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わたしにとって「書くこと」は呼吸であるから止めることはない。一方、もうひとつの「かくこと」すなわち「(絵を)描くこと」も時々やっている。
 子どものときに図工や美術の成績がよかったわけではない。小学校の写生大会は、黙って絵を描いていれば誰にも何も言われなかった。ひとりでいるのが好きな子だったから、苦痛ではなかったがおもしろくもなかった。
 中学校の美術では、手のデッサンなどをさせられて嫌だった。なぜこんなことをしなければならないのか、時間が過ぎるのをただ待つだけの苦痛な時間だった。
 それから25年ばかり過ぎたある日、なんとはなしに図書館で借りた本が『絵を描きたいあなたへ』(著・永沢まこと)だった。
 一気に読んだわたしは、すぐさまスケッチブックとペンを買いにいおった。そこから、永沢まことが提唱する「線スケッチ」の世界に入っていった。
 2年ばかり一生懸命描いていたが、忙しくなるにつれてやめてしまった。それからまた10年近くが過ぎ去っていた。
 3年前、これまたなんということなしに、『街の文具屋さん』(著・ハヤテノコウジ)という本を手にとった。文具屋紹介の本だが、すべて著者のイラストで紹介されている。これも「線スケッチ」である。
 ここから「また描こうかな」と自分のなかの熱が再燃した。今度は、「フリクション」を使って描く。これならば間違えてもすぐに消せるとハヤテノ氏も勧めている。楽しくなって半年ほど描いていたが、またもや忙しくなってやめてしまった。 
 今年に入り「やっぱり絵を描きたい」欲がむくむくと湧き上がってきた。理由のひとつは、校閲の仕事が忙しくなるほど、クリエイティブなことがしたくなってくること。
 校閲および翻訳校閲の大先輩、新潮社校閲部の元部長・井上さんには校閲講座はもとより、個人的にも多くのことを教わったが、校閲以外のことで残っていることばに「校閲者はクリエイティブな趣味をもつべき」がある。
 人間は誰だって「自分を表現したい欲」はある。だが、校閲者とは「いかに自分を消すか」という職業である。よって、校閲の仕事で自己表現することはありえない。
 だからこそ、クリエイティブな趣味をもつとバランスがとれる、というのが井上さんの主張である。井上さんの趣味はイラスト描きだが、イラストでの受賞歴があるし、ブログにもイラストを載せている。新潮社の校閲講座ではマンガ教材もあるのだが、それを描いたのも井上さんなのだ。趣味の域をはるかに超えている。
 それを思い出し、たしかに自分にはクリエイティブなことが足りなかったかも、と人生で3度目に、また絵を描き始めた。3月に描いたものをトップ画像にアップした。
 そして、いまは線でスケッチするだけだが、来月からは水彩で色もつけていこうと思っている。さてどこまで「人の目に堪える作品」になるか。乞う、ご期待!


今日の久松 永沢まことの画集からカフェの絵をトレースしてみた

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