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お金では買えないもの

"お金では買えないもの"という言葉があるけれど、どんなものを想像するだろうか。

豆を並べて、ふと気づく。

この中に「お金を出しても買えない豆」がひとつ、あるってことに。



1週間ずれたら...
1日ずれたら...

いや、もっと過去に遡って
もしあの時その選択をしなかったら
私はこの街にいないわけで...

…というような、壮大な話になってしまい、頭がクラクラしてくる。



「あの時その選択をした」まさに、その時には、こんな喜びが待っているなんて、知るよしもなし。



お金を出して買いたくても買えない豆。
この4つの中のひとつだけ、もらった豆がある。その豆には、"ふたり"の間にだけ存在する物語がある。
その物語は、例え欲しくても誰も買うことはできない。

豆はミルで挽かれて
お湯を注がれ
私の口に入り
目の前から姿を消す運命にあるけれど

その物語は決してなくなることはない。


終わるどころかむしろ、
この世から消え去りながら豆は私の五感を刺激し、
そのことによってふたりの間には物語の新しい章が始まる。




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