こんな後味の悪い物語だったんだ
主人公が虫になる冒頭部分は知っていたけれど、国語の練習問題でしか読んだことがなかったなあと改めて。
ある朝起きたら虫になってしまっていた主人公。
仕事にも行けず、今まで通りの食事をすることが出来ず、さらには喋ることもできなくなってしまいます。
最初は虫の暗喩として病気の人の話かと思っていたけど、それだとなぜだかしっくりこない。
ある日起きたら虫になっていたって、あのメガネで小学生の某名探偵もびっくりな状況なのですが、それに対し主人公自身や家族は「なぜ?」と疑問を持ちません。
きっと何かしらの比喩のはずなんだけど、おそらく本物の虫でもなく病気でもなさそうです。
人の目には分かりにくく、顕在化しにくいテーマなのではと感じました。
結局自分の中でハマる解釈がわからないまま読み終えてしまいました。
ただ、主人公の内向的な思考はとても共感できることも多くて…
勤勉で真面目で家族思いな主人公は、そのありがたみを当たり前のように享受している家族に多少の鬱憤を感じていました。
でも主人公は虫になってしまったからもうそれを家族に伝えることはできません。
家族だけどずっと言えないこと。
わだかまりのようにつもっていく言いにくいことってあるよなぁとしんみり。
それが言えなくなってしまうことは、なんだかやるせない。
さらに物語の佳境では、主人公がより孤独な存在になっていきます。
正直読み進めるのが辛かったです。
主人公の自分の考えや気持ちだけでなく、存在も家族に認められなくなっていくようで。
最初から最後までなんとなく気持ちが悪くて、そして後味の悪い物語でした。
個人的にはあまりにふに落ちず、初めて解説までしっかり読んだ作品でした。
時代背景や作者の生い立ちも踏まえた解説は、私の知識を増やし、そして新たな考え方やものの見方を教えてくれるようで大変楽しめました。
内容(「BOOK」データベースより)
ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか…。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。
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