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スリランカへの旅① コロンボ、サバイバル編


2018年7月のこと


2018年7月。当時の私は結構壊れていた。

というのも、破綻した結婚生活かららスーツケース1つで脱出してようやく2年ほどという時期であったからだ。

外面的には通常そのものであり、本業の他に副業も行い、それなりに自立した生活をし、趣味のフラメンコにもヨガにも忙しく、充実して見えていたかもしれない。

だがその前後のストレス、ジレンマ、トラウマ、特に相互依存性のある毒のような人間関係から抜け出せず、自律神経が破壊され、特に睡眠障害をこじらせており、夜に連続して眠れるのは2~3時間ほど。

昼間はカフェインの錠剤をコーヒーで流し込むという乱暴な形で自分をどうにか保ち、交感神経を無理矢理ギラギラ放出させて笑顔を振りまき仕事をこなし、活動していた。

何故か心身キツい時期ほど明るく元気に振る舞ってしまう。

おそらくは異常性という弱みを見せて隙を作り、攻撃や搾取の対象となることを避けるための私なりの本能であったが、そのような行動と体調のギャップも私を壊れさせる一因であっただろう。

スリランカへ

そんな壊れた私であったが、「陽」に偏った活動ばかりをしてますますバランスを崩していきながらも、このままではダメだという感覚がいつもあった。

その頃はまだ週に1回ほど近所のスタジオに通う程度であったが、現状の生活やこじれた人間関係、漠然とした将来への不安から唯一解放される瞬間がヨガをしている時であると理解していた。

現実からいったん離れ、少し落ち着いて自分と向き合いたい。そんな思いからスリランカに行ってみることにした。当時はふわっとしたお洒落なイメージでなんとなくしか分からなかったアーユルヴェーダにも興味があった。

ネットで情報を集め、海のそばのリトリート施設を予約。ヨガとアーユルヴェーダを体験できるという、自然豊かでありながらリゾート感も楽しめる、ちょうどよい塩梅のところ。

空港には仏像が

高速道路で死にかけた

リトリート施設に滞在する前、最大の都市、コロンボ近くにある難しい名前の空港、バンダラナイケに降り立ち、予約しているホテルの送迎車に乗って高速道路を移動中、ボコボコと妙な音がし、ズトンという感覚と共に車両が止まった。
高速道路のど真ん中でいきなり、である。

運転手と共に外に出て確認すると見事にタイヤがパンクしていた。


パンクしたタイヤ

焦ることもなくノープロブレムと繰り返す運転手。
いやいや、ビッグプロブレムだろと思いながらもここで騒ぎ立ててトラブルを起こして高速道路に放置される方が危ないと思い、とりあえず苦笑い。

長いフライトの後で疲れがピークに達しており、早くシャワーを浴びて眠りたいし、お腹が空いていた。いつまで路上に放置されるのかという不安。

替えのタイヤはないようだが、運転手は相変わらずのんびりしており、急ぐことなく業者に連絡し、1時間以上経ってようやく助けが来た。

明るいうちにホテルに着いて夕食も食べたかったがもう暗い時間。着いたばかりの知らない街を女一人で夜に歩き回るのは抵抗があるし、おやつとして日本から持ってきた煎餅を食べて空腹をしのぐ。

出発前にタイヤを点検すればこの事故は避けられただろうし、決して謝ろうとせずのほほんとした態度の運転手に腹が立った。

だが、後続車に追突されていたら今ごろ命がなかったかもしれないし、どの状況で謝るかは文化によってだいぶ異なるものなのだろうなとも感じ、特に文句は言わなかった。

とは言え、ホテルに到着してからフロントのスタッフに事情を話し、危ない目に遭った上、到着が遅くなったため、送迎車に払う金額を下げて欲しいと試しに言ってみた。3分の1くらいの値段で交渉成立。

そのままコロンボに2泊し、有名な寺院など見学。
道に象が歩いていたりなど、スリランカらしく楽しい光景も満喫できた。
いろいろな種類の食べ物を食べてみたかったので、ホテルのビュッフェに行ってみたり、最初は怖がっていたトゥクトゥク(スリーウィラー)での移動にも慣れて警戒心が解けてきた。


コロンボの寺院など
コロンボの寺院内部や象
コロンボの街の様子
コロンボ街歩き

間違えて貨物車に乗って移動

コロンボから鉄道に乗って移動し、海のリゾート方面へ。
せっかく1等車を予約したのに(どちらにしろ安いので)、駅ホームで車両が分からず、とりあえず乗り込んだ、もはや3等車でもない、一番端のドアが開きっぱなしの貨物車のような座席もない場所に座った。

今さら移動も出来ないので、チケット代のことはひとまず忘れてそのままローカルの人たちとの旅を楽しむことにした。

魚売りのおじさんが魚の入ったバケツと一緒に乗り込んできたり、花売りの女性が花籠を背負って来たり、そんな場所に日本人1人紛れ込んでいた私の姿は、いかにも間違って乗ってしまった、という感じで、誰も何も言って来なかったが、乗り合わせた人全員がおかしいと思っていたに違いない。


コロンボの鉄道駅

海沿いを走る鉄道から見える景色にワクワクしながら奇妙な旅を楽しむ。
だが、脳裏に焼き付いて離れなかったのは、車窓から見えたスラムの光景であった。

私が訪れた数年後、スリランカは経済不振から国家財政が破綻。2022年4月には対外債務不履行となった。同じ年の7月には経済的困窮を訴える人々がデモを行い、大統領一族は国外逃亡となったという。

あの車窓から見たスラムでたくましく生きる人々、そして私が偶然間違えなければ決して乗り合わせることのなかった魚売りや花売りのいわゆる庶民の人々の暮らしはどうなっていたのかなと、ふと思うことがある。

魚売りの人。こんな車両に迷い込んでいた。



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