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Strategic Negotiation

はい、Kazumiです。

Strategic Negotiation,つまり戦略的交渉について話をしていきたいと思います。

興味を持っていただけた場合、読むことをお勧めする本は以下の2冊です。

これらの書籍は、当方がNUCB-Business Schoolで戦略的交渉に関する科目をとっていた際に指定された教科書です。買っておいて損はないです。

一冊目の「戦略的交渉入門」では、交渉の仕方が理論的に記されています。孫子の兵法に「彼を知り、己を知らば、百戦危うからず」という言葉がありますが、まさにこのことです。理論を知っておいて損はありません。

二冊目は実際にどのようにして、自身が欲しい結果を引き出すのか、について書いています。ハーバードビシネススクールは「交渉」という分野でも非常に有名です。この内容はハーバードビシネススクールで必ず教えられますし、どのビシネススクールでも教えられるようなものです。NUCB-Business Schoolでは植田教授の授業がお勧めとなります。

 なぜ交渉学は重要なのか

 交渉学は、帝王学として教えられても来ました。なぜならそれほど有用なものだからです。近い事例としてはEUとイギリスのBrexit交渉ですね。本当に優秀な方同士が交渉を行うと、とてもレベルが高い内容になります。ケースブックとしてBrexitは扱えるので、後ほど取り上げましょう。

 交渉学の要諦は、「どのようにしてより自分に有利な内容で妥結するか」、そして「どうすれば自身の利益を最大化できるか」にあります。このあと、BATNAやZOPAというような言葉やターゲットバリュー、リザーベーションバリューという言葉がでてきますが、この概念は交渉前の分析にて行う内容です。

 この内容を知っているだけで、自分が損するような交渉を行うことはなくなります。もちろん、この内容は次の日から上司相手に、取引先相手に、そして仕事でつかえる内容になります。

キーワード

Reservation Value(リザーベーションバリュー)とは留保価値と言われます。交渉が決裂するラインのことをいいます。言い換えれば、譲歩できる最低限のラインです。あなたはこのReservation Valueよりも高い結果を目指すことが求められます。

BATNAというのはBest Alternative To Negotiated Agreementの略であり、交渉が決裂したと判断するラインです。Reservation Valueを決め、Reservation Valueを下回る、すなわち交渉が決裂した際に自身がとる行動をあらかじめ決めておきます。

Target Value(ターゲットバリュー)は、その交渉に臨んだ場合、あなたが得たいと考える最大の交渉成果です。Target Valueに近づけば近づくほど有利な交渉結果を得ることができます。

ZOPAとはZone of Possible Agreementといい、ZOPAがある場合、「交渉は合意できるものであった」ということを意味します。ZOPAがあっても交渉が失敗するならばそれはあなたの交渉が良くなかったことを意味します。交渉が合意可能な場合、ZOPAが存在するといいます。

どんなふうに交渉のプランを立てればいいのか

まず、交渉前に交渉相手のことをリサーチします。

そのうえで、自身のTarget Value, Reservation Valueを設定し、BATNAを決めます。そのうえで、相手の取りうるTarget Value, Reservation Value, BATNAを想定します。

そのうえでZOPAを探します。ただし、これはあくまでも交渉前のプランです。

これを行う目的は「相手に交渉のテーブルについてもらう」ことにあります。交渉においては、相手の情報をできる限り探り、切れるカードを必要に応じて切ることを意識しなければなりません。しかし、どんどん譲歩してばかりいれば、結局得られる交渉の結果の利得は限りなくゼロに近づきます。

交渉が失敗する人はたいていReservation Valueと交渉戦略を決めていないことにあります。これを決めることで失敗する可能性を低下させることができます。

交渉にはテクニックもありますが、まずは基本となる理論を押さえましょう。

交渉のテクニック

交渉のテクニックの中に、自身の有利な立場を活かして、相手のReservation Valueを引き下げるというものがあります。このテクニックはその交渉が自身にとって破裂してもいいものである(BATNAが高いラインにある)場合、そして相手が決してこの交渉を降りることができない(相手のBATNAが限りなく低い)場合に成立します。

これはテクニックの一例です。ほかにもテクニックはあるのでこちらをお読みください。

このようなテクニックも使え、そのために交渉では情報というカードの切り方がとても重要なのです。

ケース:Brexit 漁業権の交渉

ちょっと簡単にケースをやってみましょう。

2017年7月に日本貿易振興機構のロンドン事務所が作成した調査レポートです。こちらを用いて戦略的交渉の案を練ってみましょう。

背景

・2016年6月の国民投票直前の調査では、漁業従事者の92%が離脱派と伝えられた。

原因はEUの共通漁業政策やクオータ制への強い不満。発端はロンドン漁業条約。これにより、EEC(欧州経済共同体)水域に関する加盟国間のオープンで平等なアクセスを保証し、同水域における資源保護措置を決定する権限をEECに与えた。この結果、英国は自国海域での主権喪失を受け入れることになった。そののち、EEC水域において年間総許容漁獲高が導入された。これにより、英国の漁民は割り当てられた漁獲枠(クオータ)に制限される一方、他国漁船が自国EEZで操業するのを黙認せざるを得ない状態に置かれた

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イギリスはBrexitによって、自国の主権奪還を目指している。ではどのような戦略的交渉が考えられるだろうか。

【イギリスのTarget Value】

・主権奪還として、領海・排他的経済水域の満額回答。

【イギリスのReservation Value】

・主権奪還。漁業権の完全独立。

【イギリスのBATNA】

・強引に離脱し、領海・排他的水域での軍事展開

・領海・排他的水域でのEU船の拿捕を視野に。

・EUに対する警告

【EUのTarget Value】

・EEC協定の維持

・TAC(年間総許容漁獲高)を英国に飲ませ、EUが主導権を握り続けること。

【EUのReservation Value】

・EU各国の漁業権とのバランスをとること

・EU各国の主権との釣り合い

【EUのBATNA】

・イギリスとの国際的な対立@国際紛争にする

・イギリスへのほかの項目面での制裁:例えば国境規制、通商規制、金融制限、為替条項、独立問題など諸々。


ざっとこんな感じが思い浮かべられます。

ではイギリスの交渉戦略とEUの交渉戦略双方にBrexitが選択肢に入ってることがわかります。ここで重要なのが、戦略として交渉として切るカードです。

当然ですが、切るカードはBATNAをちらつかせることです。しかし、このケースの場合、BATNAは先に宣言したほうが地政学的には不利となります。なぜなら合意なき離脱の回避努力を怠ったと非難されるからです。

したがって、簡単に切れるカードではないです。

さてZOPAは幅広い範囲にあります。ZOPAはそうですね、上の双方の交渉戦略を見ると「各国の主権とのバランスを名目に漁業権の範囲をギリギリまで広げること」と合意なき離脱の間にあります。

ここからは、MBAの授業の場合、それぞれのサイドでチームを作り、分かれて交渉戦略を練り、戦わせることになりますが、そこまで書くわけにはいかないので割愛します。

では結果はどうなったでしょうか。皆さんもご存じのとおり、2020年のクリスマスに最後の漁業権について合意し、全体的に合意がなされました。

結果は分析と似た内容になりましたね。

この記事ではこう書かれています。

”Both sides have agreed that 25% of EU boats' fishing rights in UK waters will be transferred to the UK fishing fleet over a period of five years.

This is known as the "adjustment period", giving EU fleets time to get used to the new arrangements. The EU wanted it to be longer, the UK wanted it to be shorter - it looks like they've met somewhere in the middle, with an end date of 30 June 2026.

Under plans outlined in the deal, EU fishing quota in UK waters will be reduced by 15% in the first year and 2.5 percentage points each year after.

By 2026, it's estimated that UK boats will have access to an extra £145m of fishing quota every year. In 2019, British vessels caught 502,000 tonnes of fish, worth around £850m, inside UK waters.

The document also sets out details of how each species of fish will be shared out between the UK and the EU during the transition.

The UK fleet can expect increases in quota for 57 out of the 90 types of fish caught in UK waters every year.

But quota shares for some species like Channel cod, of which EU boats (mainly from France) catch more than 90% each year, will remain unchanged.”

・EUの漁獲枠のうち25%の奪還を5年半かけて行う。

・継続交渉

互いに抑止力が働いた結果、このような結果になりました。

Strategic Negotiationを学んでいるとこのような醍醐味がありますので是非。

最後に

Strategic Negotiationについてまとめました。

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