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私の小さなウサギちゃん

私がまだ箸が転がっただけでキャッキャと喜んで騒いでいた頃の日本では、『かわいい』という言葉が汎用されていた。今でもそうなのかな?

特に女子同士の会話では、とりあえず『かわいい』とさえ言っていれば当たり障りのないコミュニケーションが取れていた。

本当にかわいいと思った時にだけでなく、そうでもないけど他に言葉が見つからないから使うこともあるし、全然まったく興味はないけど相槌程度の気持ちで使うこともある。

そんな幅広く使える日本語の『かわいい』とは少し違うが、フランス語でも『かわいい』を表現する便利な言葉がある。それが『Petit』だ。

名詞にくっつけて使う形容詞、Petitプチ(小さい)。

子供に向かってMon petit chou(私の小さなキャベツちゃん)と言ってみたり、おばあちゃんが孫にMon petit poussin(私の小さなひよこちゃん)と言ってみたり。

適当な名詞が思い浮かばない時は、Oh mon petit(あーら私の小さいちゃん)で済ますこともできるし、Petit petit petitと連発して使うこともできる、意外と便利な言葉なのである。


ところでフランスでは常識過ぎで面白くも何ともない『Petit』について、今更ながらになぜここで紹介しているのかと言うと、先日犬の散歩をしている時に耳に入った言葉と目に見えた光景がどうも噛み合わないと思うことがあったからだ。

私が住んでいるのは住宅街で、近くに公園があるせいか犬を連れて歩く人が多い地区。一歩外へ出ると必ず目の前に犬を連れて歩いている人がいる。必ず絶対にいる、と言っても過言ではない。

スタスタと歩く犬もいれば、ニオイを嗅ぎまくったり、寄り道をしたりしながらノロノロと歩く犬もいる。そんな犬たちに飼い主は声を掛けたりリードの引き具合で指示を与えたりしながら歩いている。

そんな日常の何気ないありふれたある日のこと、道ですれ違ったマダムが自分の犬に向かって優しく声を掛けている場面に遭遇した。

連れているのはウチの犬(柴犬)よりもひと回りほど小さな少し毛の長い茶色い犬で、飼い主と一緒にスローペースでノタノタと歩いていた。

Mon petit lapin、彼女は自分の犬にそう声を掛けていた。

Mon petit lapin(私の小さなウサギちゃん)って。

。。。

いや、犬ですけど!

ミアちゃんはどちらかと言うとキツネ寄り。


Mon petit lapinもフランス人が子供に対してよく使う言葉だ。でも犬に使うとちょっとややこしくない?

だって人間に対して使うのと犬に対して使うのとでは状況が変わってくる。

人間は大きいし二足歩行でどこからどう見ても人間だ。

もちろん犬も犬でしかありえないのだが、遠目に見ると、もしかしたらウサギに見えなくもない?ような犬もいるっちゃいる。以前公園で小型犬がいると思って近づいたら、ハーネスを付けたウサギだったということがあった。

ウサギだってペットなんだからたまには散歩させたいよね。うんうん、わかるわかる。

そ・こ・で、だよ、みなさん。

犬に向かって『私の小さなウサギちゃん』って呼びかけてるマダムおばちゃんですよ。

キャベツちゃんとかひよこちゃんならまだしも、ウサギちゃんは微妙じゃない?だってウサギよ、ウサギ。

え?そんなしょーもないことばっかし考えてるのって、やっぱり?また?

私だけ?なのかな?なの?かしら??

驚かないでください。フランスでは人間も犬もウサギを食べます。
こちらは乾燥させたウサギの耳と肉のジャーキー。


もちろん『Petit』は生き物だけじゃなくて物にも使えて、So Cuteみたいな意味合いになるので、近くにフランス人がいらっしゃる方は試しに使ってみて下さい。あ、もちろんなるべく小さなもので使ってくださいね。大きいものは『Petit』で表現出来る『かわいい』の概念にそぐわないので。

Ma Petite Mia-chan
私の小さなミアちゃん、つまり、私のかわいいミアちゃん

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