はじめよければ……

2015年には AI (人工知能)がプロ棋士に勝つには10年かかる見込みだったのが、1年後の2016年に韓国の棋士(世界ランク2−3位)に勝った。予想の10倍の速さだった。

その試合で Alpha Go (Google が開発した人工知能による囲碁プログラム)が打った手を解説者が変な手と評した。が、10手後によい手と判った。つまり、AI が新しい定石を発明したのだ(人間のプロでも見抜けぬ)。

専門家(山口高平)がみると、これは盤面のパタン認識から新しい定石が生まれたことを示すもので、画期的だという。

プロ棋士は先読みをする。これは AI はできない。先読みに代えてパタン認識を用いるということをしたのだという。盤面に対する途方もない精度の洞察、大局観を発揮したということらしい。その「読み」をプロ棋士が見抜けないほどの。

人間の棋士が生涯に打てるのはせいぜい1万局。それに対して、AI は AI 同士で 3,000 万回も対局し、棋力をみがく。おそろしい学習量だ。

2045年問題(AI が人間を上回る)まであと30年と、のんきに構えていると、10倍の速さで3年後にそうなってもおかしくない。

しかし、見落とされていることがあるのではないか。

初期値の問題だ。これを AI は設定することができない。つまり、「碁を打つ」と決めることが AI にはできないのだ。そこは外部から与えてやらなければならない。

あまりにも単純なことのため、往々にして忘れられがちなのだが、この出発点の問題は意外に重要ではないか。はじめよければ、なんとやらである。

問題はここからだ。みなさんなら、どんな初期値を AI に与えてやりたいだろうか。

以下蛇足。ぼくの現時点での考えは、エレン・マカーサーが唱える新しい経済のオペレーティング・システム「循環型経済」の仕組みを考えよ、との初期値を与えることだ。いいアイディアが出てくるかもしれない。100年後の人類の生存のためには、先入観や固定観念に縛られている場合ではない。解くべき問題だけ設定して、あとは AI のとっぴな発想なども利用しつつ、すべての叡智を結集する必要がある。

※ デイム・エレン・マッカーサー: 私が世界一周単独航海で学んだ意外なこと

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ここまで書いたあとに偶然「ソフィア」の動画を見た。その中で人間型ロボットの発明者が、20年後にはこういうロボットが人間に混じって歩いているだろうと発言する。しかし、とぼくは考える。10倍早くなって2年後になったりなどしたら、目も当てられない。この動画で見るかぎり、ロボットの愛想笑いの感じなどがリアルすぎる。もはや「笑いごと」ではない。

ぼくは AI に興味があったむかし、エクスパートシステムをやろうとして Prolog などの言語のコーディングに関心があった。そのころには「ディープラーニング」のアイディアはなかった。「パタン認識」と高をくくっていると手ひどい目に会いそうだ。

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