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休職2日目

手続きのために会社へ行った。
身体の調子はどうかと聞かれた。この質問が1番困る。それほど抑うつ感は強くないのに、身体に影響がでているからだ。一般平均よりは抑うつ感も高いのかも知れないが、25年間生きてきて酷い時と比べたら大したことはない。

部長は口では身体を大事にして欲しいとは話しつつも、できる限り続けて欲しい。早く戻ってきて欲しいという感じだった。

帰り道、神楽坂の喫茶店に入った。

メニューと食べログを見て悩んでいたら、
「決まった?」と店主に急かされてしまった。
定番のブレンドコーヒーとナポリタンを頼んだ。
慌てて財布を確認したが2000円入っていたので安心した。純喫茶は現金しか使えないお店も多いので気をつけないといけない。

店内は古びた野球漫画が並び、サインボール・サイン色紙が飾られている。サイン色紙の中に地域の子どもが描いたであろう似顔絵が混じっている。お店が愛されているのが伝わってくる。
曲名はわからないが、竹内マリヤが流れている。いかにもオヤジの趣味という感じだ。
漫画の中に「ラーメン大好き小泉さん」が並んでいるのが浮いていて目についた。
たまたま深夜にアニメを見て気に入ったのか、それとも孫の趣味なのか。

常連だらけのようで、マスターは常に誰かと話している。
30代後半くらいの会社員との会話が聞こえてくる。今年の新入社員はちゃんと挨拶ができて、元気がいいらしい。「そんなの当たり前だろ」とマスターに突っ込まれて、「最近はそうでもないんですよ」と返している。チラッとこちらを見られた気がする。
いかにも挨拶できない若者に思われたのだろうか。こんなに礼儀正しく振舞っているのに。
でも、サラダとコーヒーゼリーをサービスしてもらえた。どれも家庭的な味がして美味しかった。

食事が終わり、少し読書してから帰ろうと思ったのだが、隣にきた大学生の軽い会話がムカつくので店をでた。女の子の話でマウント合戦。話す口調にもイライラする。あと、顔と服装と髪型にも。別のカフェに移動した。

家に帰ったら傷病手当金申請の記入をしなくてはいけない。何もせずにお金をもらえるなんてとてもありがたい話だ。後からツケを払わないといけない気がしてくる。1年間ストレスに耐えてきた貸しを返して貰えるような気もする。
こうやって何かしら意味を付けたくなるが、払っていた保険金が降りるだけの話だ。

現場の先輩に迷惑をかけるなぁと少し思う。1人だけ尊敬できる人がいる。その人には事前に連絡をいれて、事情を説明した。尊敬していたことも伝えた。「自分が尊敬される人間だとは思わないが、そう思うのであれば、私は人の良い面を可能な限り信じているからだろう」と言っていた。
人の良い面を見ようとすることは難しいが、社会で生きる以上は、良い面を見つけて嫌な奴とも向き合って過ごしていくことも大事だと教えてくれた。 

先輩らしい。僕が先輩を好きな理由もしっくりきた。理解しようとしてくれる人しか好きになれない。考え方も尊敬できると思いつつも、そんなことしなくていい生き方をしようと思った。

さっきまでいた喫茶はあれはあれで好きだが、今いるカフェはとても落ち着く。空いているのもあるが、空間が広くて暗いので目線が合いずらい。
全国のカフェは、客同士や店員と視線が合わないような空間を意識してデザインしたら繁盛すると思う。

部長は障害者手帳を貰ったらどうだと勧めてきた。考えてみるとは言ったものの、そのつもりは今のところない。障害者雇用枠とかになって会社が得するのかなとかそんなことを考えていた。部長を全く信用していない。直感が信じてはいけないと言っている。

これまでの22年間くらいは、自分の心の声を押し殺して生きてきた。そのせいで辛い思いをしてきた反動もあり、意識的に自我を持つようにしている。
自分を大事にすることはとても大事だと思う。そう思うようになったのは、心理学を学んだことや、社会の流れもあるかもしれない。

これからのことを考える。
不安はあまりない。心強い友達も沢山いる。
やりたいことだけをやる。それでも人生はなんとかなると思う。清々しい気持ちの2日目であった。


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