みりんの照りとしょうゆの塩分が絡んで、日持ちが良くなる。
根菜類、芋類、こんにゃくや昆布などの「煮しめ」がこれに該当する。
正月料理の「おせち」にはこの調理方法が使われる。

■煮付け


材料がひたひたに被る程度の少ない煮汁で煮たもの。強火で短時間煮るものが多い。例えば、「魚の煮つけ」は定番だ。
魚は野菜と違って初めに水煮を必要としない。なるべく煮汁を少なくして短時間でさっと煮る方が、消化や風味の点からもよい。
 

■煮浸し


野菜などの材料を調味液でさっと煮て、冷まして食べると味が染みて美味しい。初めに材料が被るくらいのだし汁で煮る。
茄子の煮浸し(焼きナスや揚げなすなどもよい)や白菜の煮浸しは、あっさりとした味付けの一品としてお勧めだ。

■煮ころがし


食材、特に芋類や大根などの根菜類を煮る時に、焦げ付かないように転がしながら煮汁が無くなるなるまで煮詰めた料理。
里芋などの煮物に使うことが多く、焦げ付く一歩手前の味が香ばしく美味しいと評判がよい。


 

■最後に


食材を油でコーティングした「炒め煮」や最後にでんぷんでとろみをつける「くず煮」があって、同じ煮物でも、油やでんぷんなどを使うことで別物の煮物料理になる。
「煮物」の表現は数多いものだ。

参考までに、和食でよく使う「煮切り」という言葉を聞いたことがあると思う。
これは煮物とは別で、調味料の酒やみりんを煮て、アルコール分を飛ばしたものだ。
この「煮切り」を煮物などの和食料理に使うことで、より風味豊かな料理に仕上がる。
 
地域によっては、同じ内容でも調理言葉が異なる場合があるが、私は、調理方法を伝える時に、互いに調理言葉の内容を確認し合いながら使っている。

こうした調理用語を便利に使って、できるだけ調理方法を伝えていきたいと思っている。
 
普通に使う調理用語だが、今回もよく考えると奥が深いと感じた。

最後までありがとうございました。
 
 

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