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【経営学を学ぶ企画】第二章その1

はじめに

 予告通り、今回は経営戦略の体系と理論の変遷の解説になります。

「戦略」と「戦術」の違い

 戦略は経営目的を達成する為の各種資源分配をすることを指し、戦術は現場での細々とした作戦実行のことを指します。戦略サファリにて、ミンツバーグ氏は戦略概念5つ分類(5P)しています。

1.プラン(計画)(plan):目標達成に必要な指針を指す
2.パターン(様式)(pattern):先例を参考とした意思決定を指す
3.ポジション(立ち位置)(position):競争の立ち位置を指す
4.パースペクティブ(視点)(perspective):企業の方向性や構想を指す
5.策略(ploy):競争相手を出し抜く方法を指す

補足:Noteで他にもミンツバーグの戦略サファリを参考にしていた投稿者がいたので、参考に載せておきます。

 ここで大切なこととして、時間軸における現在と未来をいかに戦略通りに再現できるかになります。

1960年代

 経営学に戦略の概念を導入したのは、チャンドラー氏であり、経営戦略と組織にて、戦略の定義を「企業の目的達成に必要な経営資源の配分法」として、経営戦略を概念化させたとされます。

補足:チャンドラー氏以前も、経営における戦略はあったが、概念として明文化され、広く認識されるのは1960年代になってからです。

場当たり的な経営から長期的な経営への転換をする際、経営戦略が見直されます。1965年に書かれたアンソフ氏の「企業戦略論」にて、経営戦略の構成要素として、以下の要素が書かれてます。

1.成長ベクトル:多角化、技術開発、市場開発、既存市場での成長の中から選択する成長の方向性

2.製品と市場の組み合わせ:製品と市場を掛け合わせたもの

3.競争優位性:競争上の優位性を生み出す製品及び、市場の特性

4.シナジー:相乗効果

上記の要素は、以下の経営戦略として実際に機能します。

1.市場浸透戦略:関わりのある製品分野と関わりのある市場分野の組み合わせを継続させる戦略で、市場に対する販売促進や広報活動でより市場浸透を狙う戦略

式)既存の製品分野×既存の市場分野

例)コカ・コーラの既に市場で人気のある商品を継続的に広告を入れる形等

2.市場開拓戦略:関わりのある製品分野と新たな市場分野の組み合わせを行う戦略で、販売地域の拡大、海外進出の拡大等を狙う戦略

式)既存の製品分野×新規の市場分野

例)レッド・ブルの既存の製品を新規の海外市場へ進出させる形等

3.製品開発戦略:新たな製品分野と関わりのある市場分野の組み合わせを行う戦略で、主に既存の市場における新製品開発を行う戦略

式)新規の製品分野×既存の市場分野

例)小売店が作る新商品を既存の市場に売る場合等

4.多角化戦略:新たな製品分野と新たな市場分野の組み合わせを行う戦略で、関わりのない市場に向けた新規の製品開発を行う戦略

式)新規の製品分野×新規の市場分野

例)IT業界の介護分野に参入する等

 これらの戦略区分により、競争上の位置づけが明確化されることになりました。尚、多角化戦略の成功には、シナジー効果が関わっていると言われます。

補足:シナジー効果とは、「2+2=5以上」のような状態を指し、相乗効果によって、組み合わせた経営資源以上の価値が発生する状態

シナジーの種類

販売シナジー:流通網や物流、ブランドといった要素から生じる相乗効果

生産シナジー:原材料の一括調達、生産技術の転用といった要素から生じる相乗効果

投資シナジー:工場や設備への投資、研究開発への投資といった要素から生じる相乗効果

経営管理シナジー:経営ノウハウや問題解決の方法といった要素から生じる相乗効果

 1960年代はいかに経営で生じるリスクを軽減及び、分散できるかが争点にります。変化の多い時代である為、事業の多角化戦略が積極的に行われた時代でもあります。言い換えると、リスク回避の多角化戦略でした

補足:基礎研究の成果により、技術進歩が進み、1950年代から製品開発で変化の大きい時代へ突入し、1960年代には変化に対応するリスク対策へ目が向けられるのは、自然の流れだったと思われます。

1970年代

 1970年代に突入すると、1960年代のリスク回避の多角化戦略から多角化戦略内でのリスク管理に変化します。多角化したところまでは良かったのですが、多角化した先の経営資源がもたらす収益性が注目されるようになります。そのため、収益性の低い事業への投資を避けるようになります。しかし、新たな問題として、現在収益性が低いが、将来収益性が高くなる事業を見極める必要が出てきました。その為、経営コンサルタントという分野のビジネスが登場します。プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント(Product Portfolio Management:PPM)などといった経営戦略手法が開発されます。

補足:PPMの詳しいことは別途の回で解説しますが、花形製品、金のなる木、問題児、負け犬といった分類をし、市場成長率と相対的市場占有率を組み合わせた分析手法です。

まとめ

 長くなるので、今回は1970年代までにします。今回は戦略にかかわる要素の解説と戦略の種類についての話までとします。1980年代以降は次回になります。(続く)

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