スタートアップがジェンダーダイバーシティ課題に取り組む必要性とは?【スタートアップ×組織人事コラム #2】
「スタートアップ×組織人事コラム」とは、マーサーの有志が運営するスタートアップ企業向けの連載コラムです。組織・人事フィールドで長年蓄積したノウハウをもとに、企業成長をサポートする情報を発信していきます!
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スタートアップにおけるジェンダーダイバーシティ課題とは
DEI (Diversity, Equity and Inclusionの略。多様性、公平性、包括性を意味する) 推進が注目され、多様な人材活躍できる社会づくりが必要とされる中、いまだに日本企業のジェンダーダイバーシティの課題は色濃く残っています。スタートアップ市場でさえ資金調達・上場フェーズで大きな男女格差が存在しており、新規上場企業に占める女性社長の比率はたった2%というデータも見られます(※1)。
男女格差の背景には、起業から上場に至るまでに必要なコミュニティ・情報に女性がアクセスしづらい現状や、女性に対するバイアスなど、さまざまな構造的課題がある現状です。
一方、女性が関係する事業は、男性のみの事業と比較して業績が高くなるなど、ジェンダーダイバーシティ課題の解決が社会・経済面でのメリットにつながると示したデータもあります。
こうした背景を受けて、日本では2022年の女性活躍推進法改正により、男女の賃金差異の情報公表が義務付けられました。次の章では、スタートアップが早期にジェンダーダイバーシティに取り組むべき背景を掘り下げます。
ジェンダーダイバーシティとESGの関係性
皆さんはESG投資という言葉をご存知でしょうか。ESGとは、「Ennvironment」「Social」「Governance」を指し、企業の中長期的な成長観点で投資判断の際に重要視される指標です。
ESGのSocialには、企業が果たすべき社会的責任であるDEIの取り組みが含まれます。具体的には、DEIの方針の明確化や従業員および取締役におけるジェンダー比率の可視化などが挙げられます。
ジェンダーダイバーシティ課題の解決はESGの取り組みの一つであり、優れた人材確保や資金調達の観点から避けて通れないテーマです。そして、ESGやジェンダーダイバーシティを議題にあげる際に、必ずといっていいほど「男女の賃金格差」の課題に直面します。
ジェンダーダイバーシティ課題の一つ「男女の賃金差異」
男女の賃金差異は、グレード、勤続年数、職種、労働時間の差によって発生する「説明できる差異」と、「合理的に説明できない差異」から構成されます。日本では、女性登用の遅れや性別職種分担など性差を原因とし、男女の賃金差異が大きい点が課題です。
賃金を上昇させる要因は、職階や勤続年数、労働時間の要素に加えて、高度専門職種の成果報酬度合いも影響します。
具体的には、日本の女性は勤続年数・労働時間が男性よりも短く、女性のほうが高度専門職種に従事する機会が少ない傾向です。また、女性が管理職に昇格するスピードは男性よりも遅く、賃金が低くなっています。
この「説明できる差異」を取り除いたとしても、依然として男女間には「合理的な説明ができない賃金差異」が残ります。両者を取り除くための施策を、同時に検討する必要があるでしょう。
Pay Equity(ペイ・エクイティ)の考え方
女性活躍推進法の改正|男女の賃金差異の公表義務化
2022年7月8日の女性活躍推進法改正(※2)により、常時雇用する労働者が301人以上の事業主に対して「男女の賃金の差異」の情報公表が義務化されました。
女性活躍推進法は、日本の急激な労働人口減や働くニーズの多様化、グローバル化といった変化に対応するため、企業のダイバーシティ推進をすることを目的に定められた法律です。
社会経済情勢の変化に適応し、中長期的に企業が成長するためにも、女性の職業生活における活躍の推進は必須事項となります。本法で公表義務となる従業員数301人以上に該当しなくとも、早期に情報公表の準備を進めることをおすすめします。
男女間の賃金差異・データ収集や分析例を紹介(マーサーの総報酬サーベイデータ分析)
日系企業における「説明できる差異」と「説明できない差異」について、マーサーが実施した2022総報酬サーベイ(Total Remuneration Survey、以下TRS)をもとに、実際のデータ収集や分析例をご紹介します。
自社で男女間の賃金差異解消に取り組む際の参考にしてください。
日本企業男女間賃金差異
TRSのデータのうち、次の条件で有効データを抽出し、賃金差異の算出と要因分析を行いました。
独自の分析の結果、男女の賃金差異の要因は、次の4項目となりました。
年齢
勤続年数
職階(一般社員や課長級など)
職種(営業、製造、人事、経理など)
男女の賃金(基本給+手当+賞与)の平均値を比較すると、男女差は190万円(24%)。職階差によって生まれる差異額は要因の中で最も大きい110万円(14%)となり、昇進・昇格の男女差が生む職階差が男女の賃金差異の主要因と推察できます。
また、「説明できる差異」を差し引いて残る、「説明できない差異」は45万円(6%)となりました。つまり、男性と女性の属性条件を同じにそろえたとしても、女性の賃金は男性より45万円(6%)低いことを意味します。
なお、本分析はサーベイ参加企業の中から一部のデータを抜粋して実施しています。分析結果はあくまでサーベイ集計値であり、日本企業の代表値というわけではありません。
報酬サーベイで取得可能な項目を基に分析を行っており、人事評価の男女差は「説明できない差異」に含まれていることから、実際の「説明できない差異」は本分析結果と異なる可能性がある点にご注意ください。
男女の賃金差異を解消する方法とは
「説明できる賃金差異」を解消するためには、まず人事制度改正や、全社的な人材戦略とDEI戦略を踏まえた企業文化・風土変革の施策の実行が望まれます。
一方で、「説明できない賃金差異」に対しては、個別にテーマとして切り出し、優先順位を上げて対策を講じる必要があるでしょう。
グローバル企業では、「説明できない賃金差異」の解消を目的に一定の予算枠を確保し、差異の大きな職種や職階から順に特別昇給を行うのが一般的です。
スタートアップでも早い段階から「説明できない賃金差異」を解消し、性別問わず活躍できる土壌があることを広報していくのがよいでしょう。
「説明できない賃金差異」の解決策
「説明できる賃金差異」の解決策
ご紹介した考え方や分析アプローチを参考に、男女の賃金差異解消に向けた取り組みや施策の検討を進めてみてください。
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◇本記事はマーサージャパン公式のコンサルタントコラムをもとに再構成・執筆をしています。