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負けそうな側にも精一杯の応援を

私は今、YOASOBIの「怪物」という曲を毎日再生するという状態に自分を置いている。あのどんどんいろんな記録を塗り替えていってしまう話題曲である「アイドル」より先に3億回再生に辿りついて欲しいという気持ちからだ。といっても私は「アイドル」という曲を決して嫌いなのではない。むしろとても好きだ。

どうしてこんなことを始めたかというと、YouTubeで「アイドル」の再生回数と比較している悲痛なコメントを見掛けたからだ。「あっちよりも先に3億回を達成したい」という思いは私の胸を打った。私は「怪物」という曲も好きだ。なんたってあのBEASTERSのアニメ主題歌だ。ただアニメを見たことがあるかというとそういう訳でもない。アニメを見たことがあるのはむしろ「アイドル」が主題歌の【推しの子】の方だ。


きっと「アイドル」はこれからも記録を更新し、途方もない遠くへと羽ばたいていってしまうだろう。なんたって4か月連続でYouTubeでの再生ランキング音楽部門が1位を独走している状態だ。

放っておいても勝ってしまう側よりも私は負けてしまうかもしれない側に力を貸すことにした。「おそらく負けてしまうだろう」という諦めのような気持ちはやはりある。けどもしかしたらうまく逃げ切るかもしれないと奇跡を信じるかのような思いが気付けば私を動かしていた。




実は最近同じような思いをしたことがあって、それは甲子園の専大松戸ー土浦日大の試合だった。私は知り合いがいるという理由で専大松戸を応援していたのだが、なんと大雨の影響で応援のブラスバンドが到着できていなかった。当初は試合開始から一時間後には到着するという話だったものの、さらに新幹線は遅れてしまい最終的に試合中には間に合わないという事態になってしまったのだ。

専大松戸は3回表までに6点を獲得し、そのまま流れに乗るかと思わせた。しかし土浦日大はそれをすぐにひっくり返し、気付けばなんと9点という得点を取ってしまった。一気に3点差になった両者。

それは仕方ないという気持ちにもなる。土浦日大にはブラスバンドもいるし、応援席の声もある。それに対して専大松戸は辛うじて間に合った人数の応援と手拍子しかない。この応援の差はやはりメンバーの士気を低下させていたように見えた。これくらいの差があったらほぼアウェイの状態に近いのではないかと思った。もうこれは負け試合だと思って私は最後まで見ることが辛くなってきた。


すると思いもかけないことが起こった。専大松戸の応援席以外からも応援の声が聞こえ始めたのだ。それは一般の観客席からだった。おそらくただ甲子園野球が好きで見に来ていたと思われる人たちが専大松戸を応援し始めていた。それはもう逆転も難しいと思われる回のことだった。その時点で既に専大松戸と土浦日大との点差は4点とかなり離れてしまっていた。

観客の応援の声は専大松戸の応援席と合わさり、かなりの声量となった。同時に始まった手拍子も甲子園球場に響き渡る。私は胸が熱くなった。もう負け試合だろうと思って応援するのをやめそうになった自分が恥ずかしくなった。テレビの前で私も再び応援を始めた。そして最後にブラスバンドが奇跡のように颯爽と到着することを信じて待ち続けた。

試合は結局専大松戸が負けてしまった。残念に思いながらも、私の心は何故かとても晴れやかだった。負けてしまうだろうと悟りながらも「最後まで諦めずに頑張って!」という応援を関係のない人たちもするということは私にとって意外だった。応援しているチームだけに「勝ち越して欲しい」と思う方が当たり前だと思っていたからだ。それなのに負けそうなチームを肩入れするほどの縁がない人たちが温かく応援する。そんな姿に泣けた。



だから私は今日も引き続き「怪物」を聴いている。

おそらく「アイドル」もそのうち3億回を目指してのラストスパートが始まり、一気に「怪物」を抜き去ってしまうだろう。だけど私はこのまま「怪物」が先に3億回の達成ができるかもしれないという可能性を信じて、応援し続けるつもりだ。

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