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【映画の文法って何?】映画を見て学ぶ:映像構成のヒント⑤

映画の文法

さて、『戦艦ポチョムキン』の違いは何だったでしょう?

まずは上記の記事を読んで、『戦艦ポチョムキン』をご鑑賞ください。

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皆さん、わかりましたか?

映画史において、エイゼンシュタインは最も重要な人物の1人です。
もう1人、作品を観てきた中で映画史での重要な人物がいましたね。
そうです、『国民の創世』『イントレランス』のD・W・グリフィスです。

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D・W・グリフィスは【映画の父】と呼ばれ映画の文法を確立しました。
対してエイゼンシュタインはモンタージュ理論を確立しました。

ここまでは、おそらく知っている方も多いと思います。なぜなら映画史の基本中の基本。
しかし、映画史の勉強をしたい訳ではありません。

ここからが重要です。

さて、映画の文法とモンタージュ理論の違いは何でしょうか?

実はさらりと映画史で流されるこの2人の偉業に対する記述。

ですが、そもそも【映画の文法】とは、【モンタージュ】とは何なのでしょうか?
2つの違いは一体なんなのでしょうか?

この2つは現代では当たり前の様に使用され、観客は意識する事すらありません。そして、多くの若い作り手さん達もこの2つの違いを曖昧に認識しています。映画製作においてこの2つを曖昧にしておくと、大変な事になります。

しかし、逆にこれを知っていると、作品に大きな広がりが出来ます。
そして、この2つの違いが分かれば、自ずと冒頭の答えが見えてきます。

では、まず始めに【映画の文法】とは何でしょうか?

簡単に言うと映画の文法とは物語の時間軸の組み合わせ方法と考えて下さい。

例えば、3日間の出来事をAとBという登場人物を使って1本の映画にします。AとBは別々に行動しているためお互い違う場所にいるとします。

原則として映画は事件が起きた順に物語を見せていきます。
【例1】の場合で言うと1日目から順に2日目、3日目と時間軸に沿って物語を進める事になります。そして、話しの内容が混同しないように以下の様にAの出来事が終わった後にBの出来事を見せます。

例1)

  1日目        2日目        3日目
A ①1日目のAの出来事 ③2日目のAの出来事 ⑤3日目のAの出来事
B ②1日目のBの出来事 ④2日目のBの出来事 ⑥3日目のBの出来事

上記の場合①〜⑥まで6つのシークエンスが出来上がります。

例えばグリフィス以前の映画がそうです。

この頃の映画はワンシーンワンショット、舞台の様な全体を映す画面が基本で時間軸も過去から現在と通常の流れで表されています。


このルールを打ち破って新たな時間軸を提示したのがグリフィスです。

グリフィスは【クロスカッティング】【カットバック】という手法を使い
【例2】のシークエンス③の様にAとBの2つの出来事を交互に見せ、同時に起こっている事の様に見せる事で1つのシークエンスとして臨場感を高める事に成功しました。

例2)

  1日目        2日目         3日目
A ①1日目のAの出来事 ③2日目のAとBの出来事  ④3日目のAの出来事
B ②1日目のBの出来事   を同時に交互に      ⑤3日目のBの出来事

【例2】ではシークエンスの流れは5つになります。
シークエンス③では2つ別々の場所、出来事を1つの"流れ"で見せます。前にも言いましたが1つのシークエンスにはいくつシーンや出来事があっても構いませんでしたよね。
あくまで映画の文法は時間軸の組み立て方です。シークエンス同士やシーン同士の繋ぎ方と混同しないように気をつけましょう。

例として『国民の創世』の一部を見てみましょう。


Aの出来事を黒人に追いかけられる娘として、Bは娘を捜す男の出来事とします。この様にAとBを交互に見せることによって、シークエンスに緊張感を生み出しています。

さて、2つの出来事を1つの流れで見せる時間軸を表す方法が【例2】だとすれば、こんな方法もありますね。

例3)

  1日目        2日目        3日目
A ④1日目のAの出来事 ⑤2日目のAの出来事 ①3日目のAの出来事
B ②1日目のBの出来事 ③2日目のBの出来事 ⑥3日目のBの出来事

この様に①〜⑥までのシークエンスを本来の1日目から描く時間軸に沿った形ではなく、バラバラに見せていく手法。最近の映画ですと『ゴーン・ガール』の様に過去と現在を複雑に絡み合わせる方法です。また『メメント』の様に逆再生によって時間軸を組み立てる方法『イントレランス』でのパラレル編集も時間軸の組み立て方法による効果が大きい作品といえます。

この様に、どのように時間軸を組み立てシークエンスをつくるか?それをどの順番で繋げるか?というのが映画の文法になります。


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