高戸優

色々なことを好きな時に好きなだけ。

高戸優

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マガジン

  • Good night, my astronaut.

    ねえ、求める場所まで、あと何パーセク? 天体擬人化創作、小さなお話の着地点。 毎週水曜or木曜の夕刻ごろ投稿を予定しています。 ※空模様・通信状況により投稿日時の変更、中止の可能性があります。

  • キャラクターまとめ

    クルックス・パーセク(天体擬人化)のキャラクターについて不定期にまとめています!

最近の記事

12星座との出会い。(4)

「れ、レグルス。さすがにもうそろそろ試食は終わりだよ……」 「ええ? まだあっちの方食べてないわよ」 「で……でも、もう無くなっちゃう」 紫の髪を飾りつけた少女は、人形を抱えながら困ったように獅子座の少女の服を弱々しく引っ張る。それでも、橙の彼女が止まるわけがなかった。 獅子の尾を揺らす少女ーー獅子座のレグルスはうお座のアルレシャを引きずるようにしながら前へ、前へお構いなしに進み続ける。 その進行方向を遮ったのは、蠍座のシャウラその人だった。 小さい影ふたつは、立ちは

    • 12星座との出会い。(3)

      私を席に座らせ、目まぐるしく春のパーティーの準備は進んでいく。 皆に視線を泳がせてしまうと時間がかかってしまうので、ひとりひとり見ていくことにした。 「宇宙飛行士さん! ヴィーナス・キリアのところ以来ですね? お元気にしていましたか?」 そう言って私を覗き込んだのは天秤座のズーエルだった。彼女はギンガムチェックの襟元を正して柔く笑い、私を撫でる。 12星座の娘は伝承や天文よりは青い星の影響を色濃く受けているらしい。彼女は地上に残された天秤の物悲しさはなく、ただ穏やかに

      • 12星座との出会い。(2)

        地面に降ろされた足は柔らかな草を踏んだ。 漆黒の瞳に覗き込まれた私は、12星座の娘を前にふと考える。 私の星座はなんだったろうか。 そもそも誕生日はいつだったか。 そういえば、青い星が故郷であること以外の記憶は無い気がする……と思う私を抱え上げるのはあの羊の角を持つ少女だった。 光を受ければ黄色が透ける、緩やかなウェーブがかかった白髪。 真っ赤な目は瞬きを持って覗き込んできた。 彼女は私を腕におさめながら「ノヴァじゃないか」と盲目の彼女に首を傾げる。 「こんなところまで

        • みなみじゅうじ座

          のんびりまったりと、擬人化するにあたって参考にしたものを自分のためにもまとめることにしてみました。 あくまで個人的解釈の一環/いくつかの説をもとにしているものですし、人によっては何でそうなる??というのもあるかもしれません。 それでも、少しでも星座や宇宙を見上げるきっかけになれたなら幸いです! 今回はみなみじゅうじ座について載せていきます! 「あたしはみなみじゅうじ座のクルックス!1番小さな星座だよ!」 「迷子になったらあたしを思い出して!大丈夫、こう見えてね、たっくさ

        12星座との出会い。(4)

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        • Good night, my astronaut.
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        • キャラクターまとめ
          1本

        記事

          12星座との出会い。

          私が何度目かの目覚めに辟易していると、久しぶりの顔が頭上から覗き込んできていた。 黒髪ツインテール、闇より深い黒の瞳、桜色の唇にブレザーのような服装。ローファーの踵を鳴らしたノヴァ・タラッタはにこやかに笑うと「お久しぶり!」と声をかけてくる。 「さっきまでプルート・キリアのとこにいたみたいね? ふふ、あそこの匂いがする」 私の体をパタパタと叩き、埃を払いながら話を続ける。 「コロコロ行き先が変わってて申し訳ないのだけれど……ティタンがね、キリアの謁見は終わったから〜っ

          12星座との出会い。

          キリアとの謁見(4)

          何度目の目覚めだろう? 私の視界が光を捉え直した時、そこに広がっていたのは暗がりに潜む岩で囲われた世界だった。一筋の光だけが落ちる、四方を暗闇に囲まれた空間。 短い手足でなんとか起き上がる。隣にいるセス・ティタンはまだ目覚めていないらしい。現状と現在地を正確に把握できない中で彼がいないのはあまりにも不利だと体を揺するが、未だ目を覚ます気配がない。 憎まれ口を叩くあの声も、ないとなんだか不安になる。頬をたたき続ける中、私の目の前にティタンとは違う小さな手が伸びてきた。

          キリアとの謁見(4)

          キリアとの謁見(3)

          私を捕まえた、サターン・キリアの従者ーーティタンは何かを彼女と話していた。変わらず彼女の言語は理解ができない。それでもティタンははっきりとした返事を続けており、意思疎通が図れているのは明確だ。 彼は暫し長い髪をいじってから私を見下げる。 「さて……我がサターン・キリアからご丁寧に忠告だ。ここから先はトランスサタニアン……ルール無法のなんでもあり。あそこに常識は通用しない、何があっても誰も何もできない」 故に気をつけろと言いたいんだ、と嘆息する。 「それでもキリアに挨拶

          キリアとの謁見(3)

          キリアとの謁見。(2)

          結論から言ってしまえば、地球ーーアース・キリアのエリアは辿り着かずに終わったため、それについて書き記すことはできない。 さて、金星の統治区の次に私が目を覚ましたのは、ネオンが眩しい繁華街だった。 光のない町。太陽の浮かばない空。藍色に近い空を、無遠慮に鮮やかなライトが照らし続ける。 私が目を瞬かせていると、隣から「目が覚めたんだ」と幼い声が届く。視線を上げれば、ロングブーツの足を優雅に組んだ少女が笑んでいた。 燃えるような赤髪と赤い瞳。短く刈り整えた髪を遊ぶように、二つの

          キリアとの謁見。(2)

          キリアとの謁見(1)

          私が目を覚ませば、そこにあるのはひとつの巨大な湖だった。 果て先さえ見えないほど大きな湖。周りは気で覆われてはいるが、湖から離れれば離れるほど熱砂が世界を覆っている。 あたりを見回していると、隣にいる女性がこちらを見下げて微笑んでいることに気がついた。 長い黒髪を団子にまとめ、水色の瞳を細めて笑う女性。 熱風などものとせず、襟元までボタンを留めた長袖のシャツに上品なスカートが風に揺れる。 「あら、宇宙飛行士さん。サン・キリアに飛ばされましたか」 彼女は青い瞳を細めて笑う

          キリアとの謁見(1)

          サン・キリアとの謁見。

          「お久しぶりだね、宇宙飛行士くん! お元気?」 さて。 そんな声と共に目を覚ました時、私の隣にノヴァ・タラッタも流星群の娘もいなかった。 私の目の前には、ステンドグラスの巨大な壁が彩った数段上の白い世界。私の体を支えるのは随分と手触りのいい赤いクッション。 手探りに生地を撫でていると、数段上の豪奢な椅子に座った、華奢な女性がもう一度問うてくる。 「ねえ、答えて。お元気かな?」 私が連れられてひとつ頷けば、満足そうに微笑む。その姿は、胸元までの黒髪を揺らした赤目の女性

          サン・キリアとの謁見。

          メテオ楽団との出会い。

          ノヴァ・タラッタはあんな大袈裟なことを言っていた割に、私をどこへ連れて行くか、何も決めていなかったらしい。 彼女は私をボールのように空に軽く放り投げては受け止め、そのまま放り投げてを繰り返す。 薄い桜色の唇は「どうしたらいいかしら」と疑問を呟いていた。 「太陽の王に挨拶に行くべき? ……いいえ、そういう大仰なのは苦手と言われそうね。そうなると月の娘? 星の子? んー……」 ぽーん、ぽん、ぽーん、ぽん。 そんな風に放り出された私が右も左も分からないまま彷徨っていると、

          メテオ楽団との出会い。

          Prologue

          私は宇宙を求めて旅をしていた。 それは一体、何年前からなのだろう。 気づけばこの体は浮遊し、陸地や海は遠ざかり、大気圏すら突破して、青も黒もない世界に漂っている。 ああ、あの青い星はもう眼にも止まらない。 我が母星は、私がいたことさえ忘れているだろう。 脳や目が微睡む。寝たら死ぬと体が言う。 それでも視界と思考は、ゆるやかに閉じていく。 手足は冷え切り、酸素も心許ない。 呼吸は苦しい。心臓はどんどん衰える。 嗚呼、このまま未知の闇に抱かれて逝くのかと、私が全てを手放

          クルックス・パーセク

          私は、宇宙を求めて旅をした。 未知なるものへの探究心が飽くことはない。 少しずつ、少しずつ。 繋げた星々が私だけの物語へと成っていく。 これは「クルックス・パーセク」。 本物のように空では輝けなくとも、 地上で星の在り方を身に宿す子の話。 ねえ、求める場所まで、あと何パーセク? 私は、昔から空を見上げるのが好きでした。 星座の名前は知らないし、星を繋げることも上手くできない。 自信を持ってあれが○○!と言えるのは月と太陽くらい。 それでも昼よりは夜が好き。 あの穏や

          クルックス・パーセク